「Intel Developer Forum(IDF)」が2日、中国・上海で開幕した。初日の午前中には恒例の基調講演が行われ、同社のエグゼクティブから技術やビジョンなどに関する説明があった。本稿ではまず、最初に登壇したPatrick Gelsinger・上席副社長兼デジタル・エンタープライズ事業本部長のスピーチの内容を紹介していきたい。
講演のタイトルは「From Peta flops to Milli watts」。HPCからスマートフォンのようなデバイスまで、全てインテルアーキテクチャ(IA)でカバーできるというのが同社が主張する強みであるが、開催国の中国にならい、このスケーラビリティを孫悟空の「如意棒」に喩えたGelsinger氏。ゲストが登壇するたびに「如意棒」をプレゼントして笑いを誘っていた。
さて、今回Gelsinger氏が説明したのは大きくなった如意棒、つまりHPCやサーバー・ワークステーション分野の話である。真ん中や小さい側の説明は、Gelsinger氏の後でPerlmutter氏とChandrasekher氏がそれぞれ基調講演を行っているので、それは別記事を参照。
最新のTOP500リストによると、現在のスーパーコンピュータの最高性能は478TFlopsとなっており、1PFlopsを超えるのは時間の問題。P(ペタ)の次には、さらにE(エクサ)、Z(ゼタ)と単位が続くが、ZFlopsクラスになるとハリケーンの予測が実用的になるという事例を紹介し、性能向上についての欲求は今後もつきないとの見通しを示した。
視点を現在に戻すと、まずIntelは次世代Itaniumとして「Tukwila」(コードネーム)を開発中。Tukwilaは初の20億トランジスタCPUで、Itaniumとしては初めてクワッドコアを搭載する。マルチスレッディング、QuickPath Interconnect(QPI)、メモリコントローラ内蔵といった特徴はこれまで説明があった通りだが、今回は動作デモも公開された。ただベンチマーク結果などはまだなく、「従来品の2倍以上の性能向上が見込める」とするこれまでの説明を繰り返すにとどめた。
Xeonについては、IAプロセッサとしては初の6コア製品となる「Dunnington」(同)が紹介された。トランジスタ数は19億とこちらも巨大で、16MBのL3キャッシュを備える。「FlexMigration」技術が搭載されており、デモではWoodcrest(65nm/2コア)、Harpertown(45nm/4コア)、Tigerton(65nm/4コア)、Dunnington(45nm/6コア)という世代・コア数が異なるXeonマシン間で、OS/アプリが動的に割り当てられる様子を紹介した。Dunningtonは2008年後半の投入が予定されている。
次に話題はエネルギー効率に移る。同社は昨年6月、Googleらとともに「Climate Savers Computing Initiative」を立ち上げているが、これは「2010年までにプラットフォームレベルの消費電力を半減させる」ことを目標としており、1,100万台の自動車に相当するだけの二酸化炭素排出量を削減できるという。また新しいベンチマークとして「SPECpower」があるが、トップ10の全てがXeonベースの製品であることを紹介した。
1年ごとに「プロセスの微細化」と「新アーキテクチャの投入」を繰り返す同社の"Tick-Tock"戦略についてはこれまで何度もお伝えした通りだが、今年はアーキテクチャが大幅に変わる"Tock"の番になっており、今年第4四半期に「Nehalem」が登場する予定だ。その後は、2009年~2010年に32nm世代の「Westmere」と「Sandy Bridge」が続くことになる。
さてNehalemであるが、そのアーキテクチャについては、昨年秋のIDFから新しくなった情報は基調講演では特に出なかった(ただ技術セッションにはNehalemのアーキテクチャに関するものもあり、詳細についてはそちらで語られるものと思われる)。また前回のIDFでは16スレッドのデモが行われたが、今回は32スレッドが動いている様子が紹介された。
続くWestmereは"Tick"であり、これまでの例ではアーキテクチャの改良は小幅にとどまるものと思われるが、2010年に登場するSandy Bridgeではまた新しいアーキテクチャが採用される。明言されたのは「Advanced Vector Extension(AVX)」の実装で、SSEのベクトル拡張(128→256ビット)、3オペランド命令の追加などが行われるという。3オペランド命令は、例えば「A+B+Cのようなベクトル演算が可能になる」(同氏)もので、コードサイズの縮小や並列性の向上が期待されるそうだ。