国立新美術館は3月26日より、「モディリアーニ展」を開催する。プリミティヴィズム(原始主義)に根ざしたモディリアーニの知的な造形感覚や、20世紀を代表する前衛画家としての側面に焦点を当てることで、知られざるモディリアーニ像に迫る大回顧展となっている。開催期間は6月9日まで。
アメデオ・モディリアーニ(1884~1920年)はイタリア・トスカーナ地方出身の画家。フィレンツェやベネツィアの美術学校で学んだ後、1906年にパリに赴き、35歳で夭逝するまでの14年間、一貫してプリミティヴィズムを追求していった。
一般的に"首の長い肖像画"で知られているモディリアーニだが、その原点はカリアティッド(古代ギリシャ建築の梁を支える女性像の柱)に遡る。彼は1907年から1915年にかけて、カリアティッドの素描を何点も手がけており、その当時からプリミティヴィズムへの傾倒が始まったとされる。もちろん、プリミティヴィズムを追求していく流れの中で、変わっていくものがある。初期の「誰かを特定しない」絵から、晩年の「誰かを特定する肖像画」への移行は、プリミティヴィズムをモディリアーニ独自の芸術表現に昇華させた証跡であった。
作品左は《カリアティッド》 1914年 ジョエル・D・ホニッグバーグ氏夫妻蔵、作品右は《ジャンヌ・エビュテルヌ》 1918年 個人蔵。誰かを特定しない絵は、プリミティヴィズムを追及していく流れの中で誰かを特定する肖像画へと移行していく |
同展では、クメールやエジプト美術と西洋美術との融合を試み、プリミティヴィズムを革新的な芸術創造に結びつけた画家であることに焦点を当てる。モディリアーニの妻、ジャンヌ・エビュテルヌの悲劇的な死のイメージが強いモディリアーニだが、同展監修者のマルク・レステリーニ氏は「前衛画家としてのモディリアーニが忘れられてしまっているが、彼は20世紀初頭の西洋美術を語る上で最も重要な人物。同展で本来のモディリアーニがどういう芸術家であるのかを、お伝えしたい」と意欲を見せている。
また、全油彩作品がわずか400点に過ぎないと言われるモディリアーニ作品のうち、約150点(うち、日本初公開作20点前後を含む)を紹介する世界的な大回顧展としても位置づけられている同展。国立新美術館の林田秀樹氏は「国立新美術館は2007年1月21日に開館し、1年余りが経過しました。モディリアーニ展は企画展示室を使った14番目の展覧会となります。20世紀初頭、エコールドパリを代表する画家、モディリアーニをマルク・レステリーニ氏による監修の下、紹介します。1人でも多くの方に来場していただければ」と話している。
開館時間は10時~18時。金曜日は20時まで。休刊日は毎週火曜日(4月29日/5月6日は開館、翌水曜日を休館)。観覧料金は一般1,500円、大学生1,200円、高校生700円。中学生以下は無料。なお、3月28日/4月3日/5月11日は高校生特別無料招待日となっている。