――違法・有害情報の規制についてはどうお考えですか。

未成年者と成年を分ける考え方があると思います。抽象的に「表現の自由は保証すべき」と言える半面、自分の子供が「覚せい剤売ります」と書かれたホームページを見ることができるとなると、保護者とすれば「何とかして欲しい」ということになるのではないでしょうか。児童が公道を歩くときに事故に巻き込まれないようにするのは、ある意味当然のことだといえますが、ネットはその公道にあたるのです。そのため、もっと保護者が子供のためにフィルタリングサービスを利用するなどの状況を、さらに促進する必要もあります。

違法・有害情報の通報受付を行っているインターネット・ホットラインセンターのホームページ

また、ひぼう中傷の問題もあります。以前、被害女性本人になりすまして、ネット上に肉体関係を求める書き込みが行われたという事件がありました。単なる悪ふざけではなく、被害者の自宅への経路も詳細に掲載されていたことから、被害者は「自分に親しい人間が行っている」と感じ、周囲の皆が敵に見え始め、精神的に追いつめられてしまいました。

だから規制しろとかしないとかいう話ではなく、ネットでのひぼう中傷は、通常とは異なるインパクトを持つということが言いたいのです。インターネットを「バーチャル」などと表現して、あたかも実社会から遊離したもののように言うのは間違いです。「インターネットと実社会のどこが同じでどこが違うのか」を冷静に分析しないと、乱暴な議論になってしまいます。

「そこまでするつもりはなかった」が、全国放送と同じ効果

テレビや新聞などのメディアは、一定の抑制を利かすことのできるメカニズムが働いていました。例えば新聞では、記者が書いた原稿をキャップが見て、さらにデスク、校閲部がチェックするなど、二重三重のチェック機能が働きます。「これで飯を食っている」という現実、それに携わるプロとしての職業倫理が、いい加減な情報の発信を抑制しているのです。

一方、ネットでひぼう中傷を行った人も「そこまでするつもりはなかった」「こんなことになるはずはなかった」というケースも多いかもしれません。しかしながら、インターネットは潜在的に誰が見ているか分からないもので、全国放送しているような側面もあります。

そうした意味では、インターネットは「これまで持っていなかった武器」、あるいは「身の丈を超えた武器」といえるのではないでしょうか。違法・有害情報の規制も、そこを出発点にして考えるべきです。