レノボ・ジャパンは26日、13.3型ワイド液晶を搭載するノートPCの新製品「ThinkPad X300」を発表した(関連記事)。同日、都内のホテルでは製品発表会が開催され、チーフエンジニアなどから製品に関する説明が行われた。
まず壇上にあがったのは、同社製品事業部担当執行役員の落合敏彦氏。同氏は「薄く、軽く、バッテリ時間を長く、というのが今のノートPCに求められている3つの要件」とした上で、「レノボの技術を使って、失うものを少なく、というよりむしろThinkPadの良さをそのまま持った形で、どこまで実現できるかチャレンジしたのがX300」と述べる。
X300は小型軽量が特徴のXシリーズの製品となるが、初めて13.3インチ液晶を搭載しており、「Xシリーズのモバイル性能とTシリーズのパフォーマンスを追求した」という。ラインナップの中での位置付けは"プレミアム・モバイル"とされており、X61の上位機種となるものの、横幅が318mmまで広がったことでサイズ的にはTシリーズに近くなった。
X300の特徴は、13.3インチという大きな液晶を搭載しながらも、18.6mm(最薄部)・1.42kg(DVDドライブ搭載時)という薄型・軽量を実現したことだろう。これには複数の技術が関係しており、同社大和事業所 研究・開発チーフエンジニアの福島晃氏からそれぞれ詳しい説明があった。
まず注目すべきは、全モデルでSSDを採用していることだ。X300では1.8インチの64GB SSDを搭載しているが、2.5インチ・5,400rpmのHDDと比較した場合、重量が55%軽くなるほか、消費電力が85%減少、耐衝撃性能が4~5倍に向上、信頼性や静音性の向上、などのメリットがあるという。またパフォーマンスもPCMark05で3倍以上だという。
次にメイン基板については、高密度実装により、面積で50%、重量で60%程度、それぞれT61と比べて減少した。これには、Intelの小型パッケージCPUを採用したことによるほか、内層間の接続が可能になったHDI基板といった新技術が活用されている。
X300のメイン基板とクーラー。手前のチップがCPU(Core 2 Duo SL7100)とノースブリッジで、サウスブリッジは背面に実装されている |
従来のPCB(左)では最上層と最下層を貫通するPTHビアが使われるが、X300で採用されたHDI基板(右)では内層間を接続できるBuriedビアも利用 |
液晶パネルはLEDバックライトを採用しており、従来の冷陰極蛍光ランプを採用したものと比較して、2.5mm薄く、140g軽くなったという。また明るさが20%向上しつつも、消費電力は25~80%減少するそうだ。逆に輝度を5nitまで下げることも可能で、「消灯後の航空機内でも使える」(福島氏)。
しかし薄くすると一方で強度が必要となるが、天板については今回、初めてCFRP(炭素繊維強化プラスチック)とGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)のハイブリッドを採用した。CFRPは電波を通しにくいので、無線LANのアンテナが入る部分については、GFRPが使用されている。これにより、47%の軽量化を図りつつも、従来以上の耐衝撃性を確保した。
X300の塗装前の天板。手前のGFRP部と奥のCFRP部がくし形に接合されているのが分かる。これは一体成型で作られているとか |
耐衝撃性の比較。X300のハイブリッドカバー(右端)は、T61(右から2番目)やT60(左端)よりも高い数値を出しているのが分かる |
これら最新技術の採用により、消費電力も削減できており、T61比で-35%、X61比で-25%となった。「これまでのThinkPadを超えた最高の省電力設計になっている」(福島氏)ということで、使わないときはオーディオ・DVDドライブ・有線LANまでオフになるパワーマネジメント機能や、CPUのリーク電流も考慮した新しい冷却制御方式も採用されている。
温度が低い方がCPUのリーク電流は小さい。もちろん、冷却ファンを回すことで電力を使うが、トータルで有利となる回転数を決定するという |
バッテリは右の標準バッテリ(3セル)と左の大容量バッテリ(6セル)が利用可能だ。容量は1.5倍、重さは100gほど違うという |
これ以外にも様々な改良が加えられているのだが、このX300を落合氏は「究極のThinkPad」、福島氏は「Best Engineered ThinkPad」と呼び、製品に対する自信を見せた。スリムノートといえば、米Appleから「MacBook Air」が発表されているが、落合氏は「全く方向性が違う。他社のラインナップを見ても、X300と対比できる製品が見当たらない」と断言する。
ちなみに今回の発表会では、製品各部の担当エンジニアから話を聞ける場が設けられていたのだが、ストレージの担当者は「SSDについては2年以上前から研究していたが、これまで自信を持って出せる製品が市場になかった」と説明。今回、パフォーマンスや信頼性で満足できるSSDができたことで採用に至ったのだという。
現在、1.8インチの64GB SSDはまだまだ高価(店頭では安くても15万円程度)で、X300の34万6,500円からという本体価格の中でもある程度のウェイトを占めていることは想像できるが、実際のコストに関しては非公表だという。HDD搭載モデルが出てくれば安くなることが期待されるが、これについては「検討中」(同担当者)とのことだ。