昨年アドビ システムズから紹介されたさまざまな新技術・サービスは、今後クリエイティブのワークフローが大きな進化を遂げることを予感させるものだった。それに伴い、アドビはパッケージを販売する企業から大きな一歩を踏み出そうとしている。そこでクリエイティブソリューション事業部門担当上級副社長ジョン・ロイアコノ氏に今後の戦略を聞いた。
ホスティングで提供されるのは増分だけ
――オンライン版PhotoshopといえるPhotoshop Expressなど、昨年発表された内容から推測すると今後のアプリケーションはネットを介して提供されるという印象を受けましたが…。
現在製品はパッケージで出荷されていますが、その中の一部の機能は将来ホスティングサービスで提供されるようになります。そのひとつがPhotoshop Expressです。ホスティングサービスでは、少なくともここ数年は、いまパッケージで提供しているInDesignやPhotoshopなどと同じものを提供することはありません。ホスティングサービスとして提供するのは、個々の機能や小さなサブセットとなるアプリケーションの一部です。
――それはプロ向けではなくコンシューマー向けのものということでしょうか。
現在、アドビの製品ラインは、プロ向けのCreative Suite、コンシューマーやホビイスト向けのElementsの2つがあります。ホスティングサービスはその両方に向けて提供します。最初はPhotoshop Elementsタイプのマスマーケット、コンシューマーを対象としたリリースが多くなりますが、その後はクリエイティブのプロユーザ向けに特化したサービスも提供していくことになります。2008年は一連のサービスを紹介することになり、またそこから追加でサービスを数年間に渡って提供していきます。
ただ、ホスティングサービスは、いまの製品に取って代わるというのではなく、あくまで増分的なものです。Photoshop Elementsは現在パッケージで出荷していますが、もちろん将来的にも出していきます。あくまでもパッケージ製品をベースに増分というかたちで提供します。
テンプレート、ストレージ機能、Photoshop Expressなど。Photoshop Expressは100%オンライン上のサービスとなりますが、増分の新しいサービスとして提供されるので、取って代わるわけではありません。たとえばPhotoshop Expressは、Photoshop Elementsがなくても独立したアプリケーションとしても使うことができますが、Photoshop Expressの機能はPhotoshop Elementsの持っている多くの機能の一部です。
――Photoshop Expressのデモを見ましたが、1回の操作で特定の部分の色を変えるなど、PhotoshopやPhotoshop Elementsにもない機能が搭載されていました。
ホスティングサービスのいいところは、継続的に機能をバージョンアップさせられることです。そしてホスティングサービスとしてテスト、出荷したあと、ベースのPhotoshop Elements等に追加として載せることができます。
――Photoshop Expressは無償で提供されるのでしょうか。
Photoshop Expressがどういう価格体系で提供されるかについてはまだ情報開示していません。有料かもしれないし無料かもしれません。
――そのほかテンプレートとストレージ機能とありましたが、ストレージ機能とはどんなものですか。
100枚の写真を撮ったとして、ネットワーク上にアップロードしたい、あるいは呼び出したい。写真を撮ったらどこかに載せたいと考える人がいると思います。それを加入サービスとして我々が提供するものです。メジャーなソーシャルネットワーキングサイトに、自分の撮った写真を移動させたり、載せることのお手伝いをします。
――Photoshop関連以外で、ホスティングサービスとして提供されるのはどんなものですか。
Kuler(クーラー)というプロジェクトがあります。これは長い間無料サービスとして提供されてきたもので、IllustratorやPhotoshopといったクリエイティブプロ向けの追加サービスです。まだそれ以外にも発表していない追加サービスがいろいろあります。CS製品それぞれについて、どれくらいの量が提供されるのか、またその時期についてはまだお話しできません。
――まず、ベースとなるパッケージを購入し、あとでサーバから業務に特化した機能を追加することで、Photoshopをカスタマイズするといったことが可能になるのですか。