――細かいところですが、劇中で16ミリを映写するシーンは本当に映しているところを撮っているのですか、それとも合成しているのでしょうか?

山崎「あれは、本当に映しています。やはり、はめ込み映像は違和感があるので。だから1作目のみんなでテレビを見るシーンの時も本当に当時のブラウン管に映像を映しているんです。そのときの僕のオーダーは、当時のブラウン管に当時のテレビの映像が映るものを探してくれというものでした。そして、ブラウン管とビデオを繋いで映像を流しました。それに、16ミリを映写するシーンは大事なシーンなので、そこで『あっ、合成だ』と分かってしまう物語に集中できなくなると思ったんです。それを避けるためにも本当に16ミリで撮影して、それを現像したものを編集してもらいました」

――例えば、最初はCGで撮影を考えていたけど、後でミニチュアに変更するなど、撮影の手法に試行錯誤はありましたか?

山崎「1作目のときに、撮影前にデモリールというプレゼン用の映像をつくりました。というのは、昭和の映画と言われたときに多くの方が思い描くイメージは、たぶんセットがあって、そこに作られた路地や玄関、家屋で話が進むというものだと思うんです。でも、この『ALWAYS』はそういう映画ではないときちんと伝えなければならないということを、阿部さんや、本作のプロデューサーチームとの間では共通認識として持っていました。そして、広い画の含まれたデモリールを作りましたが、その映像はミニチュアセットにCGの車を走らせたものだったんです。その画をみて、CGで車を作って走らせても、映画に説得力を持たせるのはとても大変だということがわかりました。それに僕の中でも満足できる画ではなかったので、"道路は実物を作りたい"と言ったんです。そして、"自動車も、特に目の前を走っている車に関しては実際の車を使いたい"という話をしたんです。このように、デモリールを作ったことによって、なにをしなければならないかが、明確になったと思います」

現代の羽田空港にブルーバック合成で昭和30年代の羽田空港の姿を合成。すべてをCGで作るのではなく実際の空港で撮影することによってリアリティが増す
(c)2007 「ALWAYS 続・三丁目の夕日」製作委員会

――映画でVFXを使うことにはさまざまな意味があると思います。『ALWAYS 三丁目の夕日』、『ALWAYS続・三丁目の夕日』2作品においてVFXを使う意味を教えてください。

山崎「例えば、あまり風景を撮らないという方法もあると思います。ただ、お客さんの潜在意識の中に、これは昭和30年代に生きている人を撮った作品ですよということを、キチンと認知して頂くには、そういう風景のシーンがないといけないんですよね。ずっと室内ばかりで撮っていると、だんだんセットで撮影しているんだと分かってしまいますし、やはりいくつかは自然な形で広い画を見せなければならないと思うんです。そういう意味でいうと、『ALWAYS』においてVFXは必要ですね。たとえばこれが室内だけで進む話なら、VFXはいらないと思いますが、昭和30年代というものが、『ALWAYS』の売りとしてある以上は、やはり少しでも広い画を見せないと、お客さんも満足してくれないと思うんです」

山崎監督の所属するCGプロダクション白組のスタジオ(写真左)。『ジュブナイル』に登場したロボット『テトラ』が飾られている(写真右)

「ALWAYS 続・三丁目の夕日」展が大阪で開催

VFXクリエイター出身である山崎監督はCGだけでなく様々な手法を組み合わせ、リアルなシーンを作り上げた。6月7日から大阪の交通博物館で開催される「ALWAYS 続・三丁目の夕日」展では、撮影で使用された、「鈴木オート」の居間や小物、撮影に使われた「夕日町三丁目」の1/43スケールのジオラマなどが展示される。また、先行展示として5月14日からエントランスギャラリーで、撮影に使われた上野駅のジオラマや撮影風景のパネルが展示されている。『ALWAYS 続・三丁目の夕日』がどのような手法で撮影されたのかを知る良い機会だ。 会場は大阪・交通博物館。期間は6月7日から6月11日まで

ALWAYS 続・三丁目の夕日
豪華版7,140円(通常版3,990円)
発売元:小学館 販売元:東宝

インタビュー撮影:中田浩資