米ニューヨーク州司法長官のAndrew Cuomo氏は1月10日(現地時間)、米Intelに対して文章や情報を求める召喚状を送付したと発表した。

同社がライバルのAMDを市場から閉め出すことでAMDならびに消費者やPCメーカーに損害を与え、独占禁止法に違反していないかを検討するのが目的だとCuomo氏は説明する。Intelは現在PC向けプロセッサ市場の8割近くを占有しており、こうした地位を乱用していないかが争点となる。独占禁止法を盾にした政府機関による同様のIntel調査は2005年3月の日本を皮切りに、韓国、欧州の3拠点で立て続けに行われており、米国でのケースは4例目となる。

「細心を払った予備調査の結果、われわれはIntelが不公正な競争を行っている可能性について調査を実施することに決定した。マイクロプロセッサ市場での公正でオープンな競争を守ることはニューヨーク、米国、そして世界にとって重要なことだ。企業やコンシューマは最適な製品を最適な価格で簡単に選べるべきであり、公正な競争のみがこれを可能にすると考えている」とCuomo氏は召喚状を送付した経緯について説明する。

同氏によれば、世界全体でのx86プロセッサ市場は300億ドル規模であり、そのうちのIntelの出荷数シェアは80%、売上シェアに至っては90%に達するという。事実上の業界標準コンポーネントでありながら、ほとんどのシェアが特定の一企業に握られているのが現状で、これが不公正な競争につながる可能性をCuomo氏は指摘する。

前述の日韓欧での調査がスタートしたとき、その行動をAMDが支持する声明を出している。またAMD自身が調査開始に乗じてIntelに訴訟を起こすなど、追い風にもなっている。AMDによるOpteronプロセッサの成功とIntelの製品戦略におけるミスの相乗効果で、一時期はセグメント別のシェアでAMDがIntelを抜かすケースが見られた。

だが、2006~2007年にかけてIntelが新アーキテクチャに基づいた製品をリリースしたことで立場が逆転、さらにAMDがネイティブクァッドコアの「Barcelona」において製造問題からプロセッサの出荷を予定通りに行えなかったことで、AMDは窮地へと追い込まれることになった。

同社は2007年末に開催された金融アナリスト向けの説明会でこうした状況について謝罪し、至急の製品ロードマップ練り直しを余儀なくされている。AMDの10日終了時点での株価は5.96ドル、時価総額は33億ドルの水準と、最盛期の6分の1以下の水準にまで落ち込んでしまっている。

今回は米国内の一州による調査と比較的小規模に見えるが、実際には同州による独占禁止法調査は全米規模に匹敵する影響があると指摘されている。またAMDはIBMと共同で米ニューヨーク州に次世代プロセッサ製造工場を建造する計画を立てており、AMDが業績不振による事業縮小で計画を撤回しないよう、影からバックアップするための政治的意図が働いているという意見もある。