山口マオ氏のギャラリー兼ショップである「海猫堂」は、地魚が泳ぐ巨大ないけすや海産物店が並ぶ道の駅ちくら・潮風王国内にある。

人間のような目鼻を持つ二足歩行の猫が、町や草原、海辺や空、果ては宇宙をバックに佇むシュールなイラストを、読者の方々も一度は目にしたことがあるのではないだろうか。20年ほど前にイラストレーター山口マオ氏の手で誕生し、生みの親の名を取った愛称で親しまれている「マオ猫」だ。南房総猫めぐり、富浦の猫だ! パークに続き、山口氏が住む千倉を訪ね、マオ猫の魅力に迫った。

ギャラリー&ショップ海猫堂
営業時間 : 8:00~17:00 水曜定休
所在地 : 〒295-0025 千葉県南房総市千倉町千田1051潮風王国内

二足歩行の不思議な猫「マオ猫」。地球で玉乗り遊びをしながら本を読んだり、飛行機から下がったブランコで、ゴキゲンな空中散歩に出かけたり。かと思えば、ボートに乗って冒険に出かけたり、人魚(ならぬ猫魚!?)にもなる。現実と空想の境目を軽々と飛び超え、双方を自由に行き来するマオ猫について「この気ままさや気軽さは猫ならではだと思います」と山口氏。「犬なら、飼い主や上司の言うことを聞いて要領よくサボったり、ひとつのポジションにおさまるんじゃないかな」。

猫を自由な存在の象徴として描く山口さんが初めてマオ猫を描いたのは、大学生のとき。飼い猫の数が7匹に増え、世話をするのが義務のようになったことで、「自分が猫を"飼って"いるのか猫に"奉仕"しているのかわからない状態になった」のだという。猫と人間の立場に上も下もないという感覚と、「なぜこうも、人間ばかりが偉そうにのさばっているんだ!」という人間社会への反発心から、マオ猫が誕生した。当時は、猫がネクタイを締めたサラリーマンを散歩させている作品など「冷笑的な作風」(山口氏)だった。

私がお邪魔したのは、誕生から20年の時を経た最近のマオ猫作品が飾られたショップ&ギャラリー「海猫堂」。早速最近のマオ猫作品を見せていただいたところ、そのほどんどが笑顔を見せていたことに気づいた。山口さんに尋ねると、「最近、マオ猫は角がとれて丸くなったと仲間からも言われます。メタボ気味だし、うっかり瞳に星を入れてしまっておめめキラキラになったり」という愉快な答えが返ってきた。マオ猫は、シニカルなキャラを返上したのだろうか?「キャラが変わったといわれ、マオ猫がどんな存在なのか、見つめなおしました。結果出てきた答えは『万能の表現者』。そもそもつかみどころのない存在である"人間"や"世の中"というものを、わざとらしくなく演じられる、変幻自在さが身上の俳優のようなものです」。

「千倉は光が鮮やかで、海や空のブルーがきれいなところ。自然と、絵にもブルーを使いたくなります」と山口さん

近くの海岸でビーチコーミングをして見つけたという流木のオブジェ

スツールのマオ猫には尻尾が!(左)見上げれば、ランプシェードにもマオ猫(右)

ダイナミックな立体作品も

山口さんのイメージでは、宇宙のどこかに二足歩行する猫が住む星があり、マオ猫はそこからやってきた1匹なのだという。時に水彩、またある時は木版で描かれ、オブジェにも姿を変えながら、のびのびと時空を旅するマオ猫は、「この世のどこかには、当たり前だと思っていることが当たり前ではない世界が実在するかもしれない」という無限の可能性に気づかせてくれる。

未知なるものへのトキメキが心に沸き起こる

マオ猫を始めとする山口さんの作品には、海猫堂での展示のほか、精力的に開催している展覧会などで出会うことができる。4月~6月にかけては、千倉周辺で行われる以下のイベントに出品予定。山口さんが「風が吹き抜けていく」と語る地へ、出かけてみてはいかがだろうか。

山口さんその人にも会えるかも……

イベント名 会期 会場
アート・フリーマーケット・イン・千倉vol.10 4月26日・27日 9時~16時 潮風王国中庭広場
第2回安房トイカメラクラブ展 山口マオのトイカメラ写真展 4月1日~20日 8時~17時 潮風王国内「海猫堂」
わたしのecoバッグ展in海猫堂 4月22日~6月1日 8時~17時 潮風王国内「海猫堂」