KDDIの小野寺正社長 |
KDDIは、2007年度通期(2007年4月-2008年3月)の連結決算を発表した。売上高は対前年同期比7.8増の3兆5,963億円、営業利益は同16.2%増の4,005億円、経常利益は同16.2%増の4,079億円、当期純利益は同16.6%増の2,178億円だった。5期連続で増収増益となり、営業利益を初めて4,000億円台に乗せた。売上げの3分の4を占める携帯電話事業(au+ツーカー)が引き続き堅調に推移、固定通信事業の営業損失を吸収した。今期末には、au携帯電話の契約数は同社が目標としていた3,000万を突破した。
携帯電話事業の売上高は同6.9%増の2兆8,626億円、営業利益は同18%増の4,550億円。このうちauの売上高が同9.2%増の2兆8,517億円で、ツーカー携帯電話は2008年3月末でサービスを停止した。契約数は3,033万9,000で携帯電話市場におけるシェアは29.5%。auの契約は3,010万5,000で、そのうちCDMA 1X WINへの加入が1,969万5,000でパケット定額制の契約率は74%だ。auの解約率は0.95%で、前年比で0.07ポイント低下した。そのほか契約数では、CDMA 1Xが999万3,000、ツーカーが23万4,000にまで減少している。通期の純増数は215万で、内訳はauが279万、ツーカーは64万減だった。これらのうちMNPによる純増数は59万7,000だ。
ARPU(Average monthly Revenue Per Unit:1契約者からの月間平均収入)は同350円減の6,260円で、音声は同460円減の4,130円、データは同110円増の2,130円。CDMA 1X WINのユーザーはARPUが高い。たとえば、2007年度第4四半期には、全体のARPUが5,990円(音声3,820円+データ2,170円)であるのに対し、CDMA 1X WINは7,410円(音声4,270円+データ3,140円)。CDMA 1X WINの契約者の比率は、2008年3月末時点でau全体の65%を占めている。2006年3月末には36%だったのがこの2年で大きく伸びており、全体のARPUを下支えしている。
固定通信事業は、売上高が同0.6%増の7,186億円、営業損益は647億円の赤字(前年同期は490億3,600万円の赤字)だった。固定電話「メタルプラス」、FTTHサービスなどの拡販により売上高は微増となった。契約数はADSLが139万6,000(前年同期は151万2,000)、FTTHは71万(同59万2,000)、メタルプラスは327万9,000(同281万3,000)だった。
同社では、2008年度(2008年4月-2009年3月)の業績見通しとして以下のような数値を示した。売上高は同2.9%増の3兆7,000億円、営業利益は同10.6%増の4,430億円で、内訳は携帯電話事業が同9.2%増の4,970億円、固定通信事業は580億円の赤字(前年同期は647億円の赤字)。携帯電話事業では、前期の契約数増が貢献するとともに、新たな販売形式「買い方セレクト」の効果を見込んでいる。固定通信事業では、4年目となるメタルプラスは黒字化が濃厚とみているが、FTTHの拡大にともない、全体では赤字の見通しだ。同期のメタルプラスの契約数は308万、FTTHは114万と見込んでいる。
2008年度の純増数は、2007年度の半分に近い126万と予想しているが、これは「市場全体の伸びは390万程度とみている。前年度は601万であり、かなり減ることになる。個人向けは普及率が80%を超えており、新規は縮小する」(同社の小野寺正社長)からだ。ただし「モジュールタイプの端末や法人向けはまだ伸びる。将来的にはモジュールタイプはかなり成長するのでは。いま自動車は6,000万台出回っているといわれるが、そのすべてにモジュールタイプが載れば、それだけで6,000万台増える。携帯電話は1億台に留まらず、2億台になる可能性もある」(同)として、市場の潜在力に期待している。
販売店を"支援"する販売一時金の通期平均単価は3万7,000円で前期と同様だったが、直近の2007年度第4四半期には、4万1,000円に跳ね上がっている(同第3四半期は3万5,000円)。この理由としては「累計契約数3,000万を目指していたから」(同)であり、「想定外のことだ。(販売一時金は)正常な値に戻したい」(同)考えだ。
2007年度の設備投資は同17.9%増の5,170億円、移動通信が3,917億円、固定通信は1,096億円だった。2008年度は同14.1%増となる5,900億円の予定で、移動通信が同11.3%増の4,360億円、固定通信は同36.8%増の1,500億円だ。移動系は、2GHz帯、再編される800MHz帯への投資、固定系はFTTHへの投資が中心となる。
一方、3.9G(3.9世代の移動体通信方式)について同社は、現在採用しているCDMA2000方式の後継である「UMB(Ultra Mobile Broadband)」ではなく、NTTドコモやソフトバンクモバイルが採用しているW-CDMA方式の流れをくむ「LTE(Long Term Evolution)」を選ぶのではないかと一部で報道されていたが、小野寺社長は「UMBとLTEは、技術的にはほとんど差はない。市場の動向を見ながら決めていきたい。非常識な選定はしない」と語った。
2008年3月期全般について小野寺社長は「auの最大の問題点は、商品に対する管理が少し甘くなっていることだ。(KDDI新統合プラットフォームの)『KCP+』を搭載した端末は開発に時間がかかり出荷が遅れ、結果として、さまざまな方面に悪影響した。端末にはかなり課題を残している。また、『買い方セレクト』を導入したが、顧客への周知が不十分だった。端末への取り組みと周知はきっちりやり直すべきだ」と指摘、さらに「これまでのauの特徴がやや失われている。サービスや端末では先進的だったが、その傾向が薄れているのは問題だ。auらしさを追求し、そこで差別化を図る。NTTドコモは既存顧客の囲い込みを重視するようだが、当社は既存顧客を守り、新規もさらに取りにいく、両にらみだ」と述べ、楽観を戒めるとともに、攻めの姿勢を示す。
今年度も携帯電話市場での競争は厳しくなることが予想される。今回は、新年度の施策(あるいは"秘策"か)は明らかにならなかったが、小野寺社長は「割賦販売については、当然検討はしているが、導入の時期は決まっていない。今年度の業績に対しては、一定の程度影響を見込んでいる」との見解を示している。また、今年度はソフトバンクが2006年秋に開始した「スーパーボーナス」の2年契約の期間が節目を迎える。これについては「何らかの対策は考えている」という。