Casio Americaは、米ラスベガスで開幕する「2008 International CES」会場において、世界最速という60fpsの連写性能を実現したデジタルカメラ「EXILIM PRO EX-F1」など、5モデルを発表した。日本国内においてはEX-F1のみの発表で、こちらの詳細に関してはニュース記事インタビュー記事も参考にして欲しい。

60fpsの連写と1,200fpsのムービーで目に見えない新たな世界

最大の発表は、やはりなんといってもEX-F1だろう。有効画素数600万画素のCMOSセンサーを搭載し、フル解像度で60fpsという超高速連写を可能にした。CMOSはソニー製の1/1.8型で、高画素化が進む昨今では控えめな数値。同社によれば、「より高画素で30fpsの連写レベルだとデジタル一眼レフと変わらない、ほかにはない製品を目指した」ということで、解像度を抑えても連写速度にこだわった結果だという。

富士フイルムのいう「ネオ一眼」的なスタイル。一眼を目指したわけではなく、持ちやすさや高機能を考えてこの形になったという。高速連写などのスペック的にもカードサイズには収まらなかった模様だ

スタイル的には持ちやすく構えやすい。比較的軽量なのもいい

本体左側面。ちょうど左手の親指がかかるあたりにFOCUSボタンなどを配置。LUMIXにちょっと近いデザインだ

フラッシュはポップアップ式

本体背面。液晶は大きく見やすい。右上のボタンで動画撮影が可能。十字キー周囲の円形のリングは回転するため操作性が高い

本体上部

秒間60コマという連写速度は、実際に撮影してみると驚異的な速さ。プロ向けのデジタル一眼レフでも10fpsなどといったレベルなので、連写速度に関してはEX-F1が圧倒している。野球のバッティングの瞬間など、高速に動く被写体でも決定的瞬間をとらえられる、という。

既存のデジタル一眼レフの連写性能と比べたところ。4,000ドルクラスの製品でも10fps。これだけだと速い動きがとらえきれない、という

一例のバッティング。10fpsのカメラが3コマ撮る間、EX-F1は12コマ撮影できる

こちらはテニス。こちらも同じで、より高速なおかげで、もっともいい瞬間が撮影できる

高速連写でも、人間やカメラの反応速度などの問題でベストショットを逃す場合もある。そのため、シャッター半押し時から撮影を始めてバッファに撮りためるプリショット連写モードを搭載

同社の調査では、高速連写で撮りたい被写体の1位はスポーツで、野生動物・自然が続く

ハイスピード動画に関しても同様

さらに同社が注力する動画撮影でも、一般的な30fpsの40倍という最大1,200fpsの撮影が可能。300fps、600fpsでの撮影も可能で、1,200fpsクラスだと、水風船を割った瞬間に内部の水が球状にとどまっている姿も映し出せるほどの超ハイスピード撮影が可能。今までは業務用カメラでしか映せなかった映像がより手軽に映せるのだ。なお、300fps以上では画像サイズが制限され、1,200fps時では336×96ピクセルでしか撮影できない。1,920×1,080ピクセル・60field s /sのフルHD動画の撮影も可能で、HDMIケーブルでHDTVに映像を表示することもできる。

秒ごとのコマ数の違い。一般的なテレビと同等の30fpsに比べ、けた違いのコマ数になる

その結果、撮影された映像の1コマ。シャンパンを開けたところ

どのようにシャンパンがあふれるかが見て取れる

実際にデモで使われた動画。これは水風船を割った瞬間【画像をクリックすると、動画スタート】

焦点距離約36~432mm(35mm判換算時、以下同)をカバーする光学12倍ズームレンズを搭載。CMOSシフト式の手ブレ補正機能を備えるという。RAW(DNG)での撮影もサポート。手軽にハイスピード撮影が可能なことに加え、プロからハイアマチュアにも使ってもらえるような高機能カメラを目指したとしている。

