コンテンツに再投資するインセンティブ与える仕組みを
――今回総務省の研究会がまとめた情報通信法についても、究極の目的は日本のコンテンツ産業の振興にあるとされています。
現行の放送法は、さきほど申し上げたように日本国内を対象に最適化されたものになっています。コンテンツ産業が放送局に依存する仕組みになっているわけですが、いくら守ろうとしても、ブロードバンドが普及する状況の中では、海外のコンテンツは日本に入ってきます。
こうした状況の中、現在の縦割りの法律群を再編し、コンテンツ、伝送インフラなどのレイヤーごとの体系に改めようという情報通信法は、方向性としては正しいと思います。米国では、放送局のコンテンツ制作を制限する法律がかってあったため、コンテンツレイヤーが進化した歴史があります。
日本においては、放送局を中心とした垂直統合型の事業モデルの発展を許してきた歴史があり、制作物も電波も放送局が所有する仕組みができています。また、放送局以外の電気通信事業者も、力を持っています。
こうした事業者によるインフラ整備への投資を、コンテンツに再投資する仕組みを作ることで、コンテンツは一気に強くなります。放送、電話、携帯電話などの事業者がコンテンツに投資し、なりふりかまわず競争するような構造をつくることができれば一番効果的ではないでしょうか。
この投資によって、日本のコンテンツを世界に広げ拡大再生産を行い、コンテンツ制作のインセンティブを与える仕組みができれば、情報通信法でいう下のレイヤーから上のレイヤーに投資が還流され、ビジネスとして伸びることができるわけです。
そうすれば、広告宣伝費の縮小でコンテンツ制作費が縮んでいる現在の下方スパイラルが解消され、コンテンツ制作のモティベーションとインセンティブが生まれると思います。
アニメとオンラインゲーム、アジアを拠点として世界をリード
――やはり、海外への投資という場合、欧米が主な進出先になるのでしょうか。
中国、韓国を中心とするアジアも今後重要になってくる市場です。ブロードバンド環境をユーザーがどれだけ利用しているかの割合で見ると、韓国、日本、シンガポール、中国が世界で最も高い率となっています。こうした国々では、ブロードバンドの市場がすでに立ち上がっているといえるのです。そうした意味では、アジアがすでに次世代のブロードバンドにおける産業発展の中核になることが予想されます。
こうした国々をメディア産業という観点から見た場合、同産業が成熟している国は日本、それに韓国が挙げられるでしょう。ここで日本が頑張って先駆者になれば、世界をリードすることが可能です。中国、東南アジアで日本のコンテンツ産業が大きなプレゼンスを持つことができれば、世界市場への最大の近道になるはずです。
特に市場規模が大きく、オンラインゲームをはじめとして世界をリードする企業がすでに育っている中国や韓国で、これらの国の企業と肩を並べるところまでに日本の企業が成長できれば、アジアでのリーダーシップをとることができるでしょう。
――アニメ制作会社のゴンゾを始めとするGDHグループの海外戦略はどのようなものでしょうか。
欧米ではアニメを中心に展開しており、ビジネスとして楽ではありませんが、ブロードバンド時代の本格的な到来に向けた手ごたえを感じています。また、アジアにおいては、オンラインゲームを展開していますが、まだ収益にはなっていないのですが、第一歩を踏み出せたと感じています。
さきほど申し上げたように、アジアでリーダーシップをとれば世界が見えてくるという立場で、世界でビジネスを拡大していきたいと思っています。