Booksベストセラー週間総合ランキング1月25日~31日では、新登場で1タイトルがトップテン入りしたほか2タイトルが再浮上してランク入りした。

1月25日から1月31日のBooksベストセラー週間総合ランキング(日販調べ)

順位 書籍名(出版社) 著者
1位 ホームレス中学生(ワニブックス) 田村 裕
2位 親の品格(PHP研究所) 坂東眞理子
3位 女性の品格(PHP研究所) 坂東眞理子
4位 陰日向に咲く(幻冬社) 劇団ひとり
5位 大人の見識(新潮社) 阿川弘之
6位 余命1ケ月の花嫁(マガジンハウス) TBS「イブニング・ファイブ」
7位 1分骨盤ダイエット(三笠書房) 大庭史榔
8位 私の男(文藝春秋) 桜庭一樹
9位 ヘキサゴンドリル(扶桑社)
10位 日本の10大新宗教(幻冬社) 島田裕巳

新登場で8位にランク入りした「私の男」(桜庭一樹)は昨年10月に発行された本だが、直木賞を受賞したことで注目を浴びた模様。主人公は結婚式を前にした24歳の女性「花」。そんな彼女は実は養父と道ならぬ関係だった。年代を遡る手法で紡ぎ出される物語には終始ダークな雰囲気が漂う。「まったく共感できないが引き付けられる」といった感想も多く、不思議な魅力を持つ一冊。

4位に再浮上した「陰日向に咲く」(劇団ひとり)は1月26日に公開された同名の映画の原作。どちらかというと冴えないタイプの「陰日向」に生きているような人物が前向きに生きようとする短編集。涙と笑いのポイントが絶妙できちんとオチがあり、短編集でありながら全体的にリンクしているなど「傑作」との声が高い。

単行本フィクション9位にランク入りした「阪急電車」(有川浩)にも注目したい。片道15分のローカル路線「今津線」に乗り合わせた人を駅ごとに描いていく同作にはじわりとした温かさがある。各駅ごとに描写された市井の人々の後日談が「折り返し」として再び各駅ごとに描かれていく。読み終わると田舎の列車に乗りたくなるような心がほっこりとする小説となっている。

今週の注目

「江戸の歴史は大正時代にねじ曲げられた サムライと庶民365日の真実」(講談社/古川愛哲/税別800円)

食うや食わずで虐げられている領民を尻目に私服を肥やす悪代官。さっそうと現れた剣豪がバッタバッタと悪人どもを斬り倒す―。嘘だとわかっていても時代劇のクライマックスシーンはスカッとするもの。そんなフィクションにあえて「時代劇は嘘ばかり」と言ってしまうのがこの本。

時代劇にはチョンマゲを結わずに月代(さかやき)をぼうぼうに伸ばした浪人が主人公として登場することが多いが、これがまず嘘なのだという。そんな人が往来を歩いていたら途端に町方役人に捕らえられるのが江戸の世だった。

かといって江戸時代が厳しい時代だったというわけでもないそう。年貢は軽く、不倫し放題。無礼討ち(斬り捨て御免)もお金を差し出せば命が助かるといった具合。同著ではこのほかにも知られざる江戸時代の真実を次々に暴いていく。

ただ「江戸の歴史は大正時代にねじ曲げられた」とタイトルに掲げる割りにはこの点の書き込みが足りないように思われる。明治政府による江戸時代(徳川幕府)否定から今日の誤解やフィクションが生まれていることはわかるが、ねじ曲げられたと言うよりは忘れ去られたと言ったほうがふさわしいように思われた。とは言え時代劇好きや歴史マニアにはたまらない一冊。