韓国では「仮開通」と呼ばれる携帯電話契約が問題となっているが、これに対して行政による制裁が加えられることとなった。

仮開通携帯で課徴金

韓国政府・情報通信部の通信委員会(以下、通信委)は、携帯電話事業者のSK Telecom(以下、SKT)、KTF、LG Telecom(以下、LGT)、そして固定通信事業者のKTに対し、電気通信事業法の違反行為があったとして、課徴金を課し是正措置を命じたと発表した。

課徴金額は、SKTが6億ウォン(約6,600万円)、KTFが1億5,000万ウォン(約1,700万円)、LGTが1億ウォン(約1,100万円)、KTが5,000万ウォン(約550万円)といずれも高額だ。ちなみに、携帯電話サービスを直接提供していないKTにも課徴金が課されるのは、同社も子会社であるKTF用携帯電話の販売や営業活動を行っているため。携帯電話事業にまったく関わりがないとは言えないのだ。

通信委によると、これら事業者の携帯電話端末の販売店が「利用約款とは異なり、実際の利用者ではない第三者の名義を使って端末を開通し、これを新規加入申請者として名義変更する方式で販売していた」という。例えば、販売店で働く従業員や知り合いなどの名義であらかじめ携帯電話を開通しておき、これを実際に買う人が現れた際に、その人の名義に変更する。つまり、利用約款とは異なる行為を行って、数字の上では新規加入者が多いように見せかけていたというわけだ。

通信委では課徴金付加のほか、こうした行為を即刻中止し業務処理の改善を行うよう、事業者たちに命じてもいる。

仮開通携帯は生き残りの手段

仮開通携帯は、悪質な場合には、従業員でも知り合いでもなく盗用した名義で加入登録されることもある。仮開通携帯のほとんどは、一度も使っていないものであるという観点から見れば新品に近いといえるが、一度開通したという意味では中古品である。携帯電話事業者が、取り締まり対象になる仮開通携帯が作られていないか監視などを行う場合に、通話実績を残すため実際に使ってみることもある。また、価格が安価であることが売りとなっているが、仮開通携帯であることが買い手にあらかじめ知らせられないこともある。

仮開通携帯は、自社の実績が上がったと見せかけることで、携帯電話事業者から報奨金を受け取るために作られる場合が大多数だ。このほか、通信事業者や販売店が立てた、加入者確保の目標値を満たすという理由もある。

これに対し情報通信部では、自分の携帯電話が仮開通携帯でないかを調べられる開通履歴照会システムを運用している。ここで調べた携帯電話の開通日が、自分が開通した日と異なれば、仮開通携帯の疑いがあるということだ。情報通信部では同時に、携帯電話事業者に対して、仮開通携帯による利用者被害補償基準を用意し、利用約款に盛り込むよう命じた。

情報通信部では仮開通携帯を根絶させたいと考えているようだが、実際には根こそぎなくすのは難しい。上記の通り、販売店にとって仮開通携帯は生き残りをかけた手段だからだ。今後は仮開通携帯を発生させた事業者の処罰に加え、こうした携帯電話を減らすためのシステム作りも求められる。