携帯電話や無線通信の業界団体CTIA (Cellular Telecommunications & Internet Association)主催の展示会「CTIA Wireless 2008」が、米ネバダ州ラスベガスで4月1-3日の3日間にわたって開催されている。全米で最大規模の携帯電話業界の展示会であり、出展社は北米の通信キャリアやメーカーが中心となる。初日午前に開催された基調講演では、先日700MHz帯の周波数オークションを開催した米FCCの会長Kevin Martin氏などが登場し、モバイル市場の今後の展望についてビジョンを語った。
米携帯契約数は2億5500万、1人1台では飽和状態に
基調講演の冒頭に登場したのはCTIA会長であり、米Verizon Wireless社長兼CEOのLowell McAdam氏。現在、携帯電話業界は3Gから4G、音声からデータ、テキストからビデオなどのよりリッチなコンテンツ配信へと変革が進みつつある節目の時期であると指摘。今後こうした無線通信可能なデバイスの種類が携帯端末やノートPCなどの枠を超え、何年間かの間に冷蔵庫のような家電にも活躍の幅を広げていくことになるだろうと予測した。
懸案事項として同氏は、政府が規定する細かいルールが競争を阻害する可能性があると述べた。「企業が努力を続けて社会の発展に貢献する一方で、政府などの調整機関がさまざまなルールを課して競争を束縛するケースが見られる。全米の50州それぞれが異なるルールを設定して事業者に負担を強いることで、業界の発展や競争を阻害し、最終的に利用者に負担がのしかかることになる。例えばシカゴでは、通信事業者のコスト負担のうちの2割がローカルルールで定められた税金となっている。競争が少なくなることは、すなわち利用者の選択肢が減ることにもつながる」(McAdam氏)
携帯電話業界が着実な成長を遂げているのは確かな事実だ。McAdam氏の次に登場したCTIA社長兼CEOのSteve Largent氏が発表した最新のデータによれば、米国での携帯電話の契約数は年間2000万ペースでの成長を維持し、合計で2億5500万の大台に達したという。米国の人口が現在約3億人弱であることを考えれば、ほぼ1人1台の水準にまで到達したことになる。これが意味するのは、米国の携帯電話市場が成長期から飽和へと近づき、もはや単純な契約者獲得競争では今後の成長が見込めないということだ。日本のような2台目の需要の創出、あるいは利益と顧客満足度確保のためにサービスの質を転換する必要がある。
1つの鍵はデータ通信だ。例えば2007年のデータ通信サービス売上は230億ドル規模で、これは前年の2006年から53%アップとなる。サービス売上全体が10%成長程度であることを考えれば、飛躍的に伸びていることがわかる。2007年の売上全体にデータ通信が占める割合は17%で、データ通信が新たな収益源として存在感を増しつつある。またLargent氏によれば、1ヶ月にやりとりされるテキストメッセージの数は480億以上だという。「若者中心だったSMSのテキストメッセージ文化は、それ以外の一般層、例えば祖父母と孫とのやりとりにまで広がっている」と同氏は述べ、一般的な連絡手段として利用されるようになってきていることを強調した。前述のMcAdam氏の見解も含めれば、まさにトレンドの転換点に入りつつあることがわかる。