男子校カフェ、行ってみたいけど…
「男子校カフェ」なるものが都内にできたらしい。
そんな話を耳にしたのは、冬の足音が間近に迫った晩秋のことだったでしょうか。
公立の共学という極めて一般的な中学高校で青春時代を過ごした僕が、「男子校カフェ」という単語を聞いて真っ先に頭に浮かんだ光景は、学ランに学帽、リーゼント、飛び散る汗、汚れまくりの教室……とまあ簡単に言うと、男塾みたいな光景でした。
ですので、今回の取材のお話をいただいたときには、「よし、ならば俺も学ランで攻め込むとするか! 大和魂……見せてやるけえのお!」と、なんちゃって広島弁で気合を入れまくって準備していたわけですが……。
実はこのカフェ、僕が想像しているような「男塾的男子校」ではなく、ギムナジウム――つまり、良家の子息が通う寄宿学校をモチーフにしたコンセプトカフェだったのです。 危ない危ない! 危うく学ラン学帽という、27歳としてありえない格好で生き恥まき散らすところだった!
……さて、そんなカフェの名前は「Edelstein(エーデルシュタイン)」。昔の少女漫画を読まれたことがある方は、たとえば「トーマの心臓」などを思い浮かべていただくとしっくりくるかと思います。幻想的で華やかな古き良き少女漫画の世界、それが現代に再現されているというのであれば、それはぜひ行ってみたい!
でも、僕には気になることがありました。
「果たしてそんな優雅な場所にムサい男がのこのこと入っていってもいいものなのだろうか?」ということです。
これって、同じような不安を抱く男性も多いと思うのですがいかがでしょう。
「男なんだけどEdelsteinに入ってみたい、でもどんな風に楽しめばいいの?」
ということで、皆さんの疑問に答えるべく、男子校カフェEdelsteinを、男視点で体当たりレポートしてきました!
いざ、Edelsteinへ!
さてさて。 今回は、萩尾望都作品をはじめとする昔の少女漫画が大好きなアシスタント(24歳・♀)に、アドバイザーとして一緒にきてもらいました。
表参道を歩くこと数分。メインストリートからほんの少し路地に入ったところに佇む、赤レンガ風のお洒落な建物の2階に、Edelsteinはあります。 ドアを開けて中をのぞくと、近くにいた制服姿の生徒さん(スタッフ)がにこやかな笑顔で迎え入れてくれました。 この方がまた綺麗な顔立ちで、しかも上品! これに、一緒にいたアシスタントが大興奮して、
「ちょっと! いきなり可愛い子が! 可愛い子が! ねえ、可愛かったよね!?」
わかった、わかったから! ちょっと静かにしててくれ!
少女漫画の世界がそこに!
お店の中はこんな感じです。
全体的に温かみのあるウッドなトーンで統一されており、静かに流れるBGMも程よく耳に残って、これぞミッション系の学校! という感じ。
案内していただいた生徒さんも物腰柔らかで、とても好感が持てました。なるほど、開店から大人気なのもうなずけます。コンセプトもさることながら、そもそもカフェとしてハイレベルなのですね。
ちなみに反対側の壁には、
こんな風にオルガン(ピアノ?)が置いてあり、さらに荘厳かつ優雅なムードを高めてくれます。ちなみにこれを見たアシスタントは、
「やっぱり音楽は素敵よね、特にオルガンは最高に気品がある楽器だわ……」と微笑みながらつぶやいていました。
おまえ、そんなこと今までに一回も言ったことなかったやん!
生徒さんにインタビュー!
ここで、生徒さんにちょこっとだけお話を伺うことができました。
インタビューに答えていただいたのは、中性的な雰囲気を湛えた美少年、凰月璃紅(ほうづきりく)さん。
――どんな方がお客様としていらっしゃるのでしょうか。やはり男性は少なめですか?
「当校の通学生や、姉妹校であるマグノーリエ女学院の方、あとはご父兄や篤志家の方などですね。女性の方が多いのですが、男性の方が一人でいらっしゃったりもしますよ」
――お客様とはどんな風に接しておられるのでしょう
「僕たちは寄宿生で、外の世界とはあまり関わらずに過ごしています。そこで将来社会に出たときのために、社交性を身につけるための授業の一環としてお客様のおもてなしをさせていただいています。たとえば、当校には本棚があってご自由にご利用できるのですが、お客様が本を探されているときなどには、応対させていただいたりしますね」
――なるほど、ちなみに璃紅さんはEdelsteinに来られてどれくらいになりますか?
「当校は中高一貫なので、僕は6年目になります。中には高校から編入してくる生徒もいますよ」
うーむ……ただでさえ綺麗な顔立ちの璃紅さんが、さらっと質問に答えてくれる様がめちゃくちゃ絵になっていて、男ながら見とれてしまいました。こんな美少年におもてなししてもらえるのであれば、これは何度だって足を運びたくなりますな。
あとどうでもいいのですが、僕の隣にいたアシスタントがインタビューの間中、璃紅さんをガン見しすぎ! 見とれるのはわかるが、落ち着け!
絵画の如きEdelsteinの世界!
ここで、インタビューに答えていただいた璃紅さんと、お友達の蒼葉麻琴(あおばまこと)さんに写真撮影をお願いし、特別にOKをいただきました。
見よ、この完璧な絵を……!
ナチュラルに窓辺に腰をかけ、本を開く璃紅さんと、隣でそれを眺める麻琴さん。あまりに絵になるお二人が羨ましかったので、試しに家に帰ってから自分で同じポーズをとってみたのですが、ちょっとここには出せない悲惨な光景になってしまいました。
……僕のことはさておき、生徒さん同士の仲の良い絡みを見ることができるのもEdelsteinならでは。写真と文字だけでは伝えきれない「静かで優雅な雰囲気」を、直に体験してみてください。
裏話インタビュー
最後に、このEdelsteinを企画された酒巻さんにお話を伺いました。
――コンセプトカフェということで少し構えていたのですが、静かで落ち着くすばらしい空間でした。素朴な疑問ですが、表参道をお店の場所に選ばれた理由というのは何かあるのでしょうか?
「表参道を選んだのは、お店までの道のりがポイントでした。表参道は並木道がずっと続きますよね。そうした街の雰囲気や、そこから少し路地に入ったところにある静かな場所、というのがお店のコンセプトにぴったりでした。それだけに、物件を探すのに半年ぐらいはかかりましたね」
――お店の一番のこだわりは?
「すべてにこだわっているのですが、特にお客様に楽しんでいただきたいのは世界観です。それを壊さないように、置いてあるもの一つひとつのディテールにこだわっています。お客様も、やはりお店自体の世界観を気に入って通ってくださる方が多いですね」
――生徒さん(スタッフ)がとてもハイレベルだと感じましたが、生徒さんを希望される方はどんな方が多いのでしょうか
「俳優や声優の養成所に通っている方や、制服が気に入ったという方など、本当に様々です」
――お店を企画される際には、ブログを活用されたと伺いましたが
「今回のカフェの前に執事喫茶を企画したときもブログから始めて、皆さんのご意見を取り入れながら作り上げたのですが、今回もブログからスタートし、いただいたアイデアなどを生かして作りました」
――今後また新たなコンセプトカフェを作る予定などはありますか?
「また作りたいな、とは思っています。実は作るならこれかなというアイデアはあるんですよ」
――楽しみにしています。本日はありがとうございました。最後に、これからEdelsteinに行ってみたいと考えている読者の方にメッセージをいただけますか
「コンセプトカフェだからといって構えることなく、気軽に立ち寄っていただいて、世界観を楽しんでいただければと思います。お店は予約席だけでなく当日席もご用意しておりますので、お仕事帰りや買い物帰りにぜひお越しください」
Edelsteinまとめ
……最初に「男視点で体当たりレポートするぜ!」と気合を入れて行った割には、男視点とか何も関係ない普通のレポートになってしまいました。
それはつまり、裏を返せば、このEdelsteinが性別に関係なく純粋に誰もが楽しめるカフェであることの証明でもあります。というか、個人的にカフェが好きでかなりの数を回っている僕ですが、今回のEdelsteinは場所もいいし、雰囲気もかなりオススメです。たぶん僕、今後も普通に使う。
ということで、今回のレポートを読んで皆さんがEdelsteinに行かれたとき、隅っこの方でひとりお茶を飲みつつケーキをパクパク食べている冴えない男がいたら、それは僕かもしれません。
今日の結論:男子校カフェは、普通に男でも楽しめる空間だった!
山田井ユウキ
レビューサイト「カフェオレ・ライター」主宰。サイトでのP.N.は「マルコ」。映画はもちろんマンガ、ゲーム、さらにはBL作品に至るまで幅広くレビュー記事を執筆、その独特な視点とテンポのよい文章で人気を博し、このほど累計1千万アクセスを突破した。現在、弊誌にてコラム『珍DVD、愛を込めてブッタ斬り』を連載中