東芝のdybabook SS RX1/W7E

12.1型液晶を搭載しながら,最軽量時1kg未満を実現したことで話題となったdynabook SS RX1。昨年12月に登場したW7Eモデルは,順当なスペック強化が行われた後継モデルだ。さらに,今年3月には128GB SSDモデルや,KDDIのワイヤレスWAN機能を内蔵したモデルも投入。上級のモバイルユーザーに向けたスペック強化を続けている。

際だった軽量さ,インタフェースも十分

dynabook SS RX1シリーズといえば,12.1型のWXGA液晶を搭載するにも関わらず,HDDと光学ドライブの2スピンドル構成でも1kg強という非常に軽量なボディが特徴だ。今回試用しているW7Eモデルは,120GB HDD+DVDスーパーマルチドライブという,2スピンドルノートとしては標準的な構成といえるものだが,このモデルの重量は大容量バッテリ込みで1099g。持ち上げたときに,バッテリの重量が最も重く感じるという良い意味での違和感を感じる作りである。店頭で触れる機会があったら,ぜひ,この違和感は体感してほしい。

このW7Eモデルは,11月にWeb限定モデルとして発売されたものとなる。CPUにCore 2 Duo U7700,無線LANアダプタにIEEE802.11a/b/g/n対応品を採用したのが機能強化ポイントだ。メモリは内蔵の1GBに,増設用スロットに1GBを装着した計2GB構成となる。本製品が搭載可能な最大容量を,出荷状態から搭載していることになる。

本体サイズのわりにインタフェース類が充実しているのも本製品の特徴だ。インタフェース類は左右側面のみに配置され,ここに光学ドライブも含まれる。USBは上手く散らして配置されているので、例えば外付けマウスとUSBメモリを使っても干渉することはない。インタフェース間のスペースはそれほど広くないのだが,本製品のような性格の製品で,同時に複数のインタフェースに多数のデバイスを接続するようなシチュエーションも少なくないはず。先述のUSBやD-Sub15ピンの周りはスペースを大きめに取るなど,実際の利用シーンが配慮されたインタフェースに感じられる。

本体右側面。光学ドライブ,SDカードスロット,PCカードスロット,無線LANスイッチ,USB2.0,LAN,セキュリティロックスロットを備える

本体左側面。ボリュームダイヤル,ヘッドホン出力,マイク入力,USB2.0,IEEE1394,USB2.0,D-Sub15ピンを備える

本体背面部にはバッテリを装備。大容量バッテリであるバッテリ5800が標準装備される

ちなみに,背面はバッテリと液晶ディスプレイのヒンジでスペースが埋まり,前面は”くさび”状に収束しているためインタフェースを配置していない。前面部に何も備えないというのも,ただでさえインタフェースを配置するスペースが限られるモバイルPCとしては珍しい。この結果,デザインもスマートで洗練された印象を与えることに成功しているように思う。

使い勝手も上々だが気になる点も……

このdynabook SS RX1/W7Eの使い勝手だが,まずキーボードは非常に良好な使い勝手だ。本体の横幅一杯を利用したキー配列で,キーピッチは十分な間隔があり,成人男性の手でもしっくりくる。キーストロークも重みも適度で,軽い本体からは想像できない安定感のあるキータッチも印象的だ。

問題はタッチパッドのボタンである。金属を用いた見た目には美しいボタンなのだが,このキーが非常に押しづらい。イメージとしてはボタンの中央部を垂直に押し込まないとスイッチしない感覚で,気軽にポチッとできるボタンにはなっていない。ボタンを押すのに面倒さを感じる作りと言い切っても良く,ここは改善して欲しい最大のポイントだ。

