HTC Nipponは8日、Windows Vistaおよび独自環境「SnapVUE」をあわせて搭載する、通信機能内蔵ウルトラモバイルPC(UMPC)「HTC shift」を発表した。4月中旬以降の発売予定で、価格は16万4,800円。日本国内では「Advantage X7501」「P3600」に続くHTCブランド製品で、契約する通信事業者を選ばない"SIMロックフリー"の機種として提供する。
HTC shift |
2007年3月に発表され、昨年秋から欧州や北米で順次発売されていた製品を日本語化した。7インチワイドのタッチパネル液晶ディスプレイ(800×480ドット)を搭載したタブレット型の機器で、ディスプレイ部分をスライドさせるとその下からQWERTYキーボードが現れる。ディスプレイ部分は引き起こして角度を調節することもできる。
Windows Vistaが動作するPCとしての機能に加え、「SnapVUE(スナップビュー)」と呼ばれる独自の環境が搭載されており、本体のボタンを押すことでアクティブな環境を瞬時に切り替えることができる。SnapVUEはWindows Mobileスマートフォンに近い機能で、予定表、メール、天気予報表示、アドレス帳などが用意されている。SnapVUEのユーザーインタフェースにはWindows Mobileに準じたものを採用しており、予定表やメールといった機能はほぼ共通だが、Windows Mobileそのものではなく、アプリケーションの追加などはサポートされない。ストレージも、Windows VistaはHDD、SnapVUEはフラッシュメモリと独立しており、共通で利用できる領域は持たない。
SnapVUEにおける予定表やメール(上段)、設定(下段)の画面を見るとほとんどWindows Mobileと同じだが、Windows Mobileではないという。SnapVUE環境ではHDDやSDカードにはアクセスできない |
PC側のOSはWindows Vista Businessで、それに加えてMicrosoftが提供するUMPC用のソフトウェア「Origami Experience 2.0」が標準搭載されているので、タッチ操作でWebブラウザやメディアプレイヤーの機能を利用できる。HTC Nipponによると、国内ではOrigami Experience 2.0を搭載したUMPCの発売は初めてだという。CPUにはIntelの低消費電力プロセッサ「A110」(800MHz)を採用し、メモリは1GB、HDDは40GB(1.8インチ)を搭載する。そのほか、ビデオチャット用の30万画素CMOSカメラ、指紋センサー、SDカードスロット(SDIO対応)などが備えられている。
本体右上の「コントロールセンター」ボタンを押すと通信機能のオン/オフや音量・画面輝度などの設定画面が現れる |
タッチパネル操作のみでUMPCを活用するためのソフト「Origami Central」が搭載されている |
SDカードスロット、USB2.0ポート、RGB出力、マイク/ヘッドフォン端子(4極ミニプラグ)などを搭載。電源スイッチはPC部のオン/オフ用で、SnapVUEは常時待ち受け状態が基本。左側面には付属スタイラスを収める穴もある |
通信は802.11b/g無線LAN、Bluetooth 2.0、そしてGSM/W-CDMA(HSDPA対応)方式に対応している。GSMは850/900/1800/1900の4バンド、W-CDMAは国内では800/2100、欧州では2100、米国では850/1900の各バンドに対応しているので、世界各国の広い地域で利用することができる。バッテリー駆動時間はWindows Vistaを連続使用した場合約2時間で、SnapVUEのみで待ち受け状態にした場合は、プッシュメール(SMS・Exchangeメール)有効の場合約53時間、同無効の場合約10日間。本体サイズは207×129×25mm、重量は800g。
HTC Nippon代表取締役社長のジェニファー・チャン氏 |
同社ビジネス・ストラテジー&マーケティング本部の田中義昭氏 |
同日開催された製品発表会で、HTC Nippon代表取締役社長のジェニファー・チャン氏は「これまでHTCはWindows Mobile搭載製品のリーダーだったが、それに加えてモバイルインターネットという新しいカテゴリーに進出する」とコメント。スマートフォン市場で得たノウハウをベースに、パワフルで幅広いコンテンツに対応できるPCのメリットを追加することで、これまでにない新しい市場を開拓できるとしている。
製品の詳細を説明した同社ビジネス・ストラテジー&マーケティング本部 ディレクターの田中義昭氏は「PCの不満点のひとつに、起動時間が長いという点がある」と指摘し、小さいだけのPCであれば既に数多く存在するが、携帯電話のように常にメールを待ち受け可能で、OSの起動を待たず求める情報にすぐアクセスできるのがshiftのメリットと強調した。携帯電話事業者向けの供給ではない自社ブランド製品としては国内第3弾となるが、「キャリア(事業者)ブランドの機種ではカバーできないコアなニーズに対応するため」の実験的な施策であり、先進的なユーザーや、常時待ち受け可能というメリットを生かせる法人に向けて販売していく意向を示している。