6月17日、Adobe SystemsはRIAプラットフォーム「Adobe AIR」の最新版である「Adobe AIR 1.1」をリリースした。このリリースによってAIRは初めて日本語を正式にサポートするようになり、国内の開発者が抱えていた日本語に関するさまざまな問題が解決することとなった。詳細はこちらのレポート記事を参照していただきたい。マイコミジャーナルでは、今回のリリースにあたってアドビシステムズでDMO(ダイナミックメディア)テクニカルエバンジェリストを務める太田禎一氏に、AIR 1.1およびAIRを通じた同社の戦略についてお話を伺った。
アドビシステムズ DMO テクニカルエバンジェリスト 太田禎一氏 |
太田氏は1.1のリリースに対して、「日本語対応になったことで業務レベルの要求に対してもきちんとデプロイメントができるようになり、ようやく最初の開発がひと段落した」と語っている。
もちろん、1.0が日本語に対応していなかったのは決して日本市場がないがしろにされているからとうわけではない。そもそも1.0が正式にサポートしていたのは英語のみであり、1.1は厳密には日本語対応版ではなく日本語も含めたマルチ言語対応版である。太田氏によれば、1.0が英語のみでリリースされた理由は「AIRが非常に野心的なプロジェクト」(同氏)だということに関係しているらしい。
AIRが目指しているのは、現在のWebを構成する主な要素、すなわちHTMLやJavaScript、Flash、PDFなどを全部ひとつにまとめることで、これはWebの姿を一新する世界観である。そこでマルチ言語対応などは後回しにして、まずはその世界観を明らかにすることを最優先したのがAIR 1.0なのだという。したがって1.1が最初のマルチ言語対応版となるのは当初のロードマップ通りであり、今回はそれが完了したということになる。
日本語が正式にサポートされていないAIR 1.0の段階でも、国内の開発者やユーザーからの反応は非常に大きかった。これはAIRを構成するFlashやFlexといった環境がすでに浸透していたという理由もあるが、それと同時にAIRで見せた新しい世界観が評価されたからということの表われでもある。その観点から見たAIR 1.1の日本語フル対応ということの意味を太田氏は次のように語っている。
「AIRにはFlashやFlexの延長としての側面と、HTMLやAjaxの延長としての2つの側面があります。このうちFlash/Flex環境の中での日本語の利用は特に問題がありませんでした。それに対してHTMLやAjaxで作っていたアプリケーションをAIRにする場合には、1.0では不十分な部分が多くありました。しかしAIRの世界観というのはWebがデスクトップになるということであり、Flashを使わずHTMLやAjaxだけでも実現できるはずのものです。その世界観が、日本の市場においては1.1で初めて実現したということになります」
現段階で出てきているAIRアプリケーションはFlash/Flexベースのものが大半を占めるとのことだが、今後はHTML/Ajaxをベースとしたものも増えてくることが期待される。