高島屋では、ワーク・ライフ・バランスに対する取り組みは、

  1. 仕事と生活の両立支援
  2. 男性が育児参加しやすい環境への取り組み
  3. 多様な働き方を目指した取り組み
  4. 健康管理体制強化への取り組み
  5. やりがいを持ち、能力を発揮できる環境への取り組み

の5つのポイントを実現するものとして位置づけられている。これを受け、高島屋では、2005年度から2006年度までの2年間の行動計画を策定。「育児中の従業員を対象とした取り組み」と「育児をしていない従業員を含めた取り組み」「社外に目を向けた取り組み」の3つの視点から、女性社員の育児休業取得率80%以上など、7つの具体的な施策や実施の目標数値が定められた。実際、高島屋では、2007年に導入した男性の育児休職制度を現在までに11名が利用、3名の男性社員が育児のための時短勤務を行っているという。明比氏は「ワークライフバランスはいまや男女でしぼる時代ではなくなってきている」と述べ、その前年の2006年度には、ワークライフバランスについて全従業員への周知徹底を図るために、ガイドブックの作成や説明会を積極的に行った成果が強調された。

一方、高島屋では現在も「第2期行動計画」として、2007年度から2008年度までの施策や目標を策定している。期間中の育児休暇の取得者の目標値を10名以上の男性社員、女性社員の取得率を90%以上に設定し、目標水準がさらに引き上げられている。また、正社員と有期雇用社員の間の育児/介護関連制度の均等・均衡化の実施や、育児勤務者の能力発揮に向けた取り組みの実施のほか、従業員の医療/健康管理体制の構築も新たに計画に盛り込まれた。明比氏は「健康管理がいちばん大切。特にメンタル問題は今後企業経営で重要になってくる」と述べ、メンタルに対する取り組みを強化していく意向を明らかにした。

WLBに至るまでの取り組みの変遷

明比氏は自社でのこれまでの実績を踏まえ、ワークライフバランスの重要性について「労働者の価値観が変わり、会社人間では通用しない社会になった。会社を中心とする従来型のマネージメントでは企業はもはや成立し得ない。価値観が変わったということを前提にしたマネージメントが必要。家庭や趣味などの仕事以外の要素によって構成された個人を"社会人間"と呼ぶことができ、これこそがワークライフバランスだ」と説明した。また、ワークライフバランスへの企業の取り組みについて「従業員の人間関係が経営のベースとなる高島屋の場合、スタッフに気持ちよく売り場で働いてもらうことが最高のマネジメントスキルになっている。"なぜ経営にとって不可欠か?"という、ぶれない視点を持つことが重要」と、ポイントを語った。

明比氏の考えるWLBのイメージ図