--SaaS専業ベンダとの差別化は?
たとえば、米SalesforceはCRMとSFAしか提供していません。Business By Designは、財務、CRM、SCMと機能の幅が広く、スコープがまったく異なります。SFAのみで深い機能を求めている企業には、SalesforceのようなSaaSが適していると思います。
米Oracleは、さまざまなオンプレミスアプリケーションを提供しており、われわれとは競合関係にあります。ですが、少なくとも私からみると、SaaSではOracleの動きは活発ではないようです。
このほか、SaaSでは、特定地域に強いニッチなベンダとも市場を争うことになります。
Business By Designの特徴は、一部に導入し、拡大していくことができる点です。SFAのみ、CRMのみ、というわけではありません。
--クラウドコンピューティングの動きをどう見ていますか? SAPがこれにあわせて戦略を変えることがあるのでしょうか?
仮想化は重要で、すべてのベンダにとって無視できない動きです。現在のところ、ホスティングのためのコスト効率のよい手段として進んでいるようです。クラウドコンピューティングにより、われわれの収益モデルが変わることはありません。
クラウドコンピューティングは、さまざまなポイントアプリケーションの統合を加速する、とみることも出来ると思います。ソフトウェア業界をずっとみてきましたが、ベストオブブリード型に傾く時期、スイート型に傾く時期とサイクルを繰り返しています。
--ハードウェアベンダと提携したアプライアンス戦略について、教えてください。
Business All-in-Oneにフォーカスした早期導入プログラム「SAP Fast Start Program」で進めています。顧客は専用Webサイトを利用して、自分たちのニーズに合わせてコンフィグレーションを行い、コストを試算できます。これには、ソフトウェア、導入費用、ハードウェアなども含まれます。SUSE Linux、SAP Max DBを利用、事前インストール、事前検証済みのものを提供します。これにあたり、米Hewlett-Packard、米IBM、米Intelと提携しています。今後もベンダは増やしていく予定です。
短期に導入できるのが特徴で、インドでは6週間半で導入したという顧客事例があります。
このFast Startは現在、7カ国で展開しています。第3四半期には、日本を含め10カ国で提供を開始します。
なお、Business By Designですが、現在SAPがホスティングしていますが、将来的にはオープンにする予定です。
--SMB分野における課題は?
"SAPイコール大企業"と思われていますが、SAP顧客の75%がSMBです。数にして、3万5,000社です。これがよく知られていないということが最大の課題です。
今後も、SAPのブランド力をSMBにも拡大していくことにフォーカスしていきます。具体的には、Fast Startのようなプログラム、成功事例などによりプッシュしていきます。
製品ポートフォリオや技術、市場の受け入れなどの要素はすべて健全です。後は、ブランドの正しい認知を広げていくことだと思っています。
--日本市場をどうみていますか?
SAPにとって、非常に重要な市場です。SAPはこれまで、日本市場の経済指標を上回る成長率で成長しています。大企業では大成功しており、この1、2年は中規模企業にさらにフォーカスします。Fast Startの提供開始により、大きな変化があるのでは、と期待しています。