有望視されるバイオマス

こうした石油燃料に代わるエネルギーとして期待されるのが太陽光発電や風力といった新エネルギーだが、「今の普及速度では代替にすることは無理。すべての家に太陽光発電の設置を義務化するくらいの取り組みを進めなくてはならない」(有馬氏)という。しかし、そうした取り組みも先進国内だけの話であり、発展を続ける新興国各国にエネルギー消費量を抑えるように言える立場にはないとした。

また、日本における新エネルギーの導入状況は、2000年度実績で全エネルギーの1%程度。政府は2010年度にこれを3%程度に引き上げることを目標としている。太陽光や風力のほかの新エネルギーとしては、科学技術を用いることで優等生となるのは「廃棄物+バイオマス発電」であるとした。

日本における新エネルギーの導入目標

ただし、バイオマスとして期待される植物由来のエタノールについては、否定的な見方を示した。「食べられるものをエネルギーにするのは"もったいない"。南アフリカでは石炭を液化することに成功している。こうした食べられてないものをエネルギーにする方向で行けば、食べ物をエネルギーにしなくても良くなる」(同)とする。

しかし、エネルギーの使用量が増えれば地球温暖化が進むこととなる。それを防ぐためには、まず先進国は3R(Reduce、Reuse、Recycle)の徹底による節約を行っていかなくてはならない。それによりエネルギーの使用量を現在の半分にし、CO2の排出量を半減する必要があるとした。しかし、それを新興国に押し付けるのではなく、先進国自らが努力をしていかなくてはならないという。

世界のCO2排出量の推移と予測

科学技術の発達が持続可能な開発を実現する

地球温暖化を避けるためにはCO2を積極的に除去、閉じ込める必要がある。そのためには科学技術を発達させる必要があるとした。そして省エネルギー化を進めるほか、新エネルギーの普及の進展が重要となるとした。「ただし新エネルギーの本格的な普及には少なくとも30年程度の時間が必要」(同)とし、そこで、その間重要となってくるのが「原子力を見直す」(同)こととした。問題は使用済み核燃料をどうするか、ということであるが、そこも科学技術の発展により解決していかなくてはならないとした。

まずは3R政策を世に広めることが重要課題であるが、これは抑制策であり、先進諸国に対する抑制にしかならない。Sustainable Development(持続可能な開発)という言葉があるが、Developmentをどこで行うかというと、科学技術を積極的に活用することによる「省エネルギー技術の開発」「新エネルギーの開発」「CO2の閉じ込め技術」「安全な原子力の活用法」「核融合の実現」「安全な食料の増産」「水不足危機の解決」などにあるとした。

そして、ペシミズム(悲観主義)になるのではなく、将来、安心してCO2を排出して、エネルギーを使用できる社会にするために、CO2を出すと同時に吸う技術や新エネルギーの更なる開発が必要であるとし、こうしたことを50年先に実現するために頑張っていかなくてはならないとした。