自動車産業に関連する技術情報展示会「人とくるまのテクノロジー展 2008」が始まった。多岐にわたる展示が行なわれているが、まずは目についたディーゼルエンジンを集めてみた。

日本で売れるかどうか?

日産自動車のブースでは、クリーンディーゼルエンジンを搭載したエクストレイルの前から人垣が途切れることがなかった。搭載されているエンジンは2L(リッター)+ターボチャージャーの「M9R」。これを搭載したエクストレイル、キャシュカイはすでに欧州で発売されている。人気を集めていた理由のひとつは、日本での発売を宣言していること。導入は今年の秋が予定されている。

「M9R」は1600気圧のコモンレールシステム、ピエゾ式インジェクターによる燃料噴射タイミングと噴射量精度の向上や、吸気・排気のポートを対向して配置するダブルスワールポートなどが特長。空気・燃料をより効率よく混合し、燃焼効率の向上を実現している。また、自己再生型のディーゼル・パーティキュレート・フィルターは排出ガス中の煤(すす)の99%を取り除くという。

スバルは欧州に登場させたばかりの水平対向4気筒ディーゼルターボエンジン(ボクサーディーゼル)を出展。昨年の同展や東京モーターショーにも展示されたが、それだけ気合いが入っているということだろう。水平対向ディーゼルの特長として低重心、低振動、高剛性を上げているが、これはガソリンエンジンでも全く同じ。しかしディーゼルは振動が多いため、これらの特長がより生きてくる。

ボクサーディーゼルの日本への導入を聞いてみたが、現在のところ検討中とのこと。技術的にはほぼクリアになっているが、価格設定を含め、日本の市場で受け入れられるかどうかで悩んでいるのだという。

三菱自動車は1.8Lと2.2Lのターボディーゼルエンジンを開発中。どちらも圧縮比を低めに設定し、シリンダーブロックにアルミを使用。エンジンの軽量化を可能にしたという。開発は1.8Lのほうが先行しているようで、2009年に欧州へ導入する予定。日本への導入は市場の状況次第ということらしい。

日産のクリーンディーゼルエンジン「M9R」

日産のエクストレイルには人が群がり、全体写真は撮れなかった

スバルのボクサーディーゼルは水平対向による低振動などをアピール

三菱自動車のディーゼルは1.8Lと2.2Lの2本立て。写真は2.2Lのもの

クリーンディーゼル開発が最前線

マツダも次世代クリーンディーゼルエンジンを出品。ガソリンエンジン並みの軽量化や2ステージターボチャージャーが施され、高回転までスムーズに回るレスポンスの良さなどを目指して開発中だ。また、次世代4気筒ガソリンエンジンも並べて展示された。こちらは熱効率の向上を目指したもので、高エタノール濃度燃料への対応も検討しているという。

ここまではほとんど2Lクラスのディーゼルエンジンばかり。最初は市場の大きなクラスから手をつけるのはわかるが、経済性を考えるならさらにコンパクトなエンジンが欲しいところ。それで見つけたのはスズキの展示していた1.3Lのディーゼルエンジンだ。これはイタリアのフィアット社からライセンス供与を受けて生産しているもので、インドや欧州向けモデルに搭載している。日本でもこういったコンパクトなディーゼルが欲しいと思う。

今回は特に展示されていなかったが、ホンダもクリーンディーゼルの開発を公開しているし、トヨタもスケジュールこそ明らかにしていないが、準備は着々と進めているようだ。

聞いて回ったところ、欧州の排気ガス規制がクリアできれば、日本の規制もほぼ大丈夫だという。ディーゼルで主に問題となるのはPM(粒子状物質)とNOx(窒素酸化物)だが、欧州はPMが少し厳しく、日本はNOxが厳しいという状況。ただし米国の規制はさらに厳しく、欧州・日本では発売できても、米国ではキツいという可能性もある。いずれにしても日本で普通にディーゼルに乗れるようになるのも、それほど遠い先ではないようだ。

マツダの次世代クリーンディーゼル。高回転が特長

マツダの次世代4気筒直噴4気筒ガソリンエンジン

スズキがインドで生産する1.3Lディーゼルエンジン「D13A」

日産ディーゼルは尿素SCR触媒とPMクリーナーを一体化したものを展示

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