AIRを巡る動きに関してはもうひとつ注目すべきものがある。Adobeが5月1日に発表した「Open Screen Project(OSP)」である。OSPが目指しているのは、FlashやAIRのアプリケーションをあらゆるスクリーン上で閲覧できるようにすること。すなわち、携帯電話やテレビ、カーナビ、大画面スクリーンなど、条件の異なるさまざまな端末で同一のアプリケーションを動作させるというものである。
「現時点でも一部では実現できている面もあります。たとえば携帯電話やモバイル機器ではFlash LiteによってFlashアプリケーションが動作します。しかし、細かな部分では作り方を変えなければいけなかったり、開発のメソッドが異なったりすることがありました。その部分を共通にしていこうというのがOSPの試みです」(太田氏)
OSPに関連して、同社ではFlash Liteのライセンス料の撤廃やAPIの公開なども予定しているという。またFlash Playerの次期バージョンとなるFlash Player 10ではハードウェアアクセラレータでのレンダリングがサポートされる予定で、これを活用すれば大画面スクリーンでの描画にも対応することができるようになる。
OSPの意義、そしてFlashやAIRとの関係について、太田氏は次のように語っている。
「現在はすでに、『これがアプリケーションです』といったようなものはなくなってきていると思います。スタンドアロンなのか、クライアント/サーバなのか、SaaSなのかなどといったことはユーザにとってはあまり関係がなく、またPCで使うのか携帯電話で使うのか、といった違いもなくなりつつあります。そういう意味でアプリケーションというものの定義が無限に広がってきていて、それを違和感なくまとめることができるのがOSPだと思っています。そしてそこに一番近いのがFlashやAIRなどの技術ではないでしょうか」
「とにかく使ってほしい」
最後に太田氏は、AIRやその他のAdobe製品のユーザに対して「とにかく使って、作ってみてほしい」と呼びかけた。
「エンタープライズはコンシューマとは切り離すことができません。したがって現場で使っている人の言葉が大事です。新しいパラダイムを活かしたユーザとのコミュニケーションによってアプリケーションを進化させてください。アドビの提供する技術で積極的にそれをサポートしていければと思っています」(太田氏)