--SAPがSaaSを開始するにあたり、パートナーの反応はどうですか?
SaaSでは、(既存のオンプレミス型と)提供形態およびビジネスモデルが非常に異なります。
Business By Designでは約50社とパートナー提携していますが、半分が既存パートナーで、半分が新規です。からくりを理解してもらったパートナー企業のフィードバックは、非常にポジティブです。
SAPのパートナーには、
- 再販事業者
- サービス
- 補完的なコンテンツプロバイダ
の3つのタイプがあります。
1の再販事業者は、サブスクリプションモデルにフォーカスしており、単に契約を提供するだけでなく、その更新も目標にしています。つまり、取引だけではなく、顧客との関係構築に力を入れています。
2のサービス事業者は、パッケージサービスにフォーカスしています。データマイグレーションなどのサービスを提供することで、差別化を図っています。また、顧客を新しいモデルにガイドするという役割も担っています。企業は、ソフトウェアの配信モデルを変えることがどのような影響を自社ビジネスに与えるのかを知っておく必要があります。SaaSはサービス事業者にとっても、チャンスといえます。
3は名前のとおり、補完的なビジネスサービスを提供するプロバイダで、ビジネスサービスのプロビジョニング、マッシュアップの構築などを提供しています。
--SMB市場の中で、SaaSはどのぐらいの比率を占めるようになるとみていますか?
SMB分野では、小規模企業向けの「SAP Business One」、中規模企業向けの「SAP Business All-in-One」があり、その間を埋めるものとしてSaaSのBusiness By Designがあります。ですが、単純に「従業員が○○人だから、この製品」という展開はしません。
地域や業界により、業務アプリケーションに求める機能は違います。さらに言うなら、企業のITリソースはさまざまで、それぞれがユニークな要件を持っています。ケースバイケースです。我々としては、紋切り型ではなく、個々の企業に最適なものを提供するつもりです。
SaaSに限って言うと、SaaSは新しい潮流であり、各社の関心も高いのですが、すべての企業にSaaSがフィットするとは思えません。配送での顧客サービスレベルの高さを差別化とする企業は、コアとなる物流機能をSaaSで、とは思わないでしょう。バリューチェーンをベースに差別化を提供する企業は、自分たちのビジネスプラクティスにあわせてアプリケーションをカスタマイズするでしょう。一方で、カスタマイズなしに迅速にアプリケーションを導入したいという企業もあります。
SAPとしては、SaaSかオンプレミスかという視点ではなく、この企業は業界特定の機能がいるのか、コストと時間が最大の問題なのか、ソリューションのカスタマイズが必要か、などの観点を見るようにしています。その上で、最適なものを提案していきます。
ですから、比率の予想や目標はありません。
地域という点では、一部の国では、ミッションクリティカルな部分でもSaaS導入が進むでしょうが、中国などSaaSへの関心は低い国もあります。SaaSは、今後の成長分野であることは間違いありません。ですが、オンプロミスのみ、SaaSのみということにはならないと予想します。重要なことは、選択肢があるということです。
日々、多くの顧客と接していますが、どの企業も何らかの課題を抱えています。あるSaaSベンダが"ソフトウェアは死んだ"と言いますが、そうとは思えません。特にミッションクリティカルでは、(この考えに)根本の部分で同意できません。