コンセプトカフェ、底が知れねェ…
数年前から、世間ではメイド喫茶や執事喫茶などに代表されるコンセプトカフェが流行の兆しを見せています。
僕もまだまだ未熟ながら、これまでにいくつかのコンセプトカフェを体験し、その魅力に触れてきました。そして「ああ、コンセプトカフェね、わかるわかる」……と、安易にコンセプトカフェ界を理解した気になっていました。
しかし、甘かった。
世の中には、僕の想像をさらに超えたコンセプトカフェが存在していたのです。
――ということで、今回ご紹介するコンセプトカフェは「女装メイドカフェ」です。……え? 何を言っているのかって? じゃあもう一度言いますね。
女装メイドカフェです。
もう一回言いましょうか? もういいですか、そうですか。
いや、わかりますよ。皆さんが混乱するのはよくわかります。
そもそも僕も最初に女装メイドカフェの話を聞いたのは、アシスタント(24歳・女性・独身・週1で秋葉原に通う)からだったのですが、
「山田井さん。取材したいコンセプトカフェがあるんですけど」
「ほう。それはどんなカフェなのかな、アシスタント君」
「女装メイドカフェです」
「……メイドが女装? だってメイドは女性だろ?」
「いえ、だから女装してメイドになっているんです」
「……え、女性だからメイドになれるわけだよね?」
「違います(イライラ)」
こんな感じで、しばらく話が噛み合いませんでした。
で、ようやく理解したところによると、女装メイドカフェとは"男性がメイドさんの格好でもてなしてくれるカフェ"のことらしいのですが、そう言われてもいまいちピンときません。なんだろう、オカマバーみたいなもの? 違う?
……やはり何事も実際に体験しなければわからない!
ということで実際に行ってきました。
今回お邪魔した女装メイドカフェは「雲雀亭」。
決まった店舗を持たず、秋葉原のどこかで不定期にお店を開いているという珍しいコンセプトからは、知る人ぞ知る隠れ家的な雰囲気が漂ってきます。
ちなみに僕がお邪魔した日は、ちょうどラーメンイベントが開催されており、メニューも特別仕様になっていました。
メイドなのに男性……カフェなのにラーメン……。
いやー、つっこみどころが多すぎて、オラなんだかワクワクしてきたぞ!
大行列の理由は!? 雲雀亭の人気の秘密を探る!
――そして、取材当日。
秋葉原はあいにくの大雨で、「これはお客さんもあまり入ってないんじゃないかなー」などと超失礼なことを考えながら、言いだしっぺであるアシスタントを引き連れて今回の開催地である「呑み処@ウッド」に到着してみると、
大行列でした。
……ごめん、前言撤回します。ぜんぜん"知る人ぞ知る"感じじゃなくて、超人気店でした。
なんでこんなに人気なの!? と思いながらお店に入ってみると、
メイドさんがお出迎え!
あれ……? えーと、男……なんですよね?
普通に皆さんお美しいのですが。
驚いて思わず後ろを振り返ると、そこにいたお供のアシスタントが目を輝かせながら「やっぱりね……こんなにかわいい子が女の子なわけないものね……」とブツブツつぶやいていました。なんかキャラおかしくなってるぞ、おまえ。
ところで、皆さんが上の写真をご覧になって気になるのは、やっぱり真ん中の「禁」で隠されたメイドさんだと思いますが、この方はメイド長の紗厘(さりん)さんといって、公式ブログによると精神的ブラクラ担当、または出オチ担当とのこと。
うん……僕の口からはあまり多くは語れませんが、たしかに紗厘さんの二つ名である「デスプリンセス」は伊達じゃないな、とだけ言っておくことにしましょう。あとは実際に見てのお楽しみ!
気を取り直して、さっそく席につきメニューを拝見。
店内は25席ほどで、頭上にあるモニターにはつねに特撮やアニメのオープニングが流れています。さすが秋葉原だぜ。
もちろん席は完全に埋まっており、お客さんの男女比はちょうど半々といったところでしょうか。もっと偏っているかと思っていたので、これは少し意外でした。
こちらが当日のドリンクメニュー。やはり気になるのは、さあツッコんでくれと言わんばかりに大きく表記された「恐怖機動ロシアンゲロマズたこ焼き」でしょうか……。僕、27年間の人生で色々な飲食店に行きましたが、「恐怖」や「ゲロマズ」という単語をメニューで見たのは初めてで、そしてたぶん最後になるんじゃないかと思います。
あと、ゲロマズたこ焼きのインパクトで完全にかき消されていますが、左上にさりげなく貼られた「かりなちゃんのマジック」は、テーブルマジックをメイドさんが披露してくれるサービス。
この「何でもあり」な感じ、さすが女装メイドという斜め上の発想を生み出したお店ならではやね!
そんなわけで、とりあえず今回のメインディッシュともいえるラーメン、地雷のニオイがぷんぷん漂う恐怖機動ロシアンゲロマズたこ焼き、ついでに食後にはコーヒーも。……と欲望のままに注文した結果、「食べ合わせ」という概念を完全に無視したカオスなテーブルになってしまいました。
さて、注文したラーメンがくるまでは、「雰囲気を楽しむお店だし、食べ物は文化祭レベルに毛が生えたぐらいかな」などと思っていたのですが、
大変失礼いたしました……。
野菜たっぷりでボリュームがあり、スープも本格的。こいつは紛れもなく本物のラーメン! 恐るべきは、これがラーメンイベントのための特別メニューだということです。普段はやっていないメニューのはずなのに手を抜くことなくしっかりとした味を提供する、そういった細かいこだわりこそが、雲雀亭の人気の理由なのかもしれません。
と、柄にもなく真面目なことを考えながらラーメンを食べつつ、ふとロシアンゲロマズたこ焼きがあったことに気づいて、それを口に入れると……。
ぐおお! わさびがー! ロシアンってそういうことかよ!
悶絶しながら隣を見ると、平気な顔でたこ焼きを次々と口に放り込むアシスタントの姿が……な、なんでおまえは平気なん……?
「気合よ」
……さようですか……。
メイド長の紗厘さんに特別インタビュー!
本格的な料理と遊び心、雲雀亭ならではの色んな意味で刺激的なコンボを堪能していると、ここでメイドさんが写真の入ったアルバムを持ってきてくれました。
い、いかん、見とれてしまう……。
メイド長である紗厘さんが公式ブログで「ここは洒落のわかる人がくるところなので、女の子めあての人は他をあたってね」というようなことを書かれているのですが、たしかにこれなら女の子めあてのお客さんが殺到するのもわかる気がするなあ。だって単純に綺麗なんだもん。
しかも、お店を実際に体験して感じたことなのですが、メイドさんの接客が本当にすばらしいのです。気が利くのはもちろんのこと、皆さんそれぞれしっかりとした個性を持ち、お客さんとも笑みを絶やすことなく気さくに会話してくれます。メイドカフェの楽しみのひとつは女の子とのお喋りだと思いますが、そのへんのニーズをばっちりわかっているお店でした。
楽しい時間はあっという間にすぎ、そろそろ出なければいけない時間。
今回は取材ということで、特別にメイド長である紗厘さんからお話を伺うことができました。
―本日はありがとうございました。ところで雲雀亭という名前の由来は?
「『ストップ!! ひばりくん!』から取ったとされていますが、実は適当につけたものです。どちらかと言えばサブタイトルの『精神的ブラクラ喫茶』の方が当初からつけようと思っていたものでした」
――『精神的ブラクラ喫茶』ってサブタイトルだったんですね! ……ちなみにお店はいつ頃から、また何がきっかけで始めようと思われたのですか?
「2007年の8月からです。正規のメイドさんが休んだので穴埋めに起用したのが始まりですね」
――そのアイデアがばっちりハマったと。ところで本日は大盛況でしたね。お客さんの流れを見ていたのですが、食事時だとかそういうことはまったく関係なく、つねに行列ができていました。今回はラーメンイベントという特別な日でしたが、いつもの雲雀亭はどのようなメニューや雰囲気なのでしょうか?
「おかげさまでここ最近は大盛況です。いつもはメイドカフェメニューで、ベースのお店が一般の店なのでフードの味はなかなかです、雰囲気とノリは相変わらずです」
――ノリの良さは想像以上で、これなら一人できてもメイドさんにリードしてもらって会話を楽しめそうですね。お店のこだわりなどはありますか?
「ノリと勢いとハッチャケです! 女装自体は二の次で大バカ騒ぎを楽しむ店になっています」
紗厘さん、そしてメイドさん、お忙しいところ貴重なお時間をいただきありがとうございました。
ありがとうメイドさんたち……また会う日まで!
ということで雲雀亭、最初に想像していたよりもずっと楽しく、濃密な時間を過ごせる素敵な場所でした。
たまたま今回はラーメンイベントに取材が重なりましたが、次回以降はプライベートで普通にお邪魔しようかと思っています。皆さんもぜひ、ノリと勢いで雲雀亭を楽しんでみてくださいね。
そうそう、雲雀亭は不定期開催なので、今後のスケジュールについては公式サイトを要チェックですよ!
今日の結論 : "女装"というだけで雲雀亭を敬遠している人は、一度行くと価値観が変わります(マジで)
山田井ユウキ
レビューサイト「カフェオレ・ライター」主宰。サイトでのP.N.は「マルコ」。映画はもちろんマンガ、ゲーム、さらにはBL作品に至るまで幅広くレビュー記事を執筆、その独特な視点とテンポのよい文章で人気を博し、連日30.000以上のPVを誇る。現在、小誌にてコラム「珍DVD、愛を込めてブッタ斬り」を連載中