キーボードはキーの大きさも十分で感触も良い。タッチパッドのボタンにやや難があり,押しづらさを感じる作り

キーボード上部に液晶ディスプレイ操作ボタン。左側が外部出力切り替えボタン,右側がバックライトのオン/オフボタンとなる

半透過型の液晶ディスプレイを採用する点も本製品の特徴的な点だが,屋内でバックライトをオンにして使用する限り,際だってデメリットは感じなかった。ただ,視野角は狭く,画面の正面から外れると白みがかるな色合いになったり,視認性が低下するのがネックだが,正面から見た場合は一般的な透過型液晶と遜色ない。また,日中の屋外ではバックライトを消して反射型液晶として利用することもできる点がアピールされているが,バックライトを付けた状態でも十分に視認できる。日光条件などに応じて使い分けることで,オールラウンドな液晶ディスプレイになりそうだ。

このほか,気になった点としてACアダプタに触れておきたい。ノートPCではPCとの接続コネクタにL字タイプを採用する製品が増えるなか,本製品は旧来型のコネクタ形状をしている。せっかく本体が小型なのに,ACアダプタ利用時には横幅を必要以上に取ってしまう格好となる。ACアダプタ自体は小型で持ち運びしやすいものであるだけに,もう一歩の工夫を望みたい。

付属のACアダプタはコンパクトなもの。コネクタがL字型ならなお良かったと思う

付属ユーティリティで便利だと思うのが,SDメモリブートユーティリティ。ブータブルSDカードを簡単に作成できるユーティリティだ

もう一つ,省電力ユーティリティが付属しないのも惜しい点だ。Windows Vista自体の省電力機能が,Windows XPよりも充実したこともあって,細かい設定は可能になっている。だが、Windows XPプリインストールのdynabookシリーズに搭載されていた複数のプロファイルを設定して切り替えできる省電力ユーティリティの使い勝手が良かっただけに,Windows Vistaでも同種アプリケーションを投入して欲しいと思う。ちなみにバッテリ駆動時間は,本稿で用いている統一条件において2時間40分強。もう少し持って欲しい印象も受けるが,長時間駆動といって差し支えないレベルである。

非常に細かいところでアラを突いてしまったが,大局的な印象として完成度が高い製品であることの裏返しでもある。昨今のモバイルPC製品においても,抜群の機動性と,サイズ対機能に優れた製品であることは間違いない。

このdynabook SS RX1シリーズであるが,3月に発表された新モデルでは,128GBのSSDやワイヤレスWANを内蔵した。とくに前者は,SSDの容量不足で購入を躊躇していた人にとって朗報だ。モバイル用途において耐振動性に優れるSSDが好ましいのは言うまでもない。本製品に興味がある方は,その新製品の情報もチェックしてみてほしい。

ベンチマーク

3DMark06(800×600ドット) CPU Score 1065
3DMark 198
フルパワーモードにてFFBenchをローモードでループさせたバッテリ持続時間(9セルバッテリ使用) 2時間43分27秒

スペック

CPU Core 2 Duo U7700
チップセット Intel 945GMS
メモリ 2GB(最大2GB)
グラフィックスチップ チップセット内蔵
ディスプレイ 12.1型ワイド半透過型TFTカラー液晶(省電力LEDバックライト,1280×800ドット)
HDD 120GB(Serial ATA,5400rpm)
光学ドライブ DVDスーパーマルチドライブ
有線LAN 内蔵(10BASE-T/100BASE-TX/1000BASE-T)
無線LAN 内蔵(IEEEE802.11a/b/g/n)
Bluetooth 内蔵(Bluetooth 2.0+EDR)
モデム なし
Webカメラ なし
その他の主な機能 指紋センサー、TMPセキュリティチップ
メディアカードスロット 内蔵(SD)
拡張カードスロット PCMCIA TypeIIスロット(CardBus対応)
インタフェース 外部ディスプレイ(D-Sub15ピン)、USB2.0×3、ヘッドホン出力、マイク入力、IEEE1394(4ピン)
本体サイズ 283.0(W)×215.8(D)×19.5~25.5(H)mm
本体重量 約1,099g
バッテリ駆動時間(公称) 約11時間
OS Windows Vista Business
価格 27万7,600円から