「SSD(Solid State Drive)」は今後10年でノートPCを中心としたコンシューマPCのメインストリームになる……と考える人々は多いだろう。だが一方で、短期的視点でいえばHDDからSSDへの乗り換えが一気に起こる可能性は少ないかもしれない。SSDベンダーの1つである米SanDiskによれば、その原因は「Windows Vista」にあるという。

デジタルカメラから携帯音楽プレイヤー、携帯、そしてPCまで、フラッシュメモリの利用は急速に広まりつつある。需要の高まりとともに供給量は増え、価格が下がるというコモディティ化の見本ともいえる軌跡をたどっている。大容量化の比較的容易なNAND型がフラッシュメモリの中心となり、さらにMLC(Multi Level Cell)が登場して従来のSLC(Single Level Cell)から一気に大容量化が可能になると、バイト単価で比較してもHDDに対して遜色ないレベルへと近付きつつある。このSLCからMLCへの移行が、PC業界におけるSSD普及の鍵の1つとなる可能性がある。だがMLCは書き換え可能回数がSLCよりも少なく、信頼性の面で劣るという弱点がある。この問題の克服がSSD普及における課題の1つだ。

米SanDisk会長兼CEOのEli Harari氏は同社2008年第2四半期(4-6月期)決算において、「SSD普及の課題はバイト単価よりもアプリケーションの問題が大きい」と指摘している。「ノートPCやデスクトップPCでVistaアプリケーションを走らせるとき、そのせわしない動作に悩まされることになる。その原因はWindows VistaがSSDの動作に最適化されてないことにある」と同氏は述べており、VistaそのものがSSDと相性が悪いというのだ。技術的な詳細は語られていないものの、Harari氏はWindows上で頻繁に発生するディスクアクセスを問題視しているとみられ、これがパフォーマンスや信頼性の面でSSD本来の能力を引き出せていないということのようだ。

近年、EMCやSunがデータセンター向けのSSD製品リリース計画を発表したことについても触れ「エンタープライズの世界では大きな問題にならないだろう。アプリケーションやハードウェアを専用化できるからだ。ところがコンシューマ向けの汎用マシンだと事情が異なってくる。これには最近ブームのNetbookなども含まれる」と説明する。「少しでも動作を最適化するためには、(SSDの)コントローラをより強化しなければならない。これにより、来年以降に登場する何十GB、何百GBといった製品での利用に耐えられるようになる」と述べ、SSDの大容量版製品出荷の遅れの理由にWindows Vistaの存在があり、また問題の対策を行った新型コントローラ搭載の新製品が間もなく登場することを示唆した。