総務省は6日、販売店への販売奨励金の見直しを携帯キャリアに求めた昨年9月の「モバイルビジネス活性化プラン」の進捗状況をチェックする評価会議の第1回会合を開いた。会合では、増田寛也総務大臣が「現状はプラン通り進んでいる」と述べる一方、構成員からは「料金プランがあまりにも複雑化している」などの意見が相次いだ。

モバイルビジネス活性化プランは、総務省の「モバイルビジネス研究会」が昨年9月にまとめたもので、「端末0円」を実現する代わりに月額料金の高止まりの原因とされていた、携帯キャリアによる販売奨励金の見直しや、他社のネットワークを利用して携帯サービスを提供するMVNO(仮想移動体サービス事業者)などによる携帯事業への新規参入促進などを求めている。

あいさつした増田寛也総務大臣は評価会議の意義を強調した。

評価会議は、同プランの進捗状況を四半期ごとにチェックするために設けられたもので、正式名称は「モバイルビジネス活性化プラン評価会議」。6日の初会合の冒頭であいさつした増田大臣は、「販売奨励金の見直しによる新料金プランの登場や、ディズニーがMVNOとして携帯事業に新規参入するなど、プランに沿った形で順調に進んでいる。競争環境整備の一層の促進のため、同プランの今後の進捗状況について時々で評価する必要がある」と同会議の意義を強調した。

会合では、東京大学名誉教授の齊藤忠夫氏を座長に選出した後、同氏が進行役となり議事を開始した。まず、総務省 総合通信基盤局 事業政策課長の谷脇康彦氏が同省が把握している同プランの進捗状況について報告。販売奨励金の見直しについて、「利用者間の不公平感や、端末価格と通信料金の一体化による不透明性をなくす上で意義がある」とした上で、電気通信事業会計規則における販売奨励金の取り扱いを変更する方針を示し、会計上の取り扱いに関する運用ガイドラインの策定作業を進めていることも明らかにした。

また、携帯キャリアが指定したもの以外の端末を消費者が選択できる「オープンプラットフォーム」施策を米国が実施していることを紹介。総務省としてもこうした方向性で施策を行う方針であることも説明した。

さらに、MVNOの新規参入促進については、総務省の事業政策課内に窓口を一元化し、事業化ガイドラインの再改定を行うことも明示。また、地域のニーズにマッチしたMVNOである「ふるさとケータイ事業」を、今後進めていくと述べた。

その後、構成員による自由討議が行われたが、販売奨励金の見直し要請を受けた後の携帯各社の料金プランの分かりにくさについて議論が集中。一橋大学大学院 法学研究科 教授の松本恒雄氏は、「携帯キャリアの料金プランは一層分かりにくくなってきているが、価格がきちんと分かるというのは、自由競争を促進する上での基本。各社の料金プランが横割りで比較できるようにするという観点が必要ではないか。1カ月使ってみてやっとどのくらいの料金がかかるか分かるというような状況はおかしい」と述べた。

イプシ・マーケティング研究所 代表取締役社長の野原佐和子氏も、「消費者保護というよりも、消費者が主体的に料金プランを選べるよう、コンサルタント的機能を充実させるなどして、自由競争をやりやすくすべき」と注文をつけた。

生活経済ジャーナリストの高橋伸子氏は、「2年以内だと他社に乗り換えられないなどの規定は、携帯各社が顧客を囲い込むためのものであり、端末のイノベーションを阻害する要因となる」と述べ、神戸大学大学院 法学研究科教授の泉水文雄氏も、「ペナルティがどの程度のものになっているか、この評価会議でチェックしていく必要がある」と述べた。

MVNOについては、野村総合研究所 上級コンサルタントの北俊一氏が「携帯各社のARPU(1端末あたりの月間平均収入)は下がる一方であり、MVNOだけでなく、ネットワークを作った事業者のインセンティブも、今後考慮すべきではないか」と問題提起した。

会合ではそのほか、携帯ショップなどの販売員の検定資格を総務省が後援するという案についての議論なども行われた。