女性ピン芸人の友近が、売れっ子作家・宮藤官九郎作の『春子ブックセンター』で舞台初主演し、6月に東京と大阪で公演を行う。その発表会見が9日、大阪市内で行われ、友近、共演のバッファロー吾郎・木村明浩、福田転球が舞台にかける抱負や見どころなどを語った。

伝説の漫才トリオを演じる福田転球、友近、バッファロー吾郎・木村(写真左から)

『春子ブックセンター』は、2002年に「大人計画」の本公演として、宮藤が初めて脚本・演出を手がけた作品。ひなびた温泉街にあるストリップ劇場を舞台に、かつて一世を風靡した漫才トリオ・春子ブックセンターの再結成を巡って、悲喜こもごものドタバタコメディーが繰り広げられる。春子ブックセンターの元リーダーで今はストリップ劇場の世話役に身をやつしている男・春子を松尾スズキが、彼を連れ戻しに来た元相方の現役お笑いタレント・ブックを阿部サダヲが、同じく元相方でブックのマネジャー・センターを河原雅彦が演じて好評を博した。

今作では、春子役を友近が、ブック役を木村が、センター役を福田が演じ、演出・脚色を『SMAP×SMAP』『めちゃ2イケてるッ!』などで知られる人気放送作家・鈴木おさむが担当。怪優・松尾スズキが圧倒的な個性を見せつけた春子、しかも"男性"の役を女性の友近がどのように演じるのか? バラエティーのヒットメーカー・鈴木が、お笑い芸人をキャストに迎え、クドカン作品をどう料理するのか? など興味の尽きない話題作だ。

"西尾一男"とは別のオッサンを作りたい

「新しい挑戦。楽しみながらがんばります!」と友近

本格的な舞台への出演は、同作が初めてという友近は「舞台は見るぶんには好きなんですけど、私自身はテキパキした動きとか、舞台映えするような演技ってやったことがないので、それが心配だったんですよねぇ……。基本、ネガティブに考えるタイプなんで、最初に台本を読んだときの感想は『私にできるんかな?』で。怖い怖いと思って、読み終わったらすぐに台本を閉じてしまいました(笑)」と不安も大きい様子。だが、ティーンの女の子からオッサンまでさまざまな"怪キャラ"をコントで演じてきた友近だけに、今回の"男性役"には意欲をかきたてられるようで「普段やってるオッサンのネタで"西尾一男"というキャラがありまして。"一男"ですので、お察しの通り長男のオッサンなんですけどね(笑)。その一男にならないような、また別のオッサンを作っていきたいです」と意気込みをみせた。

子どもがヒョードルに立ち向かうようなもの

「2人の胸を借りて、ミスってもええ! と(笑)」と木村

また、友近が絶対の信頼を寄せる先輩芸人・木村も舞台初挑戦。「演技の経験がない僕が、第一線で活躍されている阿部サダヲさんが演じていた役をやる。格闘技で言うたら、子どもがヒョードル(現・PRIDEヘビー級王者)に立ち向かうみたいなもんです。絶対無理! これは断ろう! と最初は思いました(笑)。でも、転球さんと友近がそばにいてくれるということで、じゃあミスってもええか! っていう多少楽な気持ちになりました」とお得意の"格闘技ネタ"を交え、出演を決めた経緯を話した木村は「ただ、漫才トリオの中で唯一、芸能界の第一線に残る役というのが難しい。僕は売れてないので、売れてる人の気持ちが一切わからないので……(笑)。でも、売れてる芸人の友だちは日本一多いと思うので、みんなにいろいろと心境を聞いて勉強していきたい」とユニークな役作りプランを明かして笑わせた。

友近さんと木村さんの芝居、まったく想像がつかない

福田は「芸人さんから何が飛び出すか、恐ろしい……」と

そんな2人が口を揃えて「頼りにしている」と語る福田は、舞台経験も豊富な俳優。「トリオの中で、僕がツッコミ役になるんですが、芸人さんである友近さんと木村さんが、いきなりどういうことをやってこられるのか、まったく想像がつかない。恐ろしいです(笑)。でもその反面、一緒におもしろい舞台を作っていくのが楽しみでもある。突然のアドリブにも対応できるように、頭を柔らかくしてお芝居に挑みたいです」と2人の暴れっぷりに期待を寄せた。

そして、この3人が劇中で披露する"トリオ漫才"も今作の大きな見どころのひとつ。これに話が及ぶと、コント師として知られる友近、木村が「もともとは漫才師を目指していた」という意外な事実を告白。友近は「26歳でNSCに入ったんですけど、周りが高校卒業してすぐの18歳とか19歳の子ばっかりで、おもしろいと思うものがちょっとズレてた。それやったらコンビを組まずにひとりでやる方が楽やとピンになったんですけど、未だにツッコんで欲しいなと思うときもよくあるし、やっぱり漫才をしたいという気持ちは大きいんです。なので、今回この公演で漫才やらせていただけるのがすごく楽しみ」と。木村も「高校時代、ダウンタウンさんを見て『浜ちゃん(浜田雅功)みたいになりたい!』と思ってこの世界に入りました。今も浜田さんみたいなツッコミになりたいという夢は捨ててないんで(笑)、その夢を呼び起こしながらがんばってみたいと思っております」と熱い思いを明かした。

「漫才は難しいですよね」と不安を漏らす福田に、「こっちも漫才師はあまりやったことが…」と不安で返す? 友近と木村

「今回が好評だったら、次も友近主演で『友近の"屋根の上のバイオリン弾き"』とか『友近の"ラ・マンチャの男"』とか、より本格派の舞台にも挑戦したい」と大胆な野望を語る3人。ほかにも、ルー大柴、竹若元博(バッファロー吾郎)、なだぎ武(ザ・プラン9)らお笑い陣が出演する今作は、「大人計画」版の強烈な印象すらもぶっ壊すような、爆笑シーン連発のパワフルなコメディーになりそうだ。

(C)飯田かずな

イオン化粧品 シアターBRAVA!プロデュース『春子ブックセンター』

日程 公演会場
6月12日(木)~15日(日) 東京芸術劇場 中ホール
6月18日(水)~22日(日) イオン化粧品 シアターBRAVA!

※各公演の詳細は「シアターBRAVA!」公式サイトを参照。