こちらの記事にある通り、ウィルコムは14日、モバイルコミュニケーションマシン「WILLCOM D4」を発表した。音声通話に代表される"ケータイ"としての機能にプラスして、Windows Vistaが動作可能なハードウェアを採用したことで、従来のスマートフォンから更に利用用途が拡張されているという。同日行われた発表会ではタッチアンドトライコーナーも用意されていたので、発表内容にあわせて簡単な使用感もレポートしたい。

世界初のWindows Vista搭載Centrino Atom通信端末を謳う「WILLCOM D4」

端末の製造はシャープが担当しており、ハードウェア開発のベースとなっているのは、CPUにあたる「Intel Atom processor」と、チップセットにあたる「Intel System Controller Hub」で構成されたインテルのMID向けプラットフォーム「Intel Centrino Atom processor Technology」(開発コードネーム:Menlow)。OSはマイクロソフトのWindows Vista Home Premium(SP1)、オフィスソフトにはOffice Personal 2007 with Office PowerPoint 2007を搭載している。

内蔵するAtom CPUは動作周波数が1.33GHzの「Atom Z520」で、ほか主な仕様として、メインメモリが容量1GBのDDR2-533、HDDが容量40GBの1.8型ATA HDD。本体サイズは約188×84×25.9mmで、重量は標準バッテリ装着時で約470g。ディスプレイは最大1,024×600ドット(WSVGA)の表示に対応した5型液晶(LEDバックライト採用)。入力装置には64キーのQWERTYキーボード、タッチパッド(ホイール機能付き)、タッチパネルを備える。ワンセグチューナーも装備しており、録画予約なども可能だ。なお、バッテリ持続時間などは現時点では非公開で、近日中に追って公開される見込みとされている。

通信機能はIEEE802.11b/g対応の内蔵無線LAN、Bluetooth 2.0+EDRに加えて、もちろんW-SIMに対応しており、PHS通信も利用できる。付属ヘッドセットや別売りのBluetoothハンドセットを用意することで音声通話中の端末操作も可能。さらにウィルコムのネットワークサービスに対応しているため、Windowsが休止・スリープ状態(電源オフ時除く)でも、WILLCOMアカウントに届いたEメールの自動受信などの機能を使うことができる。なお、音声通話に関して、W-SIMユーザーとして登録を行ったユーザーアカウントでWindowsにログインしている場合(休止・スリープ状態除く)のみ、着信や留守番電話サービスを利用できる。発信に関しては搭載の電話ソフトを起動して行う。

D4を手にするウィルコム 代表取締役社長 喜久川政樹氏。「ターゲットには20~30代のビジネスユーザーだけでなく、学生なども視野に幅広い層を狙う」という

今回の端末は業界の枠を超えたデジタルコンバージェンスの賜物とアピール

シャープ 代表取締役副社長 松本雅史氏。D4の特徴を紹介する

マイクロソフト 執行役常務 佐分利ユージン氏。「(D4が)市場ニーズに合致すると確信している」とコメント

インテル 代表取締役共同社長 吉田和正氏。「世界最小のトランジスタ技術に基づくCentrino Atomで、ポケットに入るフルインターネット体験を提供する。市場の拡がりに期待したい」と話す

今回の発表は、日本国内におけるAtom自体の展開にとっても大変重要、ということなのだろう。米Intelの上席副社長 アナンド・チャンドラシーカ氏からもD4への期待を寄せるビデオレターが届いた

本体は利用シーンに応じて使い分けが可能な「3Wayスタイル」と呼ばれる機構を備えており、キーボードを閉じた状態の「Viewスタイル」、キーボードをスライドさせた「Inputスタイル」、ディスプレイ部をチルトしてノートPC風に操作する「Deskスタイル」の各スタイルをとることができる。ポータブルDVDドライブや無線キーボードといった周辺機器も豊富に発売される計画であり、外部ディスプレイ端子や有線LAN、複数のUSB端子などを備える別売りの専用クレードルとも組み合せれば、よりPCライクな使い方も可能となっている。

利用シーンに応じて使い分けが可能な「3Wayスタイル」

拡張性にも優れる。従来のスマートフォンに比べよりPC寄りな使い方が可能だ

発売は6月中旬で、5月下旬より予約受付を開始する予定。価格はウィルコムストアで「W-VALUE SELECT」を適用して新規契約した場合、一括購入で12万8,600円、分割購入で頭金3万9,800円+3,700円×24カ月となり、それぞれでW-VALUE割引により1,600円×24カ月にわたり月額使用料が割引になるため、実質負担額はともに9万200円となる。

ちょっとだけ触ってきました

タッチアンドトライコーナーの実働機。これはまだ開発中の個体だそうなので、発売される製品とは多少仕様が異なる可能性がある。ご了承いただきたい

キーボードを閉じた状態。サイズは縦横で188×84mmほど。ほぼ新書サイズだと説明されていた

裏側。向かって右に入るのがバッテリ。下部中央には吸排気口と考えられるスリットが見える

下から。中央左に見えるのは拡張スロットで、同右はUSB端子。そのやや右にあるスライドスイッチはキーロックだ

上から。左の方に3つ並ぶボタンは左から順に内蔵カメラのシャッター、画面回転ボタン、電源ボタン。イヤホンジャックとAC電源ジャックもここ。銅色のヒートシンクが覗く吸排気口も確認できる

左側面。スロットは左がW-SIMスロットで右がmicroSDスロット

右側面。引っ張り出してあるのはスタイラスで、その上のツメを引っ張るとワンセグのアンテナが伸びる

キーボードをスライドさせて裏から。右上に内蔵カメラ。有効画素数は198万画素だ

この部分にマウスの右クリック、左クリックの機能を持つボタンを装備

こちらはタッチパッドになっており、指を上下にスライドさせることでホイール機能も実現する。ちなみに感圧式だそうで、タッチするとイルミネーションが点灯する

OS上にランチャ機能のようなUIアプリケーションを搭載。ヤッパのUI「AQUATIC」を採用しているそうだ。タッチパネルを指でなぞることでメニューを遷移できるなど、直感的な操作が可能となっている

こちらは通常のWindowsデスクトップを表示させたところ。小さいが高精細な液晶のおかげで作業領域は十分。ただ、OSが高機能な分、動きがやや"もっさり"気味なのが気になるところ。まだパフォーマンスの最適化を詰めている段階なのだそうで、製品版ではもう少し快適になると説明されていた

キーボードは64キーのQWERTY配列。両手で持って使った場合の使用感は流石だが、良くも悪くも"ケータイのキー"なので、写真のような「Deskスタイル」で使う場合の打鍵感はあまりよろしくない印象。ある程度本格的に"打つ"ならオプションのキーボードを用意するべきか? ただ、担当者によれば製品版ではもう少しクリック感を向上させ、タッチもソフトにするとのことなので、今後の改良にも期待したい

実際にアプリを数種類使ってみた上に、この数字を見ると、Vistaの"快適"動作はちょっと厳しそう? 現時点では非公開となっているバッテリ持続時間も気になる。電話機能をまともに使うためにはWindowsを常に立ち上げておく必要があり、それなりに電力を食ってしまうだろうから、MIDとしてならまだしも、バッテリ性能次第では使い道も限定されてしまう。ただ、今回触ったのはあくまで開発機だし、このあたりが製品版でどうなってくるのかは注目だろう