エコ対策を施した家電が次々登場するなか、ついにページプリンタにもエコ機能に重点を置いた製品が開発された。この製品は業界初となるカーボンオフセット付きトナーを採用。プリントで消費する電力に相当するCO2を相殺しCO2排出ゼロにするという。さらに8月よりエコ機能を強化するべく、無償バージョンアップも控えている。機能強化を果たした最新鋭のページプリンタについて開発者に聞いた。
カシオ計算機 開発本部システム統轄部 齋藤亨氏 |
カシオ計算機 開発本部システム統轄部 平林宏行氏 |
「回収協力トナー」を発展させカーボンオフセット付きに
--他社に先駆けてカーボンオフセット付きのトナーを用意した経緯について教えてください。
齋藤 ちょうど3年前、回収協力トナーという取組みをスタートさせました。これは使用済みカートリッジをカシオが無償で回収しリユースする仕組みで、カートリッジはカシオが貸与しお客様には中身のトナーだけをご購入いただくものです。これで使用済みカートリッジの回収率を高めるとともに、お客様には低価格でトナーをご提供することでコスト削減につなげていただこうという想いでスタートさせました。
今回、回収協力トナーの取組を継続しながら発展させる形で、カーボンオフセット付きとしました。プリンタの消費電力に相当するCO2排出分を、トナーの売上金の一部から拠出し、カーボンオフセットプロバイダを通じて「認証排出削減量」を購入することで相殺します。ですからお客様に何らかのご負担をお願いするのではなく、弊社の環境に対する取組みのひとつとして行うものです。
カラーのページプリンタというと以前は大企業に特化したイメージが強かったのですが、最近本体が小型化し低価格になったおかげで、大企業だけでなく、印刷スピードを重視する中堅企業やSOHOのお客様がご利用いただくケースが増えてきました。カラーのページプリンタが一般化する中、環境に対する性能をさらに強化しようと取組んだのが今回のモデル、「SPEEDIA N3600」です。
一発エコモードなら気軽に実践できる
--このモデルは「カーボンオフセット付き回収協力トナー」だけでなく、環境にやさしい機能が他にもあるそうですが。
平林 ひとつは実用度を高めたトナーセーブ機能です。従来のトナーセーブは、全体が一様にトナーセーブされ、肝心な文字が読みにくく利用しにくい場合がありました。N3600に搭載されている新トナーセーブは、文字のトナーセーブを少なめにし、一方図形や写真のトナーセーブを多めにすることで、必要な文字情報が得やすい印刷物となるよう調整されています。もちろんユーザが、文字、図形、写真それぞれのトナーセーブを割合を個別に設定することもできます。これでトナーセーブがずいぶん使いやすく、実用的になったのではないかと思います。
もうひとつは8月に無償バージョンアップを予定しているエコロジー機能で、おおまかにいうと3つに分かれています。1番目は「一発エコモード」。これはいままでプリンタを使う上でエコを意識してはいても、設定が煩雑で難しく使われないケースがありました。そこで本体の節電ボタンを4秒間長押しするだけで、簡単にエコモードに移行できるようにするものです。
--エコモードとは具体的にどういう設定ですか
平林 初期設定では、まずマルチページ印刷機能で2ページ分を用紙1枚に集約、しかも両面に印刷し、さらにトナーもセーブします。それぞれの設定はユーザーによって変更できるので、たとえば2ページにまとめると読みにくい原稿などの場合は、1枚1ページにすることもできます。
またエコモードを使って印刷していることを目で見えるようにするため、「エコレベル印刷機能」を加えました。これは印刷領域外にエコレベルを示すマークを印刷するもので、マルチページ印刷、両面印刷、トナーセーブを使うと欄外にそれぞれ葉のマークが1枚印刷されます。これを見れば、印刷した人がどれだけ環境への配慮をしているかがひと目で分かります。これを「見えるエコ」と呼んでいます。
さらに、N3600を複数台導入している企業などに便利な「エコログ集計」という機能も用意します。これはマルチページや両面印刷の回数をカウントして集計し、エコモードの利用頻度を把握したり、消費電力やCO2換算量などを一覧できるツールで、部課単位で環境問題にどう取組んでいるかなどが数字で見られるようになります。
エコモード(トナーセーブ、2ページ/1枚、両面印刷)で印刷すると下にエコレベルを示す葉のマークが3つ印刷される |
左が従来のトナーセーブ50%、右が新トナーセーブ50%。明らかに文字が読みやすくなっている |
簡単ローコストな認証印刷
--その他、N3600で特徴的な機能があれば教えてください。
齋藤 非接触ICカードやFelica対応携帯電話を使って簡単に認証印刷ができるところですね。オプションのカードリーダやハードディスクなどが必要となりますが、ICカードFelica対応携帯電話を使った認証印刷がプリンタドライバの設定で簡単に行え、認証サーバも必要ありません。
カード情報を持った印刷データがプリンタに送られてくるとハードディスクに保存され、ICカードやFelica対応携帯電話によって認証を受けない限り印刷されない仕組みになっています。なお保存された印刷データはユーザが設定した時期を過ぎると自動的に消去されるので、ハードディスクからの漏洩防止や不要な印刷の削減にもつながります。
N3600はエコとセキュリティ、いずれも分かりやすく簡単になっています。セキュリティ対策の設定は難しい、エコ設定は複雑で分かりにくいと感じていたお客様の敷居を下げることができると思っています。
--ありがとうございました。