自作ユーザー向けのイベント「DIY PC Expo 2008」が26日と27日の両日、秋葉原コンベンションホールにて開催された。初日の26日には、AMDの"兄貴"こと土居憲太郎氏がセミナーに登壇、今年初めてとなるCPUロードマップのアップデートを行った。

DIY PC Expo 2008の展示会場

セミナー会場はほぼ満席の盛況

65W版Phenomを投入、しかし9900はQ2へ

さて、今年最初のロードマップであるが、いきなり土居氏からは、Phenom 9900/9700の第2四半期(4~6月)への延期が明らかにされた。しかし、好調が伝えられるIntelを前にして、その間に何も新製品を出さないというのは厳しいところ。というわけで、トリプルコアのPhenom 8000シリーズが前倒しで投入されるほか、今回、省電力版Phenomの「9000e」シリーズも新たに発表された。

昨年末の時点でのロードマップはこうだったが…

「新春兄貴ロードマップ」ではこうなってしまった

現状のラインナップでは、通常版のPhenom 9600/9500、Phenom 9600 Black EditionはともにTDPは95W。新たに投入されるPhenom 9000eシリーズのTDPは65Wになるということで、消費電力の大きさからクワッドへの移行をためらっていたユーザーには朗報となりそうだ。動作クロックは通常版Phenomの下になるとのことだったので、価格もさらに安くなる可能性が高い。期待したいところだ。

ちなみにこのスケジュール変更について、土居氏は「ユーザーやOEMメーカーなどから要求が高かったのが、トリプルコアと低消費電力のものだった」と説明。「全部同時に出すことが不可能だった」のが理由であって、「Phenom 9900/9700の生産がうまくいっていないのでは?」との見方は暗に否定した。

プラットフォームはCartwheelに注目

またプラットフォームについては、エンスージアスト向け、メインストリーム向けのそれぞれについて説明があった。

メインストリーム向けロードマップ

こちらはエンスージアスト向け

まずメインストリーム向けには、「Cartwheel」がまもなく発表予定。690シリーズの後継となる「RS780」(コードネーム)チップセットを採用するもので、グラフィックコアがDirectX 10対応となるほか、Radeon HD 2000/3000シリーズで搭載されているUVD機能も内蔵される。グラフィック性能については、「オフィシャルには言えないが、3~4倍くらい早くなっている」とし、「オンボードのまま高画質やHDをフルに堪能できる」とアピールした。

CPUはクワッドコアのPhenom 9000に加え、トリプルコアのPhenom 8000(コードネーム:Toliman)、デュアルコアのAthlon 6000(同Kuma)が対応するが、さらに2009年後半には、45nmにシュリンクされた"Cartwheel Refresh"プラットフォームが登場する。ここで新たにDDR3メモリがサポートされ、ソケットは「AM3」となる。またグラフィックも次世代のR7xxファミリが投入されるようだ。

すでに「Spider」が登場しているエンスージアスト向けでは、45nm版Phenomの投入で「Leo」プラットフォームに移行。なお2009年には"Leo Refresh"も予定されており、ここで新チップセットのRD8xxファミリが登場することになる。

プレゼンの最後には恒例のジャンケン大会が開催。賞品はこんなものも

日経WinPC編集部・西村氏がずばり質問!

今回のイベントでは、土居氏によるセミナーの後で、日経WinPC編集部・西村岳史氏が登場、土居氏に対して"公開質問"を行った。「Phenomの性能はイマイチでは?」「いきなり1万円も値下がりするのはヒドくないか?」などと、業界の人間としてはちょっと聞きにくいようなことをズバズバと質問していたので、ここで少しピックアップして紹介したい。

AMD・土居氏。WEB上で事前公開されていた質問内容を見て、同社の吉沢取締役が机まで来て「きっついな~」と一言述べて去っていったという

IntelのクワッドコアCPUに比べ、性能が遅いと言われていることについては、土居氏は現行Phenomのクロックの低さをあげ(9600が2.3GHz、9500が2.2GHz)、「我々の方が早いとは言い切れないが、同等クロックであればほぼイコールだとは認識している」と反論。「Phenom 9900/9700に期待してほしい」と述べた。またPhenomはFXがまだ登場していないが、「FXを出すからには絶対に勝たなければならない」と意気込んだ。

あまりにもダイレクト過ぎる質問

最初から今の値段でも良かったような…

一方「トリプルコア製品が出るのは生産がうまくいっていないせいでは?」との質問には、「トリプルコアとして出荷するために(1コアを)止めているものもある。それだけ歩留まりは高い」と否定。また現状、デュアルコアのAthlonは最高3.2GHzまでだが、「これ以上コアのクロックを上げるのは難しい」と同氏。パフォーマンス重視であれば「トリプルコアを使って欲しい」とアピールした。

またPhenomのエラッタ問題について、「改善版が出るまで買わない方がいいのか?」とのツッコミには、「現象が発生する確率はかなり低い。一般的なデスクトップ環境で使えば、メーカーとして100%出ないとは言えないが、気にしなくていいレベル」とのことで、土居氏も自分の環境では修正BIOSを使っていないそうだ。

会場ではMSIがEFI対応マザーを出展

会場の展示コーナーでは、MSIが積極的にマザーボード新製品を出展していた。中でも注目は、BIOSに代わってEFIを搭載する「P35 Neo3-EFINITY」。ブースではデモ機が実際に動いており、日本語対応の設定画面などを確認することができた。

EFIを搭載するATXマザーボード「P35 Neo3-EFINITY」

グラフィカルなEFIのUI。もちろんマウスが使える

チップセットはP35を搭載する製品で、PCIスロットを4本備えるなど、外見は発売中の「P35 Neo3-F」とほぼ同じに見える。参考出品とされていたが、ブース担当者は「3月には発売したい」と話していた。

そのほか、Intelの未発表チップセット「X48」を搭載する製品も展示。DDR3メモリ専用の「X48 Platinum」はすでに石川氏のコラムでも紹介されているが、"メモリ移行期"恒例のコンボモデル「X48C Platinum」も登場していた。これは、メモリスロットの色を見て分かるように、DDR2用スロットを2本、DDR3用を4本備えたモデルとなる。

左が「X48 Platinum」、右がコンボモデルの「X48C Platinum」

DDR2用とDDR3用のスロットは色で区別できるようになっている