会見でも一眼レフに関する質問が飛んだが、同社では一眼への参入は目指さず、デジタルカメラにしかできない、独自の世界を構築することを目指すという。液晶付きデジタルカメラを初めて世に送り出し、カード型デジカメの基礎を築いた同社の自負のようだ。

iTunesと連携して動画をiPodで持ち出せる

EX-F1以外はコンパクトデジカメで、現時点では国内での発売は未定。「EXILIM CARD EX-S10」は、1,010万画素1/2.3型CCDを搭載しながら約94(W)×55(H)×15(D)mmの薄型を実現。焦点距離36~108mmの光学3倍ズームを搭載する。F値はF2.8~F5.3。

国内未発表カメラ。左からEX-S10、EX-Z80、EX-Z200、EX-Z100

特徴的な機能が「オートシャッター」。カメラが最適な瞬間にシャッターを自動で切る、というもので、笑顔検出に加え、自分撮りでは被写体全員がフレームに収まった瞬間、手ブレ・被写体ブレが起きていない瞬間、流し撮り時に被写体がきちんと写っている瞬間――といった状況を自動的にカメラが検出してシャッターを切ってくれる。これによって手軽に失敗写真を防ごうという狙いだ。

EX-S10

もう1つの大きな特徴が「iTunes Video対応」という点。最近の同社のデジカメでは、撮影した動画をPCに取り込む際に、動画共有サイトのYouTubeに簡単にアップロードできる「YouTube」モードが搭載されているが、これと同様に、撮影した動画をドラッグ&ドロップでiTunesに取り込み、PCでの閲覧に加え、iPodやiPhoneに同期して持ち出せるほか、Apple TV経由で家庭のテレビでも視聴できる。

もともとYouTubeにアップした動画はiPhoneやiPod touchで見られたが、今後はiTunesにドラッグ&ドロップするだけで持ち歩ける

この機能のためにAppleと協力。動画は従来よりH.264をサポートしてきたが、新たに音声フォーマットとしてAACに対応。H.264+AACをサポートしたことで撮影した動画ファイルをそのままiTunesに取り込めるようになった。まずはAppleのお膝元である米国から発売され、今後の日本での展開は未定だという。YouTubeモード搭載カメラも当初は米国のみだったが、その後国内でも発売されたので、今後の展開に期待したい。

そのほか、EX-S10では2.7型Super Clear液晶を搭載。コントラスト比1,000:1、輝度1,000cd/平方メートル、広視野角を実現した液晶で、より液晶が美しく、見やすくなった。前述のEX-F1もそうだが、静止画撮影モードでも、ビデオカメラのように1ボタンで動画撮影ができるビデオボタンを搭載。エントリーモデルを除いて、今後標準搭載していくという。

EX-Z80はEX-S10よりも厚みはあるが、高さを抑えてコンパクトに仕上げた製品で、有効810万画素1/2.5型CCDを搭載。レンズは38~114mmの光学3倍ズームで、F値はF3.1~5.3。本体サイズは約90(W)×52(H)×19(D)mm、約100g。オートシャッター機能、iTunes Video対応はEX-S10と同様だ。

EX-Z80

「EXILIM ZOOM EX-Z200」「EXILIM ZOOM EX-Z100」の2モデルは、EX-Z200がCCDシフト式の手ブレ補正を内蔵する以外は同等のモデル。新たに開発したというという28mmスタートの広角レンズを搭載するのが特徴だ。焦点距離は28~112mmの光学4倍。レンズのF値はF2.6~5.8。撮像素子は有効1,010万画素1/2.3型CCD。iTunes Videoには対応しない(音声がADPCMフォーマット)。

EX-Z200

オートシャッター機能に加え、人物・風景・夜景・夜景+人物・クローズアップ・動体の6つのシーンをカメラが自動判別して最適なベストショットを選択する「オートベストショット」機能も搭載する。

会見で登壇したカシオ計算機・営業本部長の鈴木洋三氏 (左)と同QV統轄部長の高島進氏

デジカメ市場は年間100万台に達しているが、このままでは伸びないと高島氏。これをさらに伸ばすためには新しいデバイスやソリューションが必要だという

それを実現したのが高速連写・ハイスピード撮影、そしてiTunes Videoに対応した「カシオの第3世代」となるデジカメ