来年、音楽活動40周年を迎える井上陽水が、新旧のヒット曲をアレンジも新たに披露した――。"アコースティックモダンサウンド"、それが4月より全国20箇所にて開催されたコンサートツアー『井上陽水 コンサート2008』のテーマである。27日、そんな"進化する陽水"を見せつけたステージの中から、6月29日にBunkamuraオーチャードホール(東京・渋谷)で行われた公演の模様をWOWOWが独占放送。これに先駆けて、全20曲のヒットナンバーを歌い上げた"今"の井上陽水の姿をお伝えしたい。
常に"新しさ"を求める陽水魂
"アコースティックモダンサウンド"をテーマとした今回のツアーでは、ドラムレスの新しいバンド編成をとり、シンプルなサウンドでより大人でムーディーな陽水ワールドが繰り広げられた。
2009年に音楽活動40周年を迎える井上陽水 |
まず、オーディエンスの歓声の中、ギターを手に登場した陽水が、第1曲目『Make-up Shadow』を披露。続けて『東へ西へ』を歌い上げ、「皆さんこんばんは、井上陽水です」と挨拶した彼の照れ笑い混じりの一言一言に呼応して客席からは笑いと拍手が起きる。盛り上がる会場では、『飾りじゃないのよ 涙は』や『Power Down』、『ワインレッドの心』、『リバーサイド ホテル』、『新しいラプソディー』といったセルフカバー曲や80、90年代の代表作など、ベスト盤に収録される曲が多く演奏され、深く色気のある声が会場を包んでいった。
往年のヒット曲を歌い終わり「2カ月前につくりました」とまことしやかにつぶやくなど、独特な間合いのMCも陽水コンサートの醍醐味。持ち前のサービス精神で、即興で作った曲や民謡・黒田節までもを歌い「(黒田節が)いちばん受けがいいんですよ」と語ると拍手喝采を受けていた。
後半には、『5月の別れ』、『バレリーナ』、『Just Fit』、『氷の世界』など誰もが口ずさめる"陽水ナンバー"を熱唱。ロックテイストで聴かせたかと思うと、軽快なパーカッションで魅せたりと飽きさせない展開が嬉しい。スタミナ切れしない彼の歌声はラストに向けてより伸びていき、聴いていると吸い込まれそうになる。
そして最終曲は『傘がない』。"行かなくちゃ 君に逢いに行かなくちゃ"と語りかけるように歌う姿が、16日に発売されたアルバム『弾き語りパッション』のPVでオダギリジョーが演じる若き日の井上陽水の姿と被る(※1)。男としての色気を存分に放つ姿は今年60歳を迎えるとは到底思えないのだ。
絶妙の構成にベテランの生き様を見る!
一旦退場した陽水だが、観客の歓声に応えてオレンジ色のTシャツ姿で再び登場。客席からステージに持ち込まれるプレゼントの数々に「たくさんのお供えものをありがとう(笑)」と照れ隠し? のブラックジョークを飛ばし、『少年時代』『夢の中へ』などのヒット曲を披露。そしてアンコール3曲目はPUFFYに歌詞提供した『アジアの純真』。これでもか! という盛り上がりを見せる場内は1階席~3階席までがほぼ総立ちのクライマックスを迎える。手を振り体を揺らし、陽水と一体化した気分を存分に味わう……。あぁ、いいコンサートだった!! と噛み締めながら最終フレーズを聞き拍手を送る。
しかし、それは終わりではなかった。
途端、胸に染入る旋律がながれ、さっきまで跳ねるように楽曲に身を委ねていた観客たちが一斉にその繊細で美しいメロディーに聞き入った。アンコールラストの曲は『海へ来なさい』。この絶妙な構成! 興奮がいつしか穏やかな満足感に変わり、終演となった。
客席にはさまざまな世代が集まっていた。ベテランゆえに各世代にそれぞれの"陽水像"を見せてきた証拠だろう。常に新しい"像"を見せながら進化し続ける陽水。彼のいい意味で気負いがないステージをぜひ番組で堪能していただきたい。
※1:オダギリジョーが惚れた男
2007年のツアーでのベストテイクを収録したアルバム『弾き語りパッション』が16日に緊急発売。同アルバムはもともと、コンサート会場にて数量限定発売されていたものだが、開場後即完売という状態にファンからの苦情が殺到しメジャー発売されることになった。また、このアルバムのPVで、陽水ファンであるオダギリジョーが若き日の陽水に扮し『傘がない』を熱唱していることでも話題となっている
『井上陽水 コンサート2008』は、WOWOWにて7月27日(日)18:30から放送