イー・モバイルは25日、これまでのデータ通信に加えて3月28日から音声通話サービスに参入すると発表した。基本使用料0円、加入者同士24時間通話料無料など、3つの「メガとく」(イー・モバイル代表取締役会長兼CEO・千本倖生氏)で「歴史的な、革命的な、あり得ないメリット」(同)を提供していきたい考えだ。
イー・モバイルは、昨年3月に国内で13年ぶりという携帯電話事業に新規参入、当初はデータ通信限定ながら、下り最大7.2Mbpsという国内最速の通信速度のデータ通信を定額で提供してきた。順調に加入者数とカバーエリアを拡大してきたが、当初の予定通りに3月から音声サービスを提供することになった。
千本会長は、既存の携帯事業者が「(音声)電話サービスを事業の中心にしてビジネスモデルを築いている」と指摘。もともと音声サービスからスタートした既存事業者は、まず「基本使用料」があり、毎月の基本料が高くなればなるほど1分あたりの通話料が安くなる、という仕組みになっており、これについて「みんな満足しているのか」(同)と話す。
さらに、一部事業者は音声定額サービスもあるものの、たとえば定額で話せる時間が限定されていたり、無料通話、多種多様な割引サービス、「サポート」「割賦」といった販売方式、ポイント制などといろいろな料金体系が複雑になっており、「仕組みがきわめて複雑怪奇で、私(千本氏)からみてもどうなっているのか分からない。消費者がどれが安いか分からないシステム」(同)と批判する。
これに対してイー・モバイルが新たに開始する音声サービスでは、まず基本使用料を廃止し、イー・モバイル網内で30秒18.9円という通話料金だけが課金される仕組みを「業界で初めて」(同)導入。パケット定額も組み合わせることが必要だが、これも月額1,000円からという低額を実現した。
さらにオプションで「定額パック24」を導入。イー・モバイル加入者同士であれば月額980円で24時間いつでも無料で通話できるようにした。同様のサービスはすでにPHSのウィルコムが実現しているが、「携帯電話としては初めて」24時間、いつでも無料通話が可能になる。通話料も「業界最安値」ということで、固定宛では30秒5.25円、他社携帯宛は30秒9.45円となる。
ここまでのプランだと、音声通話の月額料金は0円だが、1,000円からのパケット定額料金が必要となるが、音声電話とデータカードのセットプランに加入すると、定額料金が1,000円引きとなるため、実質的に基本料金の完全0円を実現した。音声もデータも使った分が課金されるため(データ料金は上限がある)、全く使わなければ電話料金が0円になる。
千本氏は、音声電話基本料0円、定額パック24で通話料0円、カードとのセット割で基本料金0円という3つの「0円」を「メガとく」と表現。携帯において「音声通話は誰もが必要とする生活必需品でキラーコンテンツ」(同)だからこそ、「日本の長年の常識を覆して基本料という敷居」(同)を取り払い、「シンプル、透明、安心、しかも納得できるサービスにしたいと考えた」(同)結果、メガとくを導入したのだという。
他社の音声定額が家族や恋人同士で使う2台目需要として人気だと千本氏。定額パックによる安価な音声定額で2台目需要を取り込みたい考えだ。また、携帯電話の契約数が1億を超え、飽和しかけているといわれる国内携帯市場だが、「決して(飽和だとは)思っていない。日本の携帯普及率は世界で50位」と千本氏は指摘。上位の国では普及率が100%を超えている現状から、まだまだ市場は拡大するとみている。
「さまざまな特徴を持った画期的な携帯サービスが日本に登場することで、新たな使い方やニーズが創造されていく」と千本氏は話し、自社のサービスに自信を示す。
音声サービスを開始するとはいえ、まだイー・モバイルのサービスエリアは全国をカバーしておらず、昨年末の時点で人口カバー率は50%。今年の6月末には「70~75%は達成できる」(イー・モバイル代表取締役社長兼COO・エリック・ガン氏)予定で、さらにNTTドコモのネットワークを借り受けるローミングを行うことで、6月末時点で人口カバー率95%を実現する。
ドコモのローミングエリアでは音声定額の範囲外となり、30秒22.05円の通話料が必要となる。ただし、イー・モバイルユーザーがイー・モバイル網からローミングエリア内のイー・モバイルユーザーに電話をかけた場合、発信側は音声定額となる(着信側は料金はかからない)。
同社によればドコモとのローミング契約は都道府県単位ということで、イー・モバイルがカバーする東名阪、福岡、札幌といったエリアはイー・モバイルのみを利用、カバーできていない地域でドコモのローミングを利用する。そのため、現在イー・モバイルが利用できない首都圏の地下鉄などではドコモローミングがあっても利用はできない。首都圏の地下鉄に関しては使えるようになるまで「あと1年ぐらいかかる」(ガン氏)見込みだ。
なお、これまで販売されていたPDAタイプの通信端末「EM・ONE α」で利用されていた料金プランはデータ専用プランということで、メガとくの対象とはならない。基本的には音声サービスと同時発表の音声端末+カード型端末の組み合わせがメガとくの対象となる。