Johnson氏は、買収後も「Windows Live」や「MSN」といったサービスは維持されていくとコメントしている。また「Yahoo!」も同様であり、当面はブランドが並立する状態が続き、バックエンドで必要なリソースの統合や共用化が段階的に進められることになるとみられる。Ballmer氏は「Yahoo!は偉大なブランドで認知度もある。(各地で独自の資本が入ってブランドのフランチャイズが展開されている)日本や中国といった国でも、(ソフトバンクなどの)パートナー企業とこれまで通りの提携関係を築いていく方針だ」と付け加えている。また将来的なサイトの統合などについては「各々の技術者が来たるべきタイミングでベストな解を見つけ出す」と述べており、買収後に順次調整を進めていく方針のようだ。
特にサービス開発は重要なタームだ。R&D(研究開発)の費用は企業にとって大きな負担となる一方で、次のヒット商品を生み出すための源泉でもある。特に最近ではビデオ共有やモバイルアクセス、SNSなどユーザーの嗜好もさまざまに変化しており、流行のキャッチアップは不可欠となっている。インターネット検索も依然として重要な技術であり、ユーザーにはまだまだ改良の余地がある。Ozzie氏は「自然言語検索」やTellmeの「音声認識技術」などを研究分野として挙げており、これら互いの研究成果をミックスすることで、それぞれのサービスがさらに向上する可能性を指摘する。
ここで最大の問題は米Yahoo!側の反応だ。現時点でコメントは出ていないものの、数日中に何らかのアクションが発生するとみられる。米Yahoo! CEOのJerry Yang氏が米Microsoftの買収提案に抵抗を示す可能性はあるが、Ballmer氏は「両社の文化の違いは理解している。だが両社はともに同じ課題に直面しており、今回の提案はそれを解決するための方策となる」と述べており、経営危機に直面する米Yahoo!が提案受け入れに傾く可能性が高いと踏んでいるようだ。
課題とは、インフラ投資やサービス開発のコスト面の問題のほか、オンライン広告でのライバルの存在が挙げられる。Ballmer氏とJohnson氏はスピーチの中でたびたび「ある一企業」という呼び方で、特定企業による市場独占の可能性の指摘と非難を繰り返していたが、それは明らかに「Google」のことだ。Googleの成長と市場シェア拡大はMicrosoftにとって最大の脅威であり、それはYahoo!にとっても共通であるというのが2人の認識である。「敵の敵は味方」というわけではないが、市場でのポジションや業界のサラブレッドという2点から判断しても、Yahoo!はMicrosoftのパートナーにうってつけの存在なのだろう。