--競合他社の教育戦略との差別化は?

SAPは教育を競争力強化と位置づけています。われわれの教育ポートフォリオはユニークで、包括的なものです。実際、教育はライセンス売り上げの増加に貢献しています。

SAPには、教育専任のスタッフが1,000人以上います。米Oracleには、業務アプリケーションでは教育専門のチームはなく、しっかりした認定プログラムもありません。Oracleは教育分野での方針を変更し、社内と電話のみで提供していると聞いています。教育の一部としてチェンジマネジメントを取り込んでいません。

--教育戦略で重要視していることは何ですか?

顧客との対話を通じて、ニーズを探ることです。顧客は何を必要としていて、SAPはどこで支援できるのか --- これまで展開してきたプログラムやイニシアティブの多くは、このような顧客との対話により生まれたものです。

各社がどのソフトウェアを購入し、その製品がどのように貢献しているのか/していないのか、期待通りだったのか、足りない部分はどこか、設定/導入/実装/エンドユーザーのトレーニングと、すべてのプロセスを顧客とのコラボレーションにより定義していきます。特に大手顧客やパートナーとはこのような関係を長い間続けています。

SAPを選ぶということはどんな意味があるのか、という観点での教育もあります。これは、他社からの乗り換えでも、新規導入でも重要なことだと思っています。

--SAPの教育を利用するユーザーセグメントは?--

性別では、圧倒的に男性が多いですね。個人的には、ソフトウェア業界は女性に適していると思うので、女性のSAPスペシャリストも増えてほしいと思っています。

地域別には、中国などのアジア太平洋、ロシアなど東欧諸国、ブラジルも多いです。先の大学プログラムの拡大により、インドなど一部の国では新卒者向けのプログラムに力を入れています。

メソッドとしては、ある地域で限定したパイロットプログラムを展開し、成功すればそれをほかの地域に広げるという手法です。複数の国で平行して複数のパイロットが進めています。

--SAPで得られるキャリアの種類にはどんなものがありますか? 不足しているものは?

導入/設定など、従来からの技術スキルのほか、コンサルタントも拡大しています。

強い需要がある分野としては、ソフトスキルです。グローバル化を受け、世界に分散したチームを組むことが増えています。コンサルティングであれば、文化の違いをカバーし、スタッフの能力を生かすことができるようなコミュニケーション能力が求められます。

たとえばSOAにより、IT(技術)だけではなくビジネスのスキルが必要になりました。プログラムやコードの理解だけではなく、ビジネスモデルは何か、どのように戦略にかえていくのかの理解です。そこで、キャリアの変更や拡大を支援するようなカリキュラムを提供しようと工夫しています。

実際のところ、キャリアはその地域の文化の影響を大きく受けます。一部の国ではキャリア変更が容易ですが、そうではない国もあります。たとえばドイツでは、最初から最後まで同じキャリアを続けることが一般的で、変更は非常に難しいといわれています。

我々は世界各国の顧客と接点がありますが、グローバリゼーション時代、重要な部分は教育のグローバル化だと実感しています。ある国で学位をとっても他の国で利用できなければ意味が半減します。制限が生まれるからです。これまでにはなかった新しい課題です。

--将来の計画は?

SAPの教育事業はここ約4年ほどの間、2ケタ成長を続けています。この背景には、プロセスの早い段階からSAPとの関係を築いておこうと、顧客やパートナーが取り組み始めたことが挙げられます。エンドユーザーを早くから参加させる、などのことです。

SAPの最終的な狙いは、ユーザーが我々の技術を受け入れ、利用することです。これにより、ROIを向上してもらうこと、つまり成功してもらうことです。それなしには、SAPを導入する意味がありません。ソフトウェア実装プロセス中にトレーニングを進めても、スムーズに導入が進まないことが多かったため、われわれは顧客に早くから呼びかけています。場合によっては、ソフトウェア実装の決定が降りる前にトレーニングや教育がスタートすることもあります。これは良い効果を生んでおり、シェア拡大につながっています。