英Symbian CEOのナイジェル・クリフォード氏 |
シンビアンは16日、英国本社CEOのナイジェル・クリフォード氏が来日したことにあわせて記者説明会を開催し、携帯電話用OSの「Symbian OS」を核にした統一プラットフォームを推進する「Symbian Foundation」の構想について説明した。
Symbian OSは高機能携帯電話用のOSとして広く採用されており、シンビアンによれば搭載機種は世界で230機種以上、累計2億台以上に上るという。Symbian OSに対応したユーザーインタフェースとして、Nokiaの「S60」、Sony EricssonとMotorolaが出資するUIQ Technologyの「UIQ」、NTTドコモの「MOAP(S)」があり、携帯電話ユーザーが実際に触れるアプリケーションソフトはいずれかのユーザーインタフェースの上で動作している。
Symbian Foundationでは、Symbian OSやユーザーインタフェース、基本的なアプリケーションソフトなどを統合した、世界共通の携帯電話用ソフトウェアプラットフォームの創出を目指している。これまでS60/UIQ/MOAP(S)と3種類に分かれていた基盤を統一することで、世界中のSymbian搭載携帯電話で共通のソフトが動作することになり、市場の拡大とコスト削減が期待できるとしている。
携帯電話向けOSの世界では、Linuxをベースとしたプラットフォームの構築を推進するLiMo Foundation、Googleらが中心となって同じくLinuxベースの「Android」と呼ばれるプラットフォームを推進するOpen Handset Alliance、Windows Mobileを提供するMicrosoft、iPhoneを提供するAppleなど、いくつかの団体や企業が今後有力な陣営と見られている。Symbian Foundationもその中のひとつとなるわけだが、クリフォード氏は、Symbian陣営は「どなたにも参加いただける」オープンなものであり、競合陣営に参画する企業なども含めあらゆるプレイヤーの参加を歓迎することを強調した。また、Symbian Foundationの知的資産はすべての会員に無償で提供される。
現在SymbianにはNokiaを筆頭とする携帯電話業界の複数社が出資しているが、今年中にNokiaが他の出資企業から全株式を購入し、いったん同社の完全子会社とする。そして非営利団体としてSymbian Foundationを設立し、NokiaがSymbian OSおよびS60の、Sony EricssonとMotorolaがUIQの、NTTドコモがMOAP(S)の知的資産を、同Foundationにそれぞれ提供する。資産の提供は2009年前半に行われ、同年中をめどに最初のプラットフォームをリリースする予定。
クリフォード氏は、スマートフォン(ここではオープンOSを搭載した高機能携帯電話の総称)市場においてSymbianのシェアは6割を占めており、既に市場で実証された豊富なソフトウェア資産が蓄積されていることをアピールする。最近の報道ではAndroidなどのライバルが注目されることも多いが、オープン化された誰もが利用可能なプラットフォームという意味では、Symbianは既にそれを実現しており、今回のFoundation化はこれまで同社が目指してきた方向をより強化するものであると説明した。
既に高機能携帯電話のOSとして広く使われている実績を強調 |
海外のSymbian採用機種の一例。左から「Nokia N78」(S60)、「Motorola Z10」「Sony Ericsson W960」(UIQ) |
シンビアン(日本法人)代表取締役の久晴彦氏 |
また、日本法人代表取締役の久晴彦氏は、日本におけるSymbian OS搭載携帯電話の出荷は3,800万台を突破し、まもなく4,000万台を達成しようとしていると紹介。国内で初の機種が発売されたのは2003年だが、2,000万台を突破したのが2007年3月、3,000万台を突破したのが2007年11月と、ここ1~2年で特に急激な伸びを見せた。
日本の携帯電話は他の地域向けの製品にない独自の機能を多く搭載していると言われているが、今回のSymbianの施策により、ドコモのMOAP(S)を含むSymbian OSベースの携帯電話が、今後は世界共通のプラットフォームを採用していくことになると考えられる。久氏は「ミドルウェアにかけるコストが減る分、ハードウェア性能や操作性などの向上に資金を投入することが可能になるので、独自性をより出しやすくなる」と述べ、国内メーカーにとっては日本の携帯電話の独自性を引き続き確保しながら、海外進出への足がかりにできると説明した。