昨年、「ザ・グレンリベット」というウイスキーを食中酒として楽しむモルト・ディナーに参加した。ウエルカムドリンクにシャンパングラスが出される。ウイスキーをシードルで割ったもので、グラスの中にはミント入りの氷を浮かべていた。それは熟したフルーツやはちみつの甘みを感じつつ、樽香がさっぱりとした後口をもたらす素晴らしいドリンクだった。同席した人は「梅酒みたい」との感想を漏らしていた。

食前酒として用意されたウイスキーカクテル

いま、ウイスキーの世界が面白い。スイーツとのマッチングや食中酒としての提案、ビールのウイスキー樽熟成など、ウイスキーの新しい魅力を探る試みが活発になってきている。ここでは、今年で8回目を迎える国内最大規模のウイスキーの祭典である「ウイスキーマガジン・ライヴ! 」を紹介したい。今回は参加者4,100人に達しており、年々訪れる人は増えているという。およそ1,000種類のウイスキーが揃い、マスタークラス(セミナー)や試飲会が行われた。1ショット30~45ml / 2,000円という有料試飲があり、中には本邦初公開というウイスキーもあった。

会場入り口のパネル

スコットランドの民族衣装に身を包んだデイヴ・ブルームさんによる主催者挨拶の様子。ブルームさんは「ウイスキーマガジン日本版」編集長で、同イベントでセミナー講師も務めた

試飲ができる会場の様子。20年以上熟成させた稀少なウイスキーもあった

女性が多数参加した「ウイスキーとチョコレート」セミナー

今回、世界的な評価の高まるジャパニーズウイスキー、ウイスキー評論家であるマイケル・ジャクソン氏の追悼トークショーなど、愛好家にとっての注目ポイントはいくつかあった。しかし、ここでは"ウイスキー入門編"に徹して「ウイスキーとチョコレート」セミナーと「クラフトビールとウイスキー樽熟成」セミナーを中心にお伝えする。「ウイスキーとチョコレート」のセミナーはチケットが即日完売。午前中スタートにもかかわらず参加者は100名を超える盛況ぶりだった。参加者の3割近くが女性であり、テーマに対する人気の高さを示していた。

講師は「ウイスキーマガジン日本版」編集長のデイヴ・ブルームさんとスイーツプランナーでポトラック代表の平田早苗さん。受講者にウイスキーとチョコレートが6種類ずつ用意され、マッチングの楽しみ方がレクチャーされた。

ウイスキーとチョコレートの相性を1つずつ確かめる

両者を合わせて味わうときの注意点について、平田さんは「口の中で混ぜようとしないこと」とコメント。一緒に口に入れるのではなく、いずれかの余韻を感じているタイミングでもう一方を口にする、ということだ。ウイスキーを味わったら、その香りの余韻を感じている時にでチョコレートをひとかじり……。チョコレートの風味の余韻を感じているうちにウイスキーを一口、といった手順になる。

セミナーで提案されたウイスキーとチョコレートのマッチング例
ウイスキー 特徴 チョコレート 特徴
1 グレンフィディック12年 スコットランド東岸のスペイサイド産。フレッシュなフルーツの香り、軽快な味わいでフィニッシュはドライ パスカルカフェ シトロン 柑橘、シトロンの香りがあり、しっかりとした酸が感じられる
2 山崎12年 大阪の山崎蒸留所産シングルモルト。ピーチの香りがあり、まろやかで深みがある ルショコラドゥアッシュ ヴァーグ バランスのいいミルクのチョコレート。カカオ分は高くなく、まろやかな口当たり
3 ボウモア12年 スコットランド西のアイラ島産。磯の香り、正露丸のような薬香が特徴。スモーキーでペッパーの風味がある ルショコラドゥアッシュ カプチーノ 2層になっていて、上の層がカプチーノ、下の層がシナモンのチョコレート
4 ラフロイグ10年 アイラ島産。海藻の香りがあり、凝縮感のあるアロマ。アメリカンオーク樽熟成特有のバニラやココナッツの余韻がある グランプラス ポワール カカオマスの苦みが無く、甘みのあるホワイトチョコレート
5 ボウモア16年ポート樽熟成 16年間ポート樽のみで熟成させたカスクストレングス(樽出原酒)。ローズヒップやレッドベリーの香りがある ベルアメール フランボワーズ フランボワーズ、つまり木いちごを使っており、甘酸っぱい
6 THE CASK of HAKUSHU スパニッシュオーク ボタコルタ 1993(バー限定商品) 山梨の白州蒸留所産。ボタコルタと呼ばれるスパニッシュオークの樽で14年間熟成させている。この樽で熟成させると、タンニンによってドライで力強い味わいになる 明治製菓100% チョコレートカフェNO.15(期間限定品) カカオ豆のアロマのみが感じられ、苦みが強い

今回用意されたウイスキーの中で上の表の3,4,5はスモーキーで、決して飲みやすいタイプではない。しかし、受講者による人気投票では3と4がほぼ同率で1位、3位の倍近い票をしていた。講師の平田さんは3の組み合わせについて「以前はボウモアの薬っぽい匂いが苦手だったが、コーヒー味のショコラを合わせてからは好きになりました」といい、4については「バニラアイスのパフェを食べながらラフロイグを合わせた時に、この組み合わせに気付いた」とのこと。個性的でクセのあるウイスキーと厳選されたチョコレートのペアリングは、素晴らしい相性を生み出すようだ。