昨年5月に、VAIOの国内発売10周年を記念してデザインが一新された「VAIO type T」。10×10センチという極めて小型のマザーボードを利用した高密度設計となり、液晶ヒンジとバッテリを一体化したシリンダーデザインや白色LED採用の薄型液晶を採用するなど、小型化・軽量化に細部までこだわった作りの製品だ。今年2月に発売された最新モデル「VGN-TZ72B」では、こうしたデザイン面の特徴はそのままに、スペック強化を果たしている。
秋冬モデルからCPUとメモリ容量を強化
今年2月に発表されたVAIO type T(VGN-TZ72B)は、昨年秋冬モデルとして発売されたVGN-TZ71Bモデルの後継となる。強化点はCPUとメモリ容量で、CPUはCore 2 Duo U7500(1.06GHz動作)から、Core 2 Duo U7600(1.2GHz)へ変更。メモリ容量は1GBから2GBへアップされた。
特にメモリ容量の増加は嬉しい。本製品はWindows Vista Home Premiumを採用するうえ、チップセットはグラフィック統合型のIntel 945GMSを採用する。メインメモリの一部をグラフィック機能がフレームバッファとして使用してしまうため、メモリ消費量の多いWindows Vistaにおいて、メモリ容量は多いほど良い。製品の最大容量である2GBを標準状態とした構成は好ましい変更だ。
キーボードは前モデルと同じく、各キーが独立したユニークなデザイン。このキーボードスタイルが本体の小型・軽量化にも貢献している。使い勝手も悪くなく、小型製品利用時にありがちな隣のキーを間違えて押すというミスは少ない。FeliCaポートや指紋リーダーの搭載も特徴 |
そのほかのスペックは旧モデルと同じである。ちなみに、同社の直販サイト「ソニースタイル」では本製品の構成をカスタマイズしての購入が可能であるが、こちらでは標準構成の80GB HDDの代わりにSSDを選択することができる。この選択肢は強化されており、今回のモデルから48/64GBのSSDを導入できるのだ。もちろんHDDよりも高価にはなってしまうが、より現実的な容量のSSDを選択できるようになったことは気に留めておきたい。
さて、本製品は小型・軽量を重視した製品ではあるものの、光学ドライブを内蔵している2スピンドルモデルであるほか、インタフェースも十分に詰め込まれている。気になるとすればUSB2.0ポートが2基しかない点だろうか。このサイズとしては精一杯の数だと思われるし、モバイル利用がメインの本製品において、それほど数多くのUSBデバイスを装着するという自体も考えにくいことから、2基という点は妥協できる範囲だ。ただ、願わくば、少しサイズの大きいUSBデバイスを装着した場合でも干渉しないよう、二つのUSBポートを離して設置されていたほうが良かったように思う。
本体右側面。光学ドライブ、ワンセグチューナ用の外部アンテナ端子、D-Sub15ピンを備える。電源スイッチもこちら側に備えている |
本体左側面。セキュリティロックスロット、USB2.0×2、ExpressCard/34スロット、IEEE1394、LAN、モデムの各端子を装備 |
カードリーダーはメモリースティックのほかSD対応のスロットも備える。無線LANに関しても標準仕様でIEEE802.11a/b/gに対応するほか、ソニースタイルのカスタムモデルではIEEE802.11nへ対応した無線LANアダプタも選択できる。Bluetoothが内蔵されているので、USBポートが2基で不足するという事態はあまりない。
本体前面左寄り部分。ヘッドホン出力、マイク入力、メモリースティックスロット、SDカードスロットを装備 |
本体前面右寄り部分。モバイル機には珍しいメディア操作ボタンを装備。ワイヤレス機能のハードウェアスイッチもここに備える |
ちなみに、この光学ドライブであるが、やはり直販のカスタマイズモデルの場合は、取り外した状態で購入することができる。複数台のPCを所有しているならネットワーク経由の光学ドライブ利用という方法もあるわけで、より軽量化を望むのであれば検討したい選択肢であろう。
コンシューマユースにも向いたモバイル機
付属のACアダプタも好印象だ。本体がモバイル機なのにACアダプタが非常に大きい、という製品も珍しくないが、本製品は標準で付属するACアダプタが十分に小型化されている。以前のVAIOは、付属品のACアダプタはサイズが大きめで、オプションでモバイル用の小型ACアダプタを買うことができたわけだが、このVAIO type Tに付属するACアダプタなら十分にモバイル用としての機能を果たしてくれる。
また、モバイルPCというと、どうしてもビジネスに視点が行きがちだ。屋外でまでPCを使わなくてはならない用途、となるとビジネスが中心になるのは当たり前なのだが、本製品は、ややホビーユースも意識した作りであることが独特だ。本体前面のメディアボタンなどは、いかにもコンシューマPC的な作りだし、ワンセグチューナの内蔵もホビーユースを感じさせる機能だ。
付属のACアダプタ。標準品ながら非常に小型で、モバイル機にふさわしい付属品だ |
ワンセグチューナの内蔵も本製品の大きな特徴。視聴ソフトはWindowsサイドバーのような使い方が可能で、1366×768ドットのワイド液晶に合ったデザインといえる |
パフォーマンスに関しては、ノートPCとしてもそれほど高いものではないが、バッテリ駆動時間は、厳しい条件にも関わらず3時間を超えた。Windows Vistaを使っていて不満を感じるパフォーマンスレベルではなく、本製品の性格を考えれば、この性能とバッテリのバランスは妥当だ。
本モデルは小型・軽量という面でも現在もっとも優れた製品に挙げられる。ビジネスユーザーが多いモバイル機にコンシューマユースの視点を盛り込んでいる本製品は、広いユーザーに受け入れられるはずだ。また、直販のカスタムモデルの場合、天板の種類は6カラー/4種類から選択できる。ビジネスパーソンにとっても、少しカジュアルな気分で選べるモバイルPCではないだろうか。
ベンチマーク
3DMark06(800×600ドット) | CPU Score | 940 |
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3DMark | 173 | |
フルパワーモードにてFFBenchをローモードでループさせたバッテリ持続時間(9セルバッテリ使用) | 3時間20分03秒 |
スペック
CPU | Core 2 Duo U7600 |
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チップセット | Intel 945GMS |
メモリ | 2GB(最大2GB) |
グラフィックスチップ | Intel GMA950(チップセット内蔵) |
ディスプレイ | 11.1型ワイドTFTカラー液晶(1366×768ドット) |
HDD | 80GB(Ultra ATA、4200rpm) |
光学ドライブ | DVDスーパーマルチドライブ(DL対応) |
有線LAN | 内蔵(10BASE-T/100BASE-TX/1000BASE-T) |
無線LAN | オプションで選択可能 |
Bluetooth | 内蔵(Bluetooth 2.0+EDR) |
モデム | 内蔵(56Kbps) |
Webカメラ | 内蔵(31万画素) |
その他の主な機能 | 指紋センサー、セキュリティチップ、FeliCaポート、ワンセグチューナー |
メディアカードスロット | 内蔵(MS対応、SD対応) |
拡張カードスロット | ExpressCard/34スロット |
インタフェース | 外部ディスプレイ(D-Sub15ピン)、USB2.0×2、ヘッドホン出力、マイク入力、IEEE1394(4ピン) |
本体サイズ | 277(W)×198.4(D)×22.5~29.8(H)mm |
本体重量 | 約1.22kg(バッテリーパック装着時) |
バッテリ駆動時間(公称) | 約11時間(付属バッテリーパック時) |
OS | Windows Vista Home Premium |
価格 | 24万9,800円(ソニースタイル価格) |