CESに合わせて開催されたプレス向けイベントShowStoppersにNeuros Technology Internationalが出展し、オープンモデルを採用した録画・再生デバイス「Neuros OSD」を説明していた。

Neuros OSDは、Sビデオ入力、シリアル、オーディオ入出力、IR出力、LAN、USBなどのポートを装備。コンパクトフラッシュ、Microdrive、SD/MMC/メモリースティックなどのカードスロットを備える。RCAケーブルを通じてビデオやDVDプレーヤー、DVR、セットトップボックス、カムコーダーなどを接続し、それらからの映像をMPEG-4に変換する。録画したビデオはテレビで再生したり、動画再生対応のiPodやiPhone、PSPなどに転送できる。ネットワークを通じた動画の共有も可能だ。これだけなら、さして珍しいデバイスではないが、Neuros OSDは完全にオープンなのだ。機器のハードウエアに関するドキュメントは全て公開されており、基本ソフトはLinuxベース。Neurosが提供している機能以外にも、Neuros OSDを使って「こんなことができたらいいな」と思ったら、自分たちで開発できる。ハックされることで進化する電子機器である。

SD/MS/MMC、コンパクトフラッシュなどのスロットとUSBポートを備える左側面

右側面には電源、シリアル、IR出力、Sビデオ入力、Ethernet、オーディオ入出力

開発者コミュニティを拡大するためにNeurosは、ベータ提供を開始した2006年9月に賞金付きのソフトウエア開発コンテストを開催した。例えばNeuros OSDを使ってテレビでYouTube/Googleを見られるようにするブラウザに1,000ドル、Neuros OSDとUSB電話だけで利用できるVoIPフォン・プログラムに700ドルを用意した。コンテストの成果はオープンソースで公開されている。

マーケティングディレクターのJohan Abadie氏によると、Neurosが入手したあるチップセットの利用方法をユーザーと議論したところ、数多くのユニークなアイディアが出てきたため、それら全てを実現できるような製品モデルの実現に乗り出した。ただしオープンモデルゆえの問題もある。例えばベータプログラムにおいてNeuros OSDはオープンソースコミュニティから大歓迎されたものの、一般テスターからはソフトウエアが使いにくいというような反応が返ってきた。開発者にとって便利であっても、一般消費者に広く利用してもらうのを想定して開発されていないケースが多く、一般ユーザーには扱いにくいプログラムに映るのだ。現在Neurosは、一般消費者に対してNeuros OSDをユーザーが購入した動画コンテンツを合法的に様々な形で利用可能にするデバイスとアピールしている。だが、オープンソースコミュニティの手によって、どんどん進化するのが、その魅力である。開発者を中心にしたギーク向けの電子製品に限定しても十分なマーケットがあるとNeurosは考えているが、それで終わらせずに開発者の成果を一般ユーザーも便利に利用できるようにするのが今後の課題だという。

1年半近くのベータプログラムを経て、米国では数週間前から230ドルでの一般発売が始まった。現時点でNeuros OSDはシンプルな録画・再生機に過ぎないが、これはスタートである。今後Neuros OSDにどのような新たな役割を与えられるかで、コンシューマ製品におけるオープンソースコミュニティの力量が試される。