東京都現代美術館にて、美術館を通路に見立てた新プロジェクト「川俣正[通路]」が開催されている。開催期間は4月13日まで。絵画や工芸品といった、いわゆる「作品」は一切なし。人が移動するために用いる「通路」と、通路内で行われる「活動」により展覧会を構成したユニークな企画展となっている。
近年注目されるようになった、 制作の「プロセス」を重視するアートの流れにおいて、川俣正は国内外で欠かすことのできない重要な作家として評価されている。また、「参加型」「領域横断」「ワーク・イン・プログレス」などといった現代アートを語る上で欠かせない考え方を30年前から実践してきた第一人者が川俣正だ。東京都現代美術館では、これまでの同氏の仕事を振り返り、かつ今後の作家の展望も示すような展覧会をと、同展を企画した。
川俣正(かわまた・ただし) : 1953年生まれ。28歳の若さでヴェネツィア・ビエンナーレの参加アーティストに選ばれ、その後も欧米を中心に高い評価を獲得し続けている。彼の仕事が関わっていく分野はアートの文脈を超えて、建築や都市計画、歴史学や社会学、日常のコミュニケーション、あるいは医療にまで及ぶ |
同展では、展示室だけでなくバックヤードやエントランスなどのパブリックスペースに至るまで、ベニヤ板のパネルを約1,000枚設置し、美術館がさながら巨大な通路のようになっている。何故、美術館内に通路を作るのか。その答えについて「30年間通路ばっかり作っていたから、とりあえずは通路の作家でいいかな」と話す川俣氏はこう答えた。「美術館の機能を広げ、付加しければと考えた。そして、難しい現代美術ではなく、身近な感覚で入っていける作品にしたいと思った」。
また、観客は「通路」を行き交う途中、7つの開放型ラボラトリー群にて行われている「活動」に接することになる。その中には、未完のプロジェクトやこれから始まるプロジェクトを含む、30年間続けられてきた仕事を見ることが出来る。観客はそこで、自立的な場を作り上げることで目的や規範に拘束されない、日常と連続した経験の再構築の場に遭遇することになるだろう。
全国から大量のアイディアを集め、その中から最強のアイディアを実現するという試みがWah(ワウ)・ラボ。いろんな人が参加できる開放型ワークショップを実践している。プランからみんなで決めるプロセスを公開。参加自由のミーティング広場として運営。2月29日を期限に最強のアイディアを決定する |
川俣正の大規模な展覧会としては、2001年の『デイリーニュース』(水戸芸術館)からおよそ6年ぶり。また国内外で数々のプロジェクトを手がけてきた川俣正にとって、東京都内の美術館で個展を開催するのは今回が初となる。川俣正の現在の仕事を一望しに、そしてはじまりもおわりもない「通路」の魅力、様々なラボでの活動風景に触れることで、新たな美術館の楽しみ方を探りに、是非足を運んでいただきたい美術展のひとつである。
観覧料 | 一般1,000円/学生800円/中学・高校生、65歳以上500円/小学生以下無料 |
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開館時間 | 10時~18時(入館は閉館の30分前まで) |
休館日 | 月曜日(ただし2月11日は開館、2月12日は休館) |
また、若手作家のグループ展「MOTアニュアル2008」も同時開催。1999年にスタートした同展における2008年のテーマは「解きほぐすとき」。事物をバラバラに解体し、解きほぐすことで自分なりに世界の輪郭を捉えようとする5人の作家を紹介している。なお、「川俣正[通路]」と共通で何度でも利用できる共通パスポートも販売。パスポートは一般2,000円/学生1,600円/中学・高校生、65歳以上1,200円。また、「MOTアニュアル2008」と「川俣正[通路]」が見られるお得なセット券は一般1,500円/学生1,200円/高校生、65歳以上750円/中学生650円。