7月5日、丸の内TOEIで、映画『クライマーズハイ』の初日舞台挨拶が行われましたので、さっそく取材してきました。
「クライマーズ・ハイ」は23年前に起きた日航機墜落事故を題材に、事故の報道に命をかけた新聞記者たちの熱いドラマを描いた原田眞人監督作品。原作者の横山秀夫自身が当時の事故を新聞記者として経験しており、そのお墨付きを得た本作品のリアリティはかなりのもの。僕もそうですが、当時を直接知らない世代にこそ、特にご覧いただきたい一本です。
公開初日の舞台挨拶には、原田眞人監督をはじめ、堤真一、堺雅人、高嶋政宏、尾野真千子、でんでん、マギーという豪華な面々が登壇。本作への思いや、撮影中のエピソードなどを披露しました。
左から、でんでん・高嶋政宏・堺雅人・堤真一・尾野真千子・マギー・原田眞人監督 |
まず、撮影現場の雰囲気はどうだったのかという質問に、堤真一は「現場もドキュメンタリーでしたね。監督の手法が普通とは少し違っていて、役者が台詞を間違えようが忘れようがとにかく最後まで続けるというものなんです。何かミスが起きた時にどう対処するかというところまで求められる現場だったので、その中で生まれてきた緊張感があり、本当の意味でドキュメンタリーでした」と回答。
確かに本作では、記者同士がそのプロ意識ゆえに激論を交わしたり怒鳴り合ったりするシーンも多く見られます。あの緊張感は演技というよりも現場の雰囲気そのものだったわけですね。
そして、怒鳴り合うといえば、主人公の悠木(堤真一)と激しくぶつかり合う場面が印象的な佐山(堺雅人)を忘れてはいけません。
今回の演技についての質門に、堺は「演じていておもしろかった。本気の男たちが本気で仕事をするだけで感動できるんだなというのを感じました」と、映画での熱い役とは違う、クールな微笑を見せていました。
ところで、本作は登場する女性の数がかなり少なく、筆者としてはそれがちょっと残念だったのですが、これは80年代の新聞社という男くさい職場を舞台にしていることもあり仕方のないところ。そんな中で若手女性記者という目立つ役を演じた尾野は、「男くさい現場だったので、女として負けないようにしよう、という役作りをしました」とコメント。その言葉通り、見事に男性社会で奮闘する女性記者を演じきった尾野は、個人的に今後も注目していきたい女優です。
また、日航機墜落事故と並行して進むもうひとつのストーリーのキーパーソン、安西を演じた高嶋は、本作に出演した経緯について、「監督とはデビュー当時ご一緒して以来、20年ぶりだったので最初の顔合わせのときには緊張しました。でも現場に入るとあまりにもスムーズで逆にびっくりしました」とのこと。20年ぶりと言いながらも監督の作り出す世界観にしっかり溶け込んでいたのはさすが。見た後だと言えるけど、あの役はもう高嶋以外には考えられないです。
そして、映画でのランニング姿がインパクト抜群だった、整理部部長・亀嶋役のでんでん。舞台挨拶でもやっぱりランニング姿についての質問が出て、これに「暑かったのでランニングを着たら監督からOKが出ました。あの格好で暑い日だってことを表現できるからよかったです」とユーモアたっぷりに切り返し、会場も大爆笑。
でも僕はそこじゃなくて、でんでんがちゃんと服を着てる! というちょっとズレたところに感動していました。だってあのランニング姿、記憶に残りすぎだもの……。
続いて、「撮影現場での裏話」という難易度の高い質問をMCから投げかけられたのは、映画の中でコミカルな整理部員の吉井役を演じたマギー。
「でんでんさんが似顔絵を描くのがお上手で、ほとんど全員分の似顔絵を描いてみんなに渡していたんです。……でも撮影中に渡していたってことはあれ、本番中に描いていたってことだと思うんですけど、みんなが本気で戦っているときにでんでんさん、似顔絵を描いていたんですか?(笑)」と茶目っ気たっぷりに話を振ると、これにでんでんが「似顔絵を“本気で”書いてました」とナイスなやり返し! 映画同様、整理部員同士の絶妙なコンビネーションを見せてくれました。
最後に、撮影の現場について原田眞人監督から、「日航機墜落事故の第一報がいかに臨場感あふれる場面になるか、そこが映画を作る勝負どころだと思っていました。それを越えてからは、役者やスタッフの間に信頼感が生まれました」とのコメントが。映画の内容以上に、スタッフとキャスト同士の強い絆が伝わってくる舞台挨拶となりました。
……と、通常ならばここで終了するわけですが、この日は本作がクランクインからちょうど1年を迎える記念すべき日にして、主演の堤真一&原田眞人監督のダブル誕生日。まあ正確には堤が2日前で監督が2日後なのですが、ともかくめでたい! ということで、号外ケーキが登場。
何がどう「号外ケーキ」なのかというと、このケーキが新聞風のデザインで作られているから、らしいです。あと運んできたスタッフが「北関東新聞」という腕章をつけていたりと、かなり凝った演出。
登壇した面々はこのサプライズについて何も知らされていなかったらしく、堤は「この歳なので、めでたいかどうかわかりませんが」と照れ笑い。あまりにも嬉しかったのか、ケーキに近づきすぎてスーツにクリームをつけてしまうというハプニングもありました。
一方の原田監督は、「これからも作品初日は7月5日にしたいです(笑)」と、会場を沸かせていたので、これは来年の7月5日にも期待が持てそうですね!(と、プレッシャー)
『クライマーズ・ハイ』は丸の内TOEI1他、全国公開中です。
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