実証モデルサービスで利用されている技術

次に、東京工業大学の奥村教授が「CGMのための日本語解析基盤技術」について解説を行った。同サービスにおける日記やレビューの解析は、この日本語解析基盤技術によって行われている。文を単語に分割し、単語間の係り受け構造を分析するもので、これまで口語体の自然文に対応したブログ用の解析器はフリーツールとしては存在していなかったという。

東京工業大学 奥村学教授

教授は奈良先端大で開発されたフリーのツールをもとに訓練を行いブログ用の解析器を構築、さらに効率的に訓練を行うためのチューニングツールを開発した。CGMは文体の変化が早いため、構築したツールの解析性能の維持には定期的なメンテナンスが必要となる。このチューニングツールにより、性能維持のためのメンテナンスを行いやすい環境を提供する。また、他のジャンルに対応した解析器の構築にも応用が可能だという。この解析技術は、情報大航海プロジェクトの成果として無償で公開される予定となっている。

文章の形態素解析(単語に分割すること)、係り受け解析から評判分析を行う例

解析器のトレーニングを示したフロー。チューニングツールにより人の作業を最小限にすることが可能

KDDI研究所 開発センター執行役員 大橋正良氏

続いて、今後同サービスとの連携が予定されている技術として、KDDI研究所の大橋氏より「ケータイdeライフログ」が紹介された。これは、携帯電話に搭載されたGPS、カメラ、バーコードリーダなどの機能を利用して日常生活の様々な出来事を記録、サーバ上でメタ情報を付加し意味を持たせた形で管理し、ユーザーの行動分析、レコメンデーション、コミュニティ形成支援などに活用するというもの。

日々の生活で生じる様々なプロファイル(=ライフログ)を扱うシステムを試作

蓄積された情報を分析し、レコメンドサービスやコミュニティ形成支援に活用できる

現在ケータイdeライフログは、au端末を対象に一般トライアルを実施し、活用方法を実証している。プロファイルパスポートではこのデータベースの部分を適用し、携帯電話以外のデバイスとも連携する予定だという。

今後のサービス展開について

最後に再び羽野氏より、プロファイルパスポートサービスの今後の展開について説明が行われた。

今回の実験等を経てプロファイルパスポート情報配信サーバを構築、個々のユーザーに合った情報配信を試験的に実施する。その後協力企業を募って今年12月に試験運用を開始、2009年4月にオープンβ運用および営業を開始、2010年4月の事業運営本格開始を目指す。事業規模としては2012年に25億円を計画している。

ブラウザや動画再生の履歴なども解析に含め、情報配信の精度向上を目指す

プロファイルパスポートサービスの事業計画

将来的にはプロファイルパスポートを共通化し、公開することで、個々のユーザーに適したサービスを提供したい企業や、ユーザーの情報を得たい企業にとって、同サービスが必要不可欠な行動ターゲティング情報基盤となることを目指しているという。