4月16日~21日に開催された世界最大のインテリアデザイン・エキビジションである「ミラノ・サローネ」こと「ミラノ・デザイン・ウィーク」で、キヤノンはファッションデザイナー廣川玉枝氏などとコラボレーションし、プリント技術のクオリティを表現した。

Canon- 「NEOREAL キヤノンが作り出す新しい感性の世界」- by 森ひかる(会場設計デザイナー) 廣川玉枝(ファッションデザイナー) 石上純也(建築家)

ミラノ・サローネ初出展となるキヤノンの展示会場は、ミラノトリエンナーレ財団美術館。同美術館があるトリエンナーレ会場は、見本市会場外の市街イベントの中ではトルトーナ地区に次いで中心的な場所だ。トルトーナ地区との間にはシャトルサービスもあり、集客が期待できる好立地となっている。

トルトーナ地区とトリエンナーレ会場を結ぶシャトルは環境デザインの象徴、TOYOTAプリウス!

「NEOREAL キヤノンが作り出す新しい感性の世界」がテーマ

=「高感度なクリエイター達にキヤノンのプリント技術を評価してもらいたい」と総合デザインセンター所長の酒井正明氏(左)。懇意のサローネ通、桐山氏(右)にプロデュースを依頼した

プロデュースを担当したのは、LEXUSの初出展も手掛けたデザインキュレーター桐山登士樹氏だ。「NEOREAL キヤノンが作り出す新しい感性の世界」をテーマに、国宝の屏風を撮影・出力・装飾した作品など、プリンタの表現力をアピールする展示を行った。

会場設計は森ひかる氏が担当。メインには、キヤノンが2007年3月から取り組んでいる文化財の保護活動「綴(つづり)プロジェクト」の第一弾として完成した、国宝「松林図屏風(長谷川等伯筆)」など屏風・襖絵3点の複製品が展示された。これは、デジタル一眼レフカメラ「EOS」で撮影し、大型プリンタ「imagePROGRAF」で特製和紙に原寸大出力した上で、金箔を施したものだ。同プリンタは、約200種類もの素材に出力できるという。

文化財保存活動〔綴プロジェクト〕により制作された「老梅図襖」狩野山雪筆(江戸時代、メトロポリタン美術館所蔵)

次のコーナーではプリンタの活用事例として、壁紙や写真に印刷された紫のレース柄が壁一面に張られていた。このレース模様は、ファッションデザイナー廣川玉枝氏がデザインする無縫製ニット素材の洋服「スキンシリーズ」に着想を得たもの。洋服と背景をシンクロさせ、プリント技術をアピールする趣向だ。

レースの繊細な表情までリアルに再現した壁紙。ファッションブランド「SOMARTA(ソマルタ)」を手がける廣川玉枝氏は、今最もパリコレ・ミラノコレクションに近い日本人デザイナー(桐山氏談)

どれが鉄製でどれが紙製?うっかり紙の椅子に座りそうになってしまった……

さらに次の空間に入ると、まぶしいほどに整列した白い椅子が目に飛び込んできた。これらの椅子は、建築家の石上純也氏がデザインし鉛筆で描いたドローイングをプリンタで印刷した紙製「paper chair」と、そっくりな鉄製の椅子。両者が混在して並べられ、全く見分けがつかない!

キヤノンのカメラは、多くのプロに認められたことで、ユーザー層を世界的に広げることに成功した。酒井総合デザインセンター所長は、「プリンタも気鋭のデザイナーたちに活用してもらい、クオリティを評価してもらって認知拡大を図りたい」と戦略を語った。