――「通信の秘密」と「表現の自由」の関係はどうなっているのでしょうか。
例えば、ある政治団体の人が街頭で演説を行っていたとします。その際、その政治団体はどういう名称で、演説している人の氏名は何なのかは当然問われません。情報発信するための条件として名札を付けなければならないという義務はないのです。つまり、「表現の自由」と「通信の秘密」は必ずしも矛盾しないのです。ネット上でもこうした「匿名表現の自由」がどこまで認められるかが問われてくるのですが、他方では匿名性が悪用されているケースもあることから、「遵守すべき最低限の配慮事項」などを具体化する中では、質量ともに相当な検討作業が必要になってくるのではないでしょうか。
先ほど述べた著作権なども関係するので、他の省庁も関与してくる話になります。
――「メディアサービス(仮称)」を分類する際に「社会的機能・影響力」を基準にするという考え方も議論になっています。
「社会的機能・影響力」に基づいてさらに類型化するということですね。最終報告書では、視聴者数や有料・無料の区別などによって分類するとしていますが、今後具体化する上では困難が予想されます。
しかしながら、電波が有限であることを考慮して、電波を使う事業を「社会的影響力がある」とし、そうでない事業と分けるといった考え方はあってもいいかもしれません。たとえば、民放の放送事業は電波を使用するので電波事業に分類し、同局が運営するネットサービスは、電波の有限性を根拠にした規制があてはまらないものとして、使用される伝送インフラの媒体別に分類するなど、運営主体ごとの分類とは違った分類ができるかもしれません。
あるいは、伝送インフラという重要なインフラを持っているかどうかによって、社会的影響力の有無を判断するというのも、1つの考え方です。そこがストップすると、電気や水道の供給に大規模障害が生じた時と同じような社会的影響力を持つインフラを保有する事業者を「社会的影響力がある」と判断するのです。そこでは情報セキュリティの強化が要請されます。電気や水道の供給がストップしてはならないように、伝送インフラが停止することがあってはならないはずです。そのためには、経営基盤の安定も求められるはずです。とはいっても、伝送インフラについては、他にも競争促進が要請される一方、情報格差が生じないようにユニバーサルサービスに即した面も維持しなければならず、さまざまな要因をどう調和させていくか、難しい課題があります。