Wikiの使い道 - 4パターンで考えてみる

ここでは主に企業内におけるWikiエンジンの活用法をみていきたい。もちろんほかにも色々あると思うが、筆者が関わってきたのは主に以下の4パターンだ。


【ケース1】ナレッジマネジメント……明文化されていない社内ルールの整理に

新入社員にしろ中途社員にしろ、入社したばかりの人はその会社のことについてほとんど何も知らない状態だ。業務の進め方や、就業規則ほどは明文化されていないローカルルール、PCを利用するにあたっての注意点(サーバの名称や使い方など)などさまざまな決まりが存在する。たいてい、そうしたことは先輩が口頭で教えていくのだが、あまりに非効率的だと思ったことはないだろうか。

そうした時に役立つのがWikiエンジンだ。最初は先輩がコンテンツを書きためておいてもよいし、教えられた後輩がノートに書く代わりにWikiに記述していってもよい。そして次に入社してきた人はまずそれを見て覚え、違う点があれば自分で修正していけばよい。頭に入れて覚える、ノートに書きとめるといった手法では個人の記憶の範囲内にしかとどまらない。そうしたノウハウはオフィス内で共有し、役立てていくほうがよい。

ナレッジマネジメントの例。規則等には書かれていないローカルルールや適宜修正される情報を蓄積していく 修正コストが低いのがメリットなので、必要な情報をどんどん書き込んでいく

【ケース2】社内用語集……新入社員の仕事として社内用語集の作成に

【ケース1】と似ているが、企業内で使われる単語は意外と他の企業では使われていないものが多い。中途入社などであらかじめ業界の知識を持っていると、かえって勘違いを生みやすく、思わぬミスを誘発してしまう。そうした時に便利なのが、社内での共通用語をWikiとしてまとめる行為だ。Wikiエンジンは相互の文書に簡単にリンクが貼れたり、すでにページが作成されている用語に対して自動リンクする機能を備えるものもある。

筆者の知っているケースでは、用語集作成を新入社員の人たちの作業として割り当てていた。ゼロベースからさまざまな用語を覚えていくので、知らなかった単語をとにかく書き出し、自分または新入社員の仲間、先輩に意味を書いてもらうのだ。これを毎年繰り返していけば、年が変わるごとに変化していく用語の意味や、新しく追加された単語も把握しやすくなる。

用語集はグルーピングせず、一つずつの用語でページを作って説明していくと便利だ 多くのWikiエンジンが持ち合わせるオートリンク(既存ページへの自動リンク)を使用すると、他の単語に自動でリンクが貼られてさらに便利になる

【ケース3】プロジェクト情報集積……社内プロジェクトデータベースとして

開発プロジェクトにおいてWikiエンジンを利用するケースは多い。Wikiエンジンの中にはBTS(バグトラッキングシステム)をプラグインで提供するものや、プロジェクト管理ソフトウェアの一機能としてWikiエンジンを提供するものもある。そのプロジェクトに関わる情報をすべて集約していくことで、何かを知りたいときには全文検索を使って調べていくことができるようになる。

Web系システムの開発では仕様が更新されることがよくある。その際にきっちりしたドキュメント修正を行ない、版を改め、関係部署に配布し直すというのは非常にコストがかかる。場合によっては担当者ごとに持っている文書のバージョンが異なっていたりする。Wikiを使って情報を一元管理すれば、情報が誤って伝わる可能性は低くなる。また、大抵のWikiエンジンでは最近更新されたページの一覧や、RSSフィードによる更新情報の配信ができるようになっている。これらをうまく使うことで情報の伝達コストを下げることが可能だ。

バグトラッキングシステム(BTS)の例。簡易的ながらBTSとしての機能は十分だ バグ報告の詳細。メッセージを登録できる

【ケース4】個人のメモ……業務日誌やToDo管理に使ってみるのは?

個人のメモ帳としてWikiエンジンを利用するケースも多い。企業内の情報を書く場合、オープンなネット上では書きづらい。そこでローカル型のアプリケーションや、ローカルコンピュータ内でHTTPサーバを立てて利用するケースが多い。個人の業務日報や、作業でつまづいた点、ToDo、買いたいものリストなどさまざまな情報を集中させておく。書き出しておくことでうっかり忘れてしまう問題も解消でき、すっきりと次の作業に移ることができるようになる

個人向けに便利な「TiddlyWiki」。サーバを立てずに利用できる 色々書き込んだところ。Save時にはJavaScrpitの警告が表示される