内閣府の男女共同参画局「仕事と生活の調和(ワークライフバランス)に関する専門調査会」は、「地方公共団体における仕事と生活の調和(ワークライフバランス)取組事例」をまとめた。
ワークライフバランスの推進をめぐっては、2007年12月に政府の「ワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議」が「仕事と生活の調和(ワークライフバランス)憲章」を策定。この中で、地方公共団体の役割として、「仕事と生活の調和の現状や必要性は地域によって異なることから、その推進に際しては、地方公共団体が自らの創意工夫のもとに、地域の実情に応じた展開を図る」ことが定められている。また、あわせて策定された「仕事と生活の調和推進のための行動指針」では、具体的な地方公共団体の取り組みとして、地方の実情に即した住民の理解や合意形成の促進、育児・介護等を行う家族を支える社会的基盤の形成や仕事と生活の調和を実現している企業を社会的に評価することなどが掲げられている。
今回の地方公共団体への調査では、仕事と生活の調和に関する専門調査会が2007年7月に公表した「『ワークライフバランス』推進の基本的方向報告」の取り組みの方向性をもとに、"仕事と生活の調和の実現に向けた社会基盤づくり"と"企業・組織のマネジメント改革"に、取り組み事例を大別。仕事と生活の調和の実現に向けた社会基盤づくりでは、企業・組織の取り組みを社会全体で後押しする事例として、さらに、「表彰」「融資・貸付」「登録・認定・認証」「奨励金・助成金・補助金」「アドバイザー等派遣」「啓発・情報提供」「講座・セミナー・講演会等」「アンケート・事例調査」「男女共同参画推進員設置」「その他」の10のカテゴリと、個人の多様な選択を可能にする支援やサービスを展開する事例として、「講座・セミナー・講演会等」「啓発・情報提供」「その他」の3つのカテゴリに分類し、概要が報告されている。
まとめによると、全国の地方公共団体でワークライフバランスを推進する担当課等を設置している地方公共団体は、全国で9団体。横浜市の「ワークライフバランス推進実行委員会」をはじめ、岩手県、秋田県、秋田県横手市、山梨県、愛知県、兵庫県、奈良県、福岡県が同様にワークライフバランス推進のための専門の事業部門を設置している。このほか、千葉県の「働く男女(ひと)と家庭に優しい企業の表彰」をはじめ、全国26の地方公共団体が仕事と私生活の両立支援に取り組む企業や団体を表彰する制度が設けている。
また、ワークライフバランス企業を認定する制度では、次世代育成に積極的に取り組む企業等を登録し、その取り組みを広くPRすることにより、仕事と家庭生活の両立が可能な雇用環境の整備の促進を図る、東京都の「次世代育成企業支援事業」などが挙げられる。ほかにも、東京都新宿区が実施している「ワークライフバランス推進企業認定」など、32の地方公共団体で認定・登録制度が設置されている。
そのほか、ワークライフバランス推進のための企業への奨励金や助成金・補助金制度を導入しているのは11団体。従業員が育児休業の取得や育児や介護のための時短制度を利用した場合や、事業所内の保育施設の設置する企業に対して、金銭的な支援を行っている。また、東京都文京区、青森県、茨城県、新潟県、広島県の5団体では、融資・貸付制度が実施されており、休業中の生活費を低金利で融資し、育児・介護休暇の取得や時短勤務制度の利用促進を実践している。
さらに、これ以外にも多くの地方公共団体がワークライフバランスの広報、啓発・情報提供の活動を行っている。具体的にはセミナーの実施や、ガイドブック・リーフレットの作成、アドバイザー等の派遣などが挙げられている。
一方、企業・組織のマネジメント改革では、各地方公共団体自体で実施されているさまざまな取り組みが報告されている。東京都府中市をはじめ、全国10の地方公共団体が時間管理のための施策を庁内で実施していることが報告され、週に1度は確実に早く退庁し、心身のリフレッシュを行うとともに、仕事以外の生活の充実を図ることを目的とした"ノー残業デー"の導入のほか、職員の健康管理を目的に、心の健康度を客観的にチェックする「心の健康診断(メンタルヘルス)」(岐阜県美濃加茂市)の実施や、同じグループ内でも特定の人に残業時間が偏る傾向を避けるため、グループ内のそれぞれの仕事について複数人が対応できるように多能工化を推進し、業務量の平準化による残業時間の削減を図る事例(愛知県高浜市)が報告されている。