集合知を利用したナビゲーション・システム
3日間を通じて個人的に最も面白かったのは、車用ナビゲーション・システムを開発・提供するDash Navigationのセッションだった。Linuxベースの車載端末Dashをプラットフォーム化し、Where 2.0では対応するサードパーティ・アプリケーションのデモが行われた。
DashはGPS、Wi-Fi、GPRSを装備しており、ユーザーから送られてくる道路情報がリアルタイムでナビゲーションに反映されるのが特徴だ。抜け道が何かのトラブルで渋滞したとしても、すぐに代替ルートを割り出して誘導してくれる。そのDashユーザーの集合知であるデータやDashのサービスにパートナーがアクセスできるAPIが公開された。例えばmyFUNAMBOLのDashアプリでは、カレンダー機能にミーティングの場所までの距離や到着までの所用時間が反映される。Trapsterでは、警察の検問や取り締まり場所を、過去のデータにDashユーザーからのリアルタイム情報を加えて通知してくれる。Dashがトラックの運ちゃんネットワークのように機能する……かもしれないサービスだ。集合知デバイスが今後どのように進化していくかが楽しみだ。
Flashベースのマップアプリ「FreeEarth」
マップソフトではPoly9 GroupがFlashベースの「FreeEarth」を披露していた。また同社は「GeoAlert 2.0」というマップベースの緊急通報技術を発表した。これはCell Bridge Communicationsと共同開発したAdobe AIRアプリケーションだ。FreeEarthのプログラマブル3Dマッピングを利用している。たとえば石油精製所の事故のような緊急事態が起こった場合、ロケーションを特定すると、その時の気象情報や海流などから影響を受けそうな地域を割り出して警報を発する。
「ロングテール」理論のAnderson氏がWhereに登場
プログラムガイドを見ただけでは一体どんな内容なのか想像できなかったのがChris Anderson氏のセッションだった。同氏はオンラインビジネス分野において「ロングテール」という言葉を生み出したことで知られる。講演のタイトルは「DIY Drones」。マップにも、オンラインマーケティングにも関係がなさそうだ……。
始まってみたら、Anderson氏の趣味である、地上を偵察する無人航空機(UAV)を自作するというプロジェクトの話だった。1機400万ドルもする軍のUAVの機能を、ホビーレベルでなるべく安く実現しようというのだ。たとえばLego Mindstorms NXTをラジコン飛行機のオートパイロットに使えば1,000ドル以下に収まるという。GPSとカメラ付きのスマートフォンを用いれば500ドル以下だ。そのテスト飛行でGoogle本社を撮影してみたところ、Googleの航空写真に写っているプール内の「Google」の文字が本当は書かれていないことが判明したという。
2日目の最後に行われたAnderson氏の講演のポイントは、趣味自慢でも、航空写真撮影の奨励でもない。デベロッパが大多数の参加者に対して「テクノロジを手頃で分かりやすく、身近な存在にするのがわれわれの仕事である」と述べてセッションを締めた。