音楽誌『bmr(black music review)』を発行するブルース・インターアクションズから、日本ではほとんど語られることがなかった、ブラック・ミュージック界のゴシップネタを集めた書籍が発売された。タイトルは『音楽誌が書かないゴシップ無法痴態』。"音楽誌が書かない"とあるが、著者の丸屋九兵衛氏は『bmr』の現役編集者で、音楽メディア業界に14年間籍をおくベテラン。常日頃、日本の音楽誌、とくにブラック・ミュージックを専門とするメディアは、サウンドそのものや思想を批評し、アーティスト自身が発する"建前"ばかりを掲載することに疑問をもっていたという。"カタすぎる"がゆえに、おもしろすぎるエピソードをやむなく眠らせておく現状に「ああ、もったいない」と声を上げて、誕生したのがこの本だ。
いくつかエピソードを紹介しよう。
ビヨンセの"初めての男"の恨み節
ビヨンセの処女を奪ったのでは、とされるマーカス・ヒューストン。ビヨンセが成功をおさめるなか二人は別れることになるが、自身のアルバムでビヨンセの妹にあてたメッセージとして「お願いだから、そのままでいておくれ。変わらないで…誰かさんみたいには」と言ってみたり、別のアルバムで「ビヨンセみたいにお尻振って~」と歌ってみたり、なかなかの恨み節を披露している。
ハル・ベリーに見捨てられた超浮気性夫
一人娘を男手ひとつで育て、誠実な愛を歌うソウルシンガーとして人気があったエリック・ベネイ。オスカー女優、ハル・ベリーと再婚するが、生来の浮気性が発覚。「セックス依存症を治療しないと離婚」とハル・ベリーに宣告され、入院治療を受けた。しかし、その後も自宅に女二人を連れ込み、ハル・ベリーの下着をつけさせてセックス。それをなんとハル夫人が目撃し、当然のごとく離婚へ。
ほかに、プリンスとモトリー・クルーの女をめぐる因縁やアーロン・ホールのDV男ぶり、ヒット作だけでなく子供も量産した絶倫クインシー・ジョーンズなど、総勢約150名のミュージシャンらが実名&伏せ字で名を連ねている。対立関係にあるミュージシャンのバトルや秘められた同性愛疑惑の特集など、本当の話から噂レベルの話までもりだくさんで読みごたえ十分。
日本の音楽界とは、ゴシップのスケールまで違うことがわかる、笑える一冊だ。