低消費電力のためのしくみ - 電源供給部分

それでは、組み込み機器において低消費電力を実現するための、STM32シリーズのクロックシステム、レジスタ設定および電力管理について説明する(図3)。

図3 電源供給部分のブロック図

STM32シリーズは、2.0V~3.6Vの動作電源供給(VDD)を必要とし、内部の1.8Vデジタル電源を提供するために内蔵レギュレータを使用する。メイン電源が切断された場合には、VBATからリアルタイムクロックやバックアップレジスタへの電源供給が可能である。VBATへの切り替えは、リセットブロック内に組み込まれているパワーダウンリセット(PDR)回路によって制御する。

また、リセット後、ボルテージレギュレータはつねに使用可能で、以下3種類のモードで動作する。

  • RUNモード : レギュレータは、1.8Vドメインに全出力を提供
  • STOPモード : レギュレータは、1.8Vドメインに低電圧を供給し、レジスタおよびSRAMのコンテンツを保持
  • STANDBYモード : レギュレータはOFF(ただし、STANDBY回路およびバックアップドメインに関係する部分以外のレジスタおよびSRAMのコンテンツは保持されない)

通常、システムリセット後、もしくはパワーオンリセット後、STM32シリーズは初期設定にてRUNモードになっている。RUNモードでは、プロセッサコアはHCLKによってクロック提供され、コードが実行される。プロセッサコアの動作が不要な時間は、消費電力を抑えるために、いくつかの低消費電力モードが利用可能である。ただし、消費電力と低消費電力モードからのスタートアップ時間はトレードオフの関係にある。

上記のとおり、STM32シリーズは3種類の低消費電力モードを用意している。そして、さらに以下の作業により、RUNモードにおける消費電力を抑えることができる。

  • システムクロックを低速化する
  • APBおよびAHBペリフェラルが使用されていないときには、それらへのクロックをゲーティングする

表1および図4にSTM32シリーズの低消費電力モードの詳細をまとめる。

表1 STM32シリーズの低消費電力モード

図4 STM32シリーズの低消費電力モード