スズキは7日、東京ミッドタウンで新型250ccスクーター「ジェンマ」の発表会を開催した。会場には代表取締役社長の津田紘氏などが出席し、新製品紹介やマーケティング戦略などを語った。その後、ジェンマのチーフデザイナーとゲストを交えたトークショーが行なわれた。
大人の2人乗り用バイク
代表取締役社長の津田紘氏からの挨拶に続き、チーフエンジニアの守谷安則氏から商品説明が、二輪国内営業部の次廣(つぎひろ)章氏からマーケティング戦略の説明が行なわれた。
新製品「ジェンマ」は、昨年の東京モーターショーにおいて、コンセプトモデルとして発表されたモデル。9ヶ月たった昨日、七夕の日に新商品として発表された。津田社長は、「ジェンマは、"2人乗りで走ること"をコンセプトに開発しました。恋人や夫婦=七夕、ということから、7月7日夕刻午後時7時に発表することにしました」と説明。斬新で未来的なデザインと、4輪感覚で乗り降りできる低いシート高などがジェンマの特長で、社長自らも、テストコースで試乗して開発に加わったことを明かした。
続いて守谷氏は、「ジェンマは2人乗りのためのデザインにした」と語り、具体的なデザインと性能の説明を従来モデルの250ccスクーター「スカイウェイブ」との比較で行なわれた。通常、シート下に設けられている収納スペースをシート前側に移動し、シート高を710mから610mmに下げることを可能にした。またエンジンやリアシートの位置も大幅に下げ、全体的に低い姿勢を実現。リアシートとの段差は、スカイウェイブの180mmに対し、ジェンマでは45mmとフラット化。ライダーとパッセンジャーの位置が近くなり2人で走る一体感が生まれるという。その他にもフロントフォークを寝かせたり、リアサスペンションをエンジンの前に配置するなど、各部を低重心化に最適なセッティングとしている。また、独特のリヤ周りの形状も低重心化に貢献しているという。これは日本市場専用という割り切りで可能になったもので、ナンバーの大きさや灯火類の規定などで海外市場では販売できないそうだ。
またスカイウェイブと比べて全長はほとんど変えず、ホイールベースが長くなっている。これはデザインも影響しているが、前後のオーバーハングを切り詰めたことで実現したという。これにより取り回しの悪化を防いでいる。またロングホイールベースにより、通常パッセンジャーは後輪の上に座るところ、ジェンマでは車軸間にライダーとパッセンジャーが位置できるようになった。そのため安定性も向上しているという。エンジンについては、基本部分はスカイウェイブと共通化しながら、吸排気系のセッティングでエンジン性格を変更。スカイウェイブは、高速走行まで含めたトータル性能を重視しているが、ジェンマは中低速の扱いやすさを重視した。
マーケティング戦略では、ジェンマのターゲットユーザーは、「年齢が高く、デザインを重視する人」としていると次廣氏は語った。250ccビックスクーター市場は、年々と年齢層が高くなっており、現在は若者だけの乗り物ではないとしつつ、一昨年ほど前から伸び悩んでいる市場の活性化には、リターンライダーに向けた商品投入が市場活性化に繋がると推測した。
四輪車のシート高と変わらないデザイン
続いて、小学館が発行する雑誌『Lapita』とタイアップしたトークショーが行なわれた。同誌編集長の齋藤好一氏、スポーツライターの金子達仁氏、ファッションモデルの浜島直子さん、ジェンマ チーフデザイナーの津島寿夫氏が壇上に上がった。
第一印象について司会者がゲストに尋ねると、「洗練されたファッショナブルな感じを受けました。私がイメージするバイクは、男らしいゴツゴツしたイメージなんですけど、ジェンマは都会的でスタイリッシュな柔らかい印象を受けました」(浜島)。「跨ってみてヘッドライトにビックリしましたね。ヘッドライトを上から見るといびつなんですよ。工業製品って普通は左右対称なのに、その中にいびつさを取り入れていることが面白いと思いましたね」(金子)。「跨ってみると写真で見た印象より、コンパクトでスマートなことに驚きました。懐かしいような未来的なデザインということですが、スーパージェッターの流星号を思い出しました」(齋藤)と、各自の視点から感想が飛び出した。
デザインについては、チーフデザイナーの津島氏から詳しく説明が行なわれた。「以前からスクーターのデザインに関わっていて、仕事がらイタリアに行くことが多いのですが、とにかくイタリアはスクーターが多いんです。大人の男性がお洒落に乗りこなしている。だけど日本に戻ってくると、大人は近くに行くにも外国車に乗っていて、スクーターに乗っているのは若者だけなんですよ。これを見て、スクーター文化が日本に受け入れられてないと感じましたね。ジェンマのデザインは、日本の大人にスクーターの楽しさをわかって欲しいという想いから生まれたものです。四輪車の高級感、安心感を演出していこうと考えました。シート高を低くして、着座位置を四輪車と変わらない位置、つまり目線を四輪車と同じにすることで、四輪車しか乗ったことない人でも、走行しやすいように配慮しました」とのこと。また収納スペースについても、シートに跨ったままヘルメットを収納してスマートな乗り降りするを可能にていると語った。フラットシートも、パッセンジャーの乗り降りが楽になるとともに、親密感を高めた2人乗りが可能になったという。
撮影・レポート:加藤真貴子(WINDY Co